JRと私鉄は駅名の外国語併記の際、日本語の発音/呼称を表わさない中国漢字を使うのではなく、表音文字ピンインで表記すべきだ

駅名の外国語併記に中国漢字が使われている。しかし中国漢字は日本語の音を消してしまう。この大欠点をなくす代替策を提言する。

後編 JRと私鉄が用いるべき駅名併記のあり方を例示する

2023年11月06日 | 駅名の外国語表記
第12章:ピンインは中国語の正式なローマ字表記法として世界的に公認
ここからは外国語による駅名併記をテーマに掲げた当ブログの後編に入ります。

〈他国の地名の呼び方〉
他国の地名はできるだけ原音を使うというのは国際的にも認められた原則であるのだろうか、そんな原則は存在しないのだろうか、定かではない。
他国の地名は原音を使おうという国際的地名原則が仮にあるとすれば、歴史的に確定しているような場合を除いて、これはどんな国であれ徹底の大変難しいことではある。しかし、それでも少なくともそういうあり方を取り入れるべく努力はすべきであろう。

いずれにしろ日本は、あくまでも比較的だが、この国際的地名原則(仮の呼び名)をある程度尊重している国といえるだろう。
日本は昔から例えば、Paris をパリスと呼ばず[パリ]と、Wien をヴィエナではなく[ウイーン]と、Münhen をミューニックではなく [ミュンヘン] と呼んでいる。
このように日本はかつて、ほとんどの外国地名を英語式発音にまねた呼称にしてしまうようなことには追従しなかった。

韓国のソウルを日本は第2次大戦までは”京城”と呼んでいたが、今では誰もそんな風には呼ばない。多くの国でエベレストを英語式に呼んでいる中、日本は確か1980年代頃かな? かなり不徹底だが次第にチョモランマという呼称を使うようになった。
しかしながら現在ではまたエベレストが圧倒的に使われているようだ。数十年の間にチョモランマはいわば”ほぼ淘汰された”かのように思える。

中国はといえば、ハノイを河内[hénèi] 、ソウルを汉城(漢城)[ hànchéng] と呼ぶように、未だに古来からの名称を使っている。そのくせ自国の北京はペキンでなく"Beijing" というピンイン呼称を使うようにと世界的に認めさせた。そのピンイン綴りは [ běijīng] です。
中国は地名のピンイン呼称に固執している。それはピンインが表音文字として中国語音を写すからだ。

<中国は、中国漢字による日本漢字の置き換えの欠点をよく知っている>
当ブログをお読みになっている皆さん、上記の事実をよく反芻(はんすう)してみませんか? ”中国漢字では他国の人たちには中国地名の音が正しく伝わらない”ことを中国はよく認識している。だからこそピンインを使用することを中国政府はちゃんと主張し行動してきたのです。

これを日本における日本地名に当てはめてください。地名を表記する日本漢字を単に中国漢字に置き換えれば日本地名の音が(読み手には)正しく伝わらないことは、中国側には明々白々のことなのです。

なお読者の皆さんには誤解していただきたくないので、強調しておきます。Intraasia のピンイン使用の主張と中国政府のピンイン表記の主張の間には部分的に論点の重なりがあるが、これはあくまでも論理的帰結としてつまり結果論としてそういうことが起きたということです。

あくまでも Intraasia が寄って立つ根拠と原則は、既に何回も掲げている次の大前提にある:「駅名の外国語併記の主目的は、第一に鉄道やバスに関して外国人利用者の便宜を図る、利用を助けることであり、」「第二に外国人利用者に日本語での駅名を、正確ではなくてもいいからできるだけ知ってもらう、そのように発音してもらうことにある」

〈少数の決定権者らは何を基に中国漢字の使用を決めたのだろう〉
JRと私鉄の駅名併記に簡体字と繁体字を使うことを決めて実施したごく少数の決定権を持つ人たちは、”中国地名にはピンイン表記を使うべきだ”というこの中国政府自体の主張と行動を知らないのだろうか? それとも知ってはいたが考慮しなかったのか?

ブログ中編の第3章で Intraasia は学者の著書を引用して次のように書いた:「1977年の国連の地名標準化会議において、中国の地名のローマ字表記はピンイン方式によることが正式に採択され、以来中国語の正式なローマ字表記法として世界的に公認された」

当ブログをお読みになっている皆さん、この事実を思い起こしてください。少数の意思決定権者たちは、世界的に公認されたこのピンイン方式による表示という国連採択のことも知らなかったか、もしくは考慮しなかったか無視したのでしょう。

〈中国漢字による駅名併記の最大の 欠点〉
何回も Intraasia が強調しているように、日本の駅名の漢字を中国漢字に変更すればその日本語音は全く写せない。中国漢字による駅名併記の最大の 欠点はこれに尽きる。
日本語を母語且つ母国語とする者である Intraasia が中国漢字を敵視するような思考に立っているわけではないことは、このブログを始めからちゃんと読んでいただければ皆さんにわかっていただけますね。

駅名の外国語による併記において、Intraasia が中国漢字ではなくピンインを用いることを提言しているのは、この大きな欠点をいかになくすかを考えた時、表音文字としてのピンインがこの場合最適だと気づいたからだ。 ”国連の地名標準化会議において、中国の地名のローマ字表記はピンイン方式によることが正式採択された” からではないし、それを知ったことが契機になったわけでもない。あくまでも駅名の日本語音をそのまま用いることが主眼である。 

中国は外国語文における中国地名の表示の際、中国音を充分に写すピンイン表示に固執するのである。結構なことだ。一方それとは無関係に、私たち日本人が日本語の駅名を他言語で表記する際、日本語音を良く写す、ラテン文字、ハングル、そしてピンインを使うことは、まことに理にかなっている。皆さん、そう思いませんか?

