えりこのまったり日記

グダグダな日記や、詩的な短文、一次創作の書き物など。

私たちのバレンタイン1話

2019-05-01 18:13:38 | 書き物
木曜日。
同期の三島くんと、会社近くの定食屋でお昼を食べた。
タイミングが合うと、お昼食べたり飲みに行ったり。
三島くんは、職場の同期で気の合う男友達でもある。
明日の金曜日はバレンタインデー。
彼はカツ丼、私は親子丼をぱくつきながら、話すことはどうしてもバレンタインのことになる。
「もう明日じゃない。今年は貰えそう?去年は何個貰ったんだっけ?」
負けず嫌いの三島くんを、ついからかってしまった。
去年、義理チョコばかりで不貞腐れてた彼は、とたんに不機嫌になる。
「コンビニの義理チョコ配るだけの中野に言われたくない」
ブスッとして口を曲げた同僚に、すかさずスマホを突きつけた。
大きな画面には、手作りトリュフチョコの画像。
「残念でした!手作り本命チョコあげるんですぅ」
ヤツは画面を見て目をまんまるく見開いてから、逸らした。
「…中野、去年あんなに懲りたって言ってたのに…また本命いるのか」
あ。
やっぱり言われちゃった。
去年のバレンタインのこと…


去年、同期のみんなとよく行ったコーヒーショップの店長に一目惚れしたのだ。
覚えて貰いたくて、毎日通った。
それで巻き込まれたのが、同じ課の三島くん。
毎日のように付き合わされて、文句たらたらだった。
毎日ランチを奢って、どうにか一緒に行って貰ったんだ。
顔も覚えて貰って、なんとなくいい感触を感じて、バレンタインは手作りチョコを準備した。
でも、それは渡せなかった。
だって、直前に店長の奥さんが子連れで店に現れたんだもの。
そんなこと、一言も言ってなかったじゃない!って、店を出てから三島くんに八つ当たりした。
そしたら、
「大体、結婚してるかって聞いたのか?」
って言われたんだった。
それで、来年は義理チョコ配りまくってやる!ってまた八つ当たり。
だから、三島くんの言葉は耳が痛い。
でも、また本命が出来ちゃったんだもの、しょうがないじゃない。
「いいじゃない。去年は去年よ」
「…それで、誰にあげるの?」
「…萩原さん」
「あぁ…あの人か…ていうか、なんで?」
「あぁって何よ。同じ島になったら、すごく面倒見がよくて、スマートなんだもの。とにかくイケメンでカッコいいの」
聞かれたから正直に話したけど…
三島くんは、こんなこと言ったらバカにするだろうなあって分かってた。
去年だって、ちゃんと確かめろって怒られたんだから。
三島くんをそっと見ると、口をきゅっと結んで黙ってる。
「あの…どうしたの?なんか、怒ってる?」
「…なんでもない。まぁ、今度こそうまくやれよ」



…こんな話をしたことを、思い出してる今は金曜日。
午後の給湯室に私はいる。
なんでこんなところにぐずぐずしているかって?
顔を出すとチラッと見える廊下の端。
俯いたアイツに、チョコを渡そうとしてる1つ後輩のかわい子ちゃん。
今出て行ったら、二人の邪魔をしちゃうじゃない。
それに、成り行きが気になるし。
2人とも顔を赤くして可愛い。
貰えて良かったねって、明日からかおうと思ってたのに…
「ごめん、受け取れない」
チョコはまた、アイツの手から彼女へ。
何言ってるの?
昨日、本命チョコ欲しがってたじゃない。
「どうしてですか…やっぱり、迷惑ですか?」
か細い声の後、ボソッと聞こえた声。
「好きな人が、いるから」
…好きな人?
初めて聞いた、そんな話。
昨日は、そんなこと一言も言わなかったよね?
「ごめん、じゃあ…」
ボソッと言うと、俯いたままの彼女を残して行ってしまった。
入社した時の研修からの付き合いの三島くん。
遠慮がなくてなんでも言いたいことを言い合える、気のおけない同期だ。
だけど、恋バナなんてしたことなかったな。
好きな人、か。
誰なんだろ。
言ってくれたら良かったのに。
私だって昨日、初めて萩原さんのことを言ったくせに、そんな勝手なことを呟いていた。







その日、帰り際に萩原さんを引き止めた。
チラッと見るとデスクの上には高そうなチョコの箱がいくつか…
もう先客がいたみたいだ。
でも、萩原さんはチョコを受け取ってくれた。
「手作りなの?ありがとう」って笑顔で。
本命ですって伝えるのを忘れるほど余裕無かったけど、大丈夫かな…




翌日から、三島くんはランチや二人での飲みの誘いをして来なくなった。
お昼になるとさっさと先輩と外に出てしまうし、飲みも皆での飲み会しか声を掛けて来ない。
何でって不思議だったけど…
一応本命がいると宣言したし、気を
使ってくれてる?
でも、なんかちょっと寂しい…
同期なんだし、別に誤解とかされないと思うし…
あ。
三島くんの好きな人から誤解されたくないの…?
そっか。
そりゃ、そうよね。
ただの同期だもんね。
















































































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