・化学的消化Chemical digestion かがくてきしょうか
多くの動物・人は、食物をそれぞれの身体内にあったものに作り上げていく必要があります。消化には機械的因子(物理的因子)、化学的因子がおもにあげられますが、そのほかに生物学的因子もあります。
化学的因子によっては消化酵素を分泌しながら歯で食物を咀嚼(そしゃく)して食道を通り胃、十二指腸、小腸、大腸でさらに低分子のブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、水の低分子に分解し吸収し栄養素として吸収しています。
食物の胃内停滞時間は、およそ、たん白質、脂肪は4時間、炭水化物2時間、水1.5時間程度です。
食物を低分子に分解していく為のおのおの消化酵素が作用しています。それらの酵素について、順を追ってみましょう。化学的消化とは、消化液の中の酵素の働きで、食物を低分子に吸収できる形に化学分解することです。
食物は、まず口で唾液は1日に1~1.5リットル分泌しています。唾液中には、消化酵素であるプチアリン(唾液アミラーゼ)が含まれます。プチアリンは、デンプンをより分子の小さいデキストリンや、二糖類の麦芽糖に分解する酵素です。口腔内では食物中のデンプンの5%程を分解しています。
唾液はほぼ中性です。
胃液
胃液は1日に1~1.5リットル分泌し、塩酸と、タンパク質分解酵素のペプシン、ガストリクシンが主で、脂質分解酵素リパーゼも若干含み分泌しています。胃液のpHは、0.92~1.58と強い酸性です。
膵液
十二指腸より分泌し胃液の酸性を中和します。
膵液は1日に約500~800ミリリットル分泌し、タンパク分解酵素のトリプシン、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼ、脂肪分解酵素のステアプシンSteapsin、デンプン分解酵素のアミロプシンAmylopsin、マルターゼ、ラクターゼなどがあり分泌し分解しています。
膵液のpHは8.5で、弱アルカリ性です。
腸液
小腸では胃で一部消化され粥状にくだかれた多くの食物は 小腸を通る間に胆汁、膵液および腸液とまざり消化、吸収もおこない、小腸壁から吸収します。 粘膜にある腺から消化液の分泌もします。
腸液は弱アルカリ性液で一日の分泌量は1500~3000mlで酵素としてタンパク質分解酵素のアミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、糖質分解酵素のアミラーゼ、マルターゼ、インベルターゼInvertase、ラクターゼ、エレプシンErepsinおよび少量のリバーゼなどを含んでいます。
さらに核酸分解酵素のヌクレオチダーゼ、ヌクレオシダーゼをごくわずかに含み分泌しています。腸液のpHは8で、弱アルカリ性です。
胆汁
胆汁は、肝臓から1日約500~1000mL分泌し、一時胆嚢に蓄えられ濃縮されたあと、総胆管を経て十二指腸内に流入、小腸から分泌します。胆汁の主な成分は胆汁酸総量は2~4gと胆汁色素です。
胆汁酸はコレステロールよりつくられ、脂肪の乳化をおこさせて、リパーゼの作用を受けやすくしたり、小腸の蠕動運動を高めます。また、脂肪の分解で生じた脂肪酸とグリセリンが胆汁酸に結合することにより、ミセルという微粒子状になり、吸収を促進させます。
栄養は小腸で約90%吸収しています。ビタミン、ミネラルは、腸より吸収され血液によって各所に運ばれます。腸内細菌には、吸収を助ける細菌が存在します。
炭水化物、たんぱく質、脂質などの加水分解の反応を取り持つのは加水分解酵素で食物にも含み食品の品質・加工などにも関係しています。
酵素が作用するには、最適のpH(ペーハー)が必要で、酵素の反応の速さが最も大きくなる最適なペーハーの値がそれぞれに存在しています。最適なpH前後では反応速度はおだやかになりまた急減しています。
至適pHはαーアミラーゼ(基質:でんぷん)4.8、トリプシン(基質:血液中のたんぱく質フェブリン)7.8、肝カタラーゼ(基質:過酸化水素H2O2)6.8、ウレアーゼ(基質:尿素)7などで多くが中性付近で活性化します。
酵素は、動植物、微生物、生物体内で作られ、人の消化酵素、唾液、血清、乳汁、微生物から生成する酵素のように体液中に存在する細胞外酵素もありますが、多くは細胞の中に存在している細胞内酵素で占められます。人体では、消化管に分泌されるものの他に代謝にも関係しています。
食材からも消化酵素を多く含む食品を摂取することにより、消化・吸収を助けます。
アミラーゼを多く含む食材:麦芽、大根、山芋、さつま芋、蕪、キャベツ、ナス、ショウガ、じゃがいも、パプリカ、バナナ、パイナップル、キウイ、梨など
プロテアーゼを多く含む食材:パインアップル、パパイヤ、メロン、キウイフルーツ、梨、イチヂクなどに含む。麹、納豆菌など
リパーゼを多く含む食材:米糠、大根、セロリ、トマト、カリフラワー、カボチャ、グレープフルーツ、イチゴ、いちじくなど
です。
栄養素のほぼ90%を小腸で、水分の80%を大腸で吸収していますが、吸収開始までおよそ2時間、大腸まで大部分が送られてくるのは、9時間程度で栄養分の吸収がおこなわれています。大腸には18時間以上とどまり、水分を吸収し次第に固くなり便となって排出していきます。
食物から消化酵素を作り、新たに食物として取り入れられた食品の消化・吸収を繰り返しています。消化酵素をより多く含む食品とともに栄養バランスの取れた食生活が望まれます。
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