〈ある方式に大きな欠点があれば、それは改めるべきだ〉
一度決めて既に実施している方式を変更することは、何事につけ大変難しい。決めた人たちや当局の“面子”が絡むからだ。しかし併記された駅名から日本語音が消されてしまったという最大の欠点を今後も長くそのままにしておくことは、言語に関する様々なことを長年読んだり、考えたり、論じてきた者としてなおさら受け入れ難いことです。

現行の中国漢字による駅名併記を決めた人たち及びその方式を支持している人たちは、ピンインを使って日本語音を写すという発想に早急に切り替えるべきである。

当ブログの目次をここに掲げておきます。
目次
序論 新しくブログに掲載する作品のテーマを導く
前編 はじめに、 第1章、
中編その1 第2章、 第3章、 第4章、 第5章、
中編その2 第6章、 第7章、 第8章、
中編その3 第9章、 第10章、 第11章、
後編 第12章、 第13章、 第14章、 おわりに、

2023年12月末の注記:ブログは新しい記事が先の記事の上に掲載される、つまり古い記事ほど下方になる仕組みだ。しかし当作品は1冊の本を模して書いてあるので、それでは読みにくい。そこで今回上記の目次の順序になるように、それぞれの編を入れ替える/ 移すことにしました。

第13章:駅名の外国語併記に無関心な人たちに訴えます

首都圏のJR や私鉄の駅で利用者の方たちには、強く意識しなくても簡体字と繁体字とハングルの併記駅名が目に入ることでしょう。でもどの程度注意を払うかはまた別問題だ。その内の日本人利用者の方たちの間では「ハングルなんて全くわからないなあ」「中国語を習ったことがないので簡体字は読めないね」「外国語にはもともと全く興味がない」「駅名の外国語併記なんて俺 / 私には関係ないことだ」「駅名の外国語併記はローマ字綴りがあれば十分じゃないのか」「外国人旅行者が近年増えているから、駅名の外国語併記は役立っているんじゃないの」・・・という方が圧倒的に大多数を占めることでしょう。

さらに中には、「あの駅名の外国語併記は(中国や台湾の)中国人向けなんだから中国漢字を使うのが当然でしょう」と思い込んでいる方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

そういう方たちを含めて皆さんに、この場でまた大前提を提示しておきます:「駅名の外国語併記の主目的は、第一に鉄道やバスに関して外国人利用者の便宜を図る、利用を助けることであり、」「第二に外国人利用者に日本語での駅名を、正確ではなくてもいいからできるだけ知ってもらう、そのように発音してもらうことにある」

上記のような日本人利用者の反応や受け止め方があったからこそ、駅名併記に中国漢字とハングルが加わっても、取り立ててまたは社会的に注目を浴びるほどの反対の動きや世論が起こらなかったようだ(その当時を含めて長年 Intraasia は日本に住んでいなかったので推測です)。

でもそういう日本人利用者の皆さん、少しだけ時間を割いて考えてみませんか。当ブログで長々と綴ってきた一連の事実と説明と論拠を皆さんに少しでも知っていただきたい、日本語音を捨て去る不条理さに気がついて欲しい、とIntraasia は願うのです。

そのような次第で Intraasia は中国漢字を使うという現行のJRと私鉄の駅名併記のあり方に意義を申し立て且つあるべき表示法であるピンインの使用を訴えようと思った。そこで書き上げた作品を、日々の掲載用に分割して、2021年にツイッター上で半年に渡って毎日連載したのです。ただツイッターという性質上、ごく短い細切れの文章が読む人たちの目に入る作品になりました。

今回その同じ作品をほぼ全面的に書き換えて、一気に読める形の文章にしました。総文字数約 3万7千字の長編ですが、掲載するプラットフォームが読み易いブログ形式ですから、何日間かかけて全文を読み通してくださることを期待しています。

JRと私鉄は駅名に、日本語本来の発音を示さない中国漢字を使うのではなく、ピンイン(拼音)を使うべきだを人々の声や社会の関心事にするべく、賛同していただける皆さんの協力で当ブログが拡散していくことを願っています。


