模型の館@ジユウノツバサ

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鉄道模型分類学 はじめに

2020年05月02日 | 鉄道模型分類学

〈四季島〉(E001系)は電車ですか?気動車ですか?

E233系は通勤型ですか?近郊型ですか?

 

 鉄道模型の店舗に勤めているワタシでありますが、お客様や後輩スタッフのこういった質問に、淀みなく答えることが難しくなって久しくなりました。

 電車・気動車・客車・貨車・機関車…と動力方式によって大きく分けて、特急型・急行型…と用途別に細分する。これが鉄道模型の販売店や鉄道雑誌等のメディア、あるいは鉄道趣味者の間で現在広く定着している分類方法です。

 これは国鉄時代の車輌体系に基づくもので、鉄道趣味やそれを媒介するカメラや模型といった道具立てが本邦に広く普及していった時期と一致する事、そして国鉄時代は日本全国に同質の車輌がほぼ満遍なく配置されてきたことを考えれば、ごく自然な成り行きだったと言えます。

 しかしながら、国鉄分割民営化によりJR各社が発足して30年以上の月日が流れました。時の流れは様々な新しい技術を生み出します。

 冒頭のE001系〈四季島〉は電化区間ではパンタグラフによる集電、非電化区間ではディーゼルエンジンの発電によりモーターを駆動させて走行。電車と気動車の両方の性質を持った車輌であり、どちらか片方に区分することができなくなりました(JR東日本では「EDC方式」、一般にバイモード方式ハイブリッド車と呼ばれます)。客車列車の衰退と合わせ、動力方式という国鉄式分類の横糸が解れ始めているのです。

 JRとしての再出発は鉄道車輌の「用途」という縦糸にも解れを生み出します。

 国鉄分割民営化時点で、北海道と四国で運用される通勤型車輌は存在しませんでした。急行列車は生き残る道を絶たれ、JRの歴史の中で明確に「急行用」として製造された車輌は、JR東日本のキハ110系0番代ただ一つです。用途を失った急行型車輌には「近郊化改造」を受けセミロングシート化されたものもあり、若い人の中には急行型と近郊型の区別がつかないことも増えているようです。

 そして何より、各JRは各々の地域のニーズに合わせた輸送体系を選び、それぞれが独自の分類になっています。例えばJR東日本ではE231系以降、通勤型と近郊型を統合して「一般型車輌」とカテゴライズしました。JR東海では103系に続く通勤型車輌を製造することはありませんでした。JR西日本では通勤型がロングシート車、近郊型がクロス・セミクロスシート車と区分を続けてきましたが、オールロングシートの227系1000番代の登場でこれも曖昧になってきています。

 さらに言えば、国鉄末期~20世紀中はジョイフルトレイン、近年ではクルーズトレインというそれまでにない分類の用途が生み出され、特に前者は改造車が多く、その種車が多様であることから「パノラマエクスプレスアルプスは急行型?似たような顔のシルフィードは特急型なのに?」というような混乱も生じています。

 国鉄の歴史が約33年、JRの歴史も今年で33年。もう30年以上前の基準で、現在の鉄道車輌を分類すること自体に無理が生じてきているのです。

 現にKATOの近年の鉄道模型カタログでは「電車」の分類が地域別になり、新たに「スペシャルトレイン」というカテゴリーのページが設けられるなどの変化が見られます。

 翻って過去、戦前以前の鉄道車輌の分類はどうだったか。これも明治、大正、昭和とそれぞれ様相が異なるので一概には言えませんが、国鉄時代の分類方法に当てはめることは不可能ではないでしょう。ただ、電車であれば「長距離は走れないもの」という認識だったので、当然「特急型」という分類に該当する車輛は存在しないわけです。

 これも含めて、鉄道車輌の分類には各々の時代を区切って、それに合わせた分類方法を当てはめるのがあるべき姿ではないか、というのが本稿の目指すところです。

 更新は途切れ途切れになるとは存じますが、何卒お付き合い頂ければ幸いです。

 



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