余市でウィスキーのCMなどと余計なことを考えていたら、列車は発車。ここから海岸線と分かれて余市川に沿って分水嶺である稲穂峠を目指していく。ここらはリンゴの生産が盛んなことはご承知の通りで、約120戸が、道内の約4割に当たる年間3千トンのリンゴを生産するというリンゴの道内最大の産地。「つがる」というわせ種が9月には収穫の時期になる。今頃は余市から次の駅になる仁木までの間は収穫を待つリンゴが緑の中に真っ赤なイルミネーションのように見えているでしょう(なぜかNHK農林水産通信員のように無理な表現になってしまった)。
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(まだ実の青い時期の仁木~余市のりんご園)
然別で下り列車と交換。こちらも40系の2両編成。150系はどうも少ないようである。平坦な線路は、ここまで。ここら辺から稲穂嶺を越すべく、勾配にかかるためエンジン音が一段と大きくなる。高度を稼ぐために線路は、人家が多い国道沿いとは反対の山裾を登るため、左に山が絶えず寄り添っている。20‰(パーミル=水平方向に1,000m進むと20m上がる)の勾配を登っていくと、しばらくして中腹に作られた銀山駅に到着する。駅の周りには家らしきものはない。どうも駅から下った方に一つ二つ屋根が見えたような気がしたが、駅は相当不便な場所にある。これも高度を稼ぐためではあるが人には優しくない。
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(20‰を示す勾配標識)
稲穂嶺と銀山の間の長いトンネルを抜けた後はカーブの連続。分水嶺を超えて下り坂。スピードもあがり左にカーブを切ると小沢に到着。途中雲に頂上を半分隠した羊蹄山が見えた。小沢も無人駅で跨線橋があるが、老朽化してきている。本来ならここ下車して、岩内線跡の探訪に行くのであるが、倶知安の胆振線跡も気になるので、倶知安まで行くこととする。小沢から倶知安までは羊蹄山を前に見て、クネクネと上り勾配が続くのである。倶知安峠をトンネルで越えると倶知安駅である。到着は9時19分、小樽から1時間12分の旅であった。
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(倶知安駅ホームから見える転車台はあのC62 3の牽くSLニセコ号が運行する際に新得駅から移設されたもので、現在は使われていない)
さて、胆振線跡が気になっての下車であるが、本来の目的地である小沢に向かう下り列車の倶知安出発は9時42分で実際の取材に割ける時間は、たったの15分くらい。まあ、15分でいいやと思ったのは、駅からの分岐線跡を撮れればいいと安易な発想であったのである。しかし、降り立ってみると意外と駅も大きく分岐は遙か向こうである。iPhoneのGoogleマップで衛星写真を見ると300mくらい離れて線路跡のような形跡がある。往復600mとして、早足で歩けば6分で往復できる勘定。
時間が無いので42分発ではなくと時刻表を見ると次はなんと11時15分で1時間半も時間が空いてしまう。小沢でじっくりと岩内線の探訪をして、小樽には午後1時くらいには戻って、母親の昼飯に付き合わねばならないとなれば42分発にのるしか無いのである。
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駅前広場に出たとき、一瞬タクシーと思ったが、3分のダッシュで着く距離をタクシーとはと思い直した。
しかし、駅前広場には変わったモノが置いてあるのである。これは撮るしかない。ニセコのミネラルウォーターが出る変なかっこした水飲み場である。そして、蛇口の付き方もどうも無理があるようである。
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看板には「日本一の水」とあり、羊蹄山から湧出する水とある。このときは気がせいていて気がつかなかったが、変なカッコの理由は、ニセコの「ユルキャラ」である「ジャガ太くん」をかたどっているからであった。でも、普通は気がつかないね。空きそうになっていたペットボトルにこの湧水を詰め込んで、ダッシュしようとしたらこれまたなんとも!というような物体にぶつかるのである。えええい、仕事の邪魔だ、撮ってやるからあとで見るよ。
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としかたなく撮ったのであるが、見直してみるとこれも得体のしれない彫像である。写真を見ると「昴」と彫ってあるが、子供達がたぶん龍のお腹(普通は背中だと思うけど、右にある頭のようなモノの方向を考えるとお腹??)に乗って、喜んでいるところを左にいる両親が危ないからお止めなさいと言っているような変な彫像である。そして子供達の目線の先には水飲み場がある。これはいったい、親は早く水を飲みなさいといっているのか、そのままだと水飲み場にぶつかるぞ!と言って諫めているのか・・・・また、水飲み場も彫像の大きさに比べると蛇口が一個というものなにか情けないものを感じた。ここにも無理を感じるが、おおらかさの表れかも知れない。一応、倶知安と何の関係があるのか、ネットで調べてみたが分からなかった。と言うわけで、今回も岩内線跡の前の胆振線跡にすらまだ到達できなかったのである。
胆振線跡はまた次回のココロである。