ご近所のおばあちゃん
1
ご近所さんが朝の体操にでかけていく
町の集会所での体操
三人のいつものおばあちゃん
片足をひきながら 杖もつきながら
大声できょうの会話をたのしみながら
窓越しにみながら
少し出てきた腹をなでる
こりゃあまずいぞと僕はつぶやく
そして
ひとり スクワットなどをはじめる
2
保育園児たちがお散歩
おばあちゃんたちがお出かけ
窓の外でばったり
―コン ニチ ハ!
三人のいつものおばあちゃんたちが
口々に声をかける
いつもより高い声
―コン ニチ ハーッ!
園児たちがいっせいにさけぶ
たぶんいつもより高い声
―いいね、いいね!
カーテン越しに
ぼくは独り言
ぼくもちょっと弾んで
3
そういえば
あのおばあちゃんはどうされただろう?
窓から見える 路のかどの電信柱
ととのえた身なりで
杖を手に
ひっそりと立っておられたおばあちゃん
ちょっとしてタクシーが到着
運転手さんはドアを開け
にこにこ顔で 帽子を取って
─お待たせしました
おばあちゃんもにこにこ
運転手さんに
背中を支えられ ゆっくりと車内へ
─すみませんねえ すみませんねえ
朝八時
通院のタクシーだろう
優しい運転手さん
柔和なおばあちゃん
すてきな光景をみせてくださった あのおばあちゃん
あのおばあちゃんは今どうされているだろう?
●ご訪問ありがとうございます。
私の家は路地に面しているので、窓越しに見える光景がいくつもあります。ご近所のおばあちゃん方は、名前を存じ上げている方もない方もいますが、映る姿は何かを感じさせてくれます。幼い頃、おばあちゃんが大好きでしたから、おばあちゃんへの親和性があるのでしょう。