東京哀歌
東京へ転校して
初めてプールを見た
村の川を堰(せ)き止めて作った泳ぎ場は
水溜(た)まりのようだった
東京へ来た とおもった
東京へ転校して
四年三組に入れられた
ひとつの学年にクラスが二つ以上もあった
村では一学年一クラスだった(二学年一クラスの年もあった)
おお東京へ来た とおもった
東京へ転校して
いじめっ子が毎日 からんできた
イナカモンの鼻をへし折ってやる と
両手で天狗の鼻を折るまねをした
東京へ来るんじゃなかった とおもった
二十年ほど経ち
地方の子どもたちの施設を訪ねた
トウキョウから来られたヒトです と職員が紹介した
うわあトウキョウ! と 子どもたちが歓声をあげた
ああ東京から来たのだ と恥ずかしかった
●ご訪問ありがとうございます。
東京に住んでいて東京が大好きという人はいるでしょう。地方に居て、憧れの地東京と思う人もいるでしょう。私はもう半世紀ほど東京で暮らしていますが、まだどうもなじめないところがあります。「故郷がない」という、奇妙な感覚があるのです。