ライ・クーダの新しいアルバムは前作に続きノンサッチからリリース。放浪する"赤い"猫「バディ」とレフティ・マウス、トム・トード牧師たちの17章の物語。不況や赤狩りといった過ぎし時代のアメリカの物語。ライ・クーダーのルーツ音楽とも言えるよう、マイク&ピート・シーガー、ジム・ケルトナー、ヴァン・ダイク・パークスなど昔からの仲間、息子のホアキム・クーダーも参加している。アメリカの過去の物語のようだが、まさに今への警告「クランは別の形をしてあれやこれやを仕切っている…普通の人と変わらなく見えるところ…白装束でないところだけ」 。トム・トード牧師はスタイン・ベックの怒りの葡萄の主人公トム・ジョード だと言われている。怒りの葡萄のトム・ジョードは刑務所で4年服役する。仮釈放で帰宅してみると、3年にも渡って吹き荒れた大砂塵が農耕地をすっかり砂で埋め尽くしていた。そしてそこで働いていた ジョード 一家も他の地に追い立てられ、社会意識が芽生えていく…。ライ・クーダーのショートストーリーはそんな時代を重ねて、強く印象付ける。音楽の確かさがまた凄い。フォーク、ブルーグラス、ブルースといった感じだが、労働歌、メッセージソングといった方がいいかも知れない。