ものわすれ
1
忘れないようにメモするぞと買った手帳が
数えたら五冊 もしかしたら六冊
持ち歩く手帳が日替わりだから
昨日のメモが探せない
ボールペンは数えられない
息子がくれたものだけ必死で探す
あとはそのつど買って
失くす
記憶はいったい
どのあたりから抜けていくのか
艶のない額を叩いてみたら
まだコツコツとは音するのだが
2
目玉焼きをひとつ焼く朝
自分の分
顔洗いに行ってるうちに忘れてしまう
目玉焼きをふたつ焼く朝
妻とわたしの分
ガス台の前に立って見ている
物忘れがまだ
自分だけのことで済んでいる
焦げた目玉焼きを食べながら何となくありがたいと思う
●ご訪問ありがとうございます。
昔は自慢できた記憶力だったのに、と思う方々は少なくないかもしれません。三歩歩いたら忘れてしまう、という笑い話がリアルなものになってきたのは、数年前のことです。いまは、振り向いたら忘れてしまった、というようなことさえあります。
かつて「認知症」にかかった祖母を介護したことがあります。「寄り添う」と口では言えますが、それほど易しいことではないと知りました。