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【鉄道模型分類学】明治時代の鉄道車輌分類

2020年06月19日 | 鉄道模型分類学

 1872(明治5)年、新橋~横浜間で本邦の鉄道が産声をあげたのは読者の皆様もご存じの通り。文明開化を象徴する陸蒸気は当初官設によるものでしたが、1877(明治10)年の西南戦争による戦費から財政難に陥り方針を転換。1880年代以降19世紀の間は地方幹線の整備は民間の手で行われることになります。
そして、1904(明治37)年に勃発した日露戦争を機に、複数の私鉄により主要幹線が分割されていることが軍事上・産業上のデメリットとして見られるようになり、1906(明治39)年に鉄道国有化法が成立。その後、組織の整理統合を経て1909(明治42)年に鉄道院が発足に至る、というのが大雑把な明治期の鉄道史の流れです。
 前回、元号で大雑把にくくれるのではないか、ということで日本版のEp.Iを「明治」としたわけですが、鉄道院発足後は鉄道車輌の分類上は「大正」に含めるのが妥当と考え、ここでは1872~1909年の車輌を主な対象として扱います。

 この時代の主役は何と言っても蒸気機関車。当時の日本に自力で蒸気機関車を作れる工業力はなかったので、当然ながら官設・民営ともにほとんどが輸入モノです。これを輸出元の国別に分けるという考え方もあるでしょうが、その輸出元のメーカーも複数あるわけで、そこに有意な共通項を見出せるとも思えないので本稿では考慮しないことにします。
 蒸気機関車の国産化は1893(明治26)年860形からスタートするわけですが、まだまだ主要部品は輸入に頼らざるを得ず、純国産は1911(明治44)年の6700形から。なので「明治」では国産・輸入機の区別も重要ではないと考えます。
 となると事業者別、つまり官設鉄道と主要5大私鉄(北海道炭礦鉄道・日本鉄道・山陽鉄道・九州鉄道・関西鉄道)、その他の私鉄に分けるのがせいぜいといった所でしょうか。

 そして鉄道黎明期から存在していたのは蒸機の他に客車・貨車。こちらの国産化は比較的早く、「明治」期の後半には各民営会社にも自社で製造する体制が整っていたようです。これらにも共通項を見出せる要素はあまりないので、蒸気機関車と同様で問題はないように思います。

 電気機関車の初登場は1912(明治45)年、内燃式機関車は焼玉エンジンによる石油発動車がこれも明治末期の軌道線に存在するのみなので、これらは「大正」期で扱うことにいたします。

 電車は「明治」後期には軌道線での使用が始まっています。甲武鉄道が1904(明治37)年には御茶ノ水~中野間で電車運転を始めており、その2年後に国有化されて「初の国電」となるわけですが、官設鉄道としての「明治」期は短いものになります。
 内燃動車では蒸気動車が「明治」後期に私鉄での導入例が現れますが、これも官設鉄道での導入は「大正」期。あと、この時代は馬車鉄道なんてのもあったのですが、これも軌道線のみの存在。
 これらは「明治」においては私鉄各社ごとに分類すれば事足りるのではないでしょうか。

 以上をまとめると、「明治」ではまず事業者ごとに分けて、それぞれで蒸気機関車・客車・貨車(・電車・蒸気動車・鉄道馬車)に分類したうえ、形式順や製造・導入順で整理するのが穏当なやり方と考えます。
 …というか、鉄道模型で「明治」を題材にした市販品自体が非常に少ないわけで、実務上は動力方式のみによる国鉄時代の分類と大差ないという結果になりそうです。

●官設鉄道 
蒸気機関車 
客車 (上等・中等・下等→一等・二等・三等、寝台車…)
貨車 (砂利運搬車・緩急車・無蓋車・家畜車…)
●大手5大私鉄(北海道炭礦鉄道・日本鉄道・山陽鉄道・九州鉄道・関西鉄道) 
蒸気機関車 
客車 (上等・中等・下等→一等・二等・三等、寝台車…)
貨車 (砂利運搬車・緩急車・無蓋車・家畜車…)
●その他私鉄 
蒸気機関車 
客車 (上等・中等・下等→一等・二等・三等、寝台車…)
貨車 (砂利運搬車・緩急車・無蓋車・家畜車…)
電車 
蒸気動車 
鉄道馬車 


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