詩人・八木重吉
1
八木重吉は 雨といっしょに降っていた
八木重吉は 四季の美しさに溶けこんだ
八木重吉は 涙を弱いものへの愛情とした
八木重吉は キリストの手のひらでこそ温もった
2
八木重吉は反戦の詩は書かなかった
けれど八木重吉に触れたひとは
心が澄んで
戦争は嫌だなあと 心から願うだろう
<八木重吉の詩>
雨
雨は土をうるおしてゆく
雨というもののそばにしゃがんで
雨のすることをみていたい
雨
雨の音がきこえる
雨が降っていたのだ
あのおとのようにそっと世のためにはたらいていよう
雨があがるようにしずかに死んでいこう
夜の薔薇(そうび)
ああ
はるか
よるの
薔薇
素朴な琴
この明るさのなかへ
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美くしさに耐えかね
琴はしずかに鳴りいだすだろう
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美くしさに耐えかね
琴はしずかに鳴りいだすだろう
草に すわる
わたしの まちがひだつた
わたしのまちがひだつた
こうして 草にすわれば それがわかる
虫
虫が鳴いてる
いま ないておかなければ
もう駄目だというふうに鳴いてる
しぜんと
涙がさそわれる
いま ないておかなければ
もう駄目だというふうに鳴いてる
しぜんと
涙がさそわれる
ほそい がらす
ほそい
がらすが
ぴいん と
われました
ひかる人
私をぬぐうてしまい
そこのとこへひかるような人をたたせたい
*八木重吉の詩は、無料の「青空文庫」で読めます
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