第14章:JRと私鉄が用いるべき駅名併記のあり方を例示する
いよいよ当ブログ作品における最終章です。

〈JRと私鉄が用いるべき駅名併記のあり方を例示する〉
締め括りとして、JRと私鉄が用いるべき駅名併記のあり方をたくさん例にあげましょう。簡体字の駅名併記例は、JR発行の路線図を参照しています。実際の駅での併記にはハングル駅名も表示されているがここでは直接関係ないので省きます。なお例にあげた駅は無作為に選んでいます。

各駅名における掲載順序は 1. 日本漢字の駅名、2. 簡体字とそのピンイン音、3. 最後部にJRと私鉄が使うべき日本語音のピンイン綴り。なお既述したように、日本語音をピンイン綴りする際の綴り字選びは最終的に日本人の中国語専門家が決めるのが一番良い。

我孫子は 我孙子 [ wǒ sūn zǐ ]ではなく a bi gou / kou と、錦糸町は 锦丝町 [ jǐn sī tǐng ] ではなく gen xi chou と、鎌倉は 镰仓 [ lián cāng ] ではなく ka ma ku la と、立川は 立川 [ lì chuān ] でなく ta chi ka wa と、前橋は 前桥 [ qián qiáo ] ではなく ma ye ba xi と表記する、

熱海は 热海 [ rè hǎi ] ではなく a ta mi と、日光は 日光 [ rì guāng] ではなく ni kou と、上野は 上野 [ shàng yě ] ではなく wu ye nou と、甲府は 甲府 [ jiǎ fǔ ] ではなく gou fu と、川崎は川崎 [ chuān qí ] ではなく ka wa sa gu と表記する、

成田は成田 [ chéng tián ] ではなく na li ta と、船橋は 船桥 [ chuán qiáo ] ではなく fu na ba xi と、千葉は 千叶 [ qiān yè ] ではなく chi ba と、小田原は 小田原 [ xiǎo tián yuán ]ではなく ou da wa la と、宇都宮は 宇都宫 [ yǔ dōu gōng ] ではなく wu cu nu mi ya と表記する。

例示したように、簡体字や繁体字の中国漢字ではなく、日本語音を音訳したピンイン綴りをJRと私鉄は駅名併記に使うべきである。
注:ピンインである以上中国語の音韻構造に基づくので、中国語・華語の母語話者または第2言語話者には無理なく発音できる。


【 おわりに 】

1. そもそもJR と私鉄で駅名併記の言語・文字に中国漢字とハングルが加わったのはいつ頃からなんでしょうか? 
2. その複数文字・言語併記はどのように首都圏以外の地に拡大されていくのか? それとも既に一部地方で適用されているのかな?
3. そしてこれは大事なことなのだが、駅名に複数言語・文字併記が採用された際、一般市民を含めたオープンな論議がどの程度なされたのだろう?

この3点は現時点における Intraasia にとって、1と2はほとんど知らないことであり、3は主要な疑問点でもある。なぜそうなのかは今回2023年10月初めに掲載した「新規掲載のテーマを導く序論」における前半部分の中に書いた。お手数でしょうが、もう一度ご覧ください。

第3の点は重要だ、なぜなら中国漢字の使用は、鉄道や駅やバスを利用する中国人や各国の華人など中国語・華語の話者たちに駅名の日本語発音をわからなくさせることに即つながる、ことが容易に推測できるからです。
分かり易く言えば、圧倒的大多数の中国語・華語話者たちは、駅名に併記された簡体字または繁体字をまず読み、その漢字に備わった中国漢字の発音をすることになる。これは至極当然のことなのです。

一方、併記された駅名のラテン文字を読む外国人利用者は、”各自の母語に影響された発音で” そのラテン文字の駅名を読むのである。
注:ラテン文字による駅名綴りに関しては、当ブログ掲載の【序論】の中で多くの例示と共に丁寧に説明してあります。

既述したように、昔から駅名併記に用いられているラテン文字による駅名はそれなりに日本語発音を反映している。近年になって中国漢字と同時期に駅名併記に加わったハングルはラテン文字並みかそれをやや上回るぐらいに日本語音を表して(写して)いる。

それなのに中国漢字すなわち簡体字と繁体字による併記駅名は日本語発音を全く反映していない。
この決定的な差が生まれるのは、読み手側の責任でも問題でもありません、全ては併記文字を決めたごく少数の決定権者たち、及び駅名併記を掲示している側である JRと私鉄の責任なのです。

Intraasiaは 中国漢字 による駅名併記の現状を明瞭に批判し、より良い改善策として駅名の日本語音を写すべくピンインによる駅名併記を提言します。

この提言を皆さんによく理解してもらうために、単に主張を列挙するのではなく、知っていただきたい基本的知識と関連する言語知識、提言の基になる事実と論拠などを多くの例示と共に、序論から始まって延々と総字数約3万7千字に渡って書き綴りました。

Intraasia は当ブログのフォロワー数は何人などと言ったことは全く関心事ではありません。駅名の中国語併記の現状を遺憾に思って書き上げた当ブログを読んで下さった方々が、フォロワーになろうとなかろうと、中国漢字の使用をやめてピンインで表示すべきだという Intraasia の主張に賛同していただき、その主張が拡散していくことが Intraasia の一番の関心事であり、願いです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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