美と知

 美術・教育・成長するということを考える
( by HIGASHIURA Tetsuya )

スケッチのすすめ

2006年09月02日 | スケッチのすすめ
「デッサン」というと対象物の形やあり様を正確に捉える力、そしてそれを表現する力ということとなります。
「スケッチ」というともう少し描く人の気持ちに近い、フレンドリーな響きではないでしょうか。

「旅に出てスケッチを楽しむ。」というのは、人が旅の途中で気づいたこと、感じたことをメモ代わりに絵で表したものと言えます。正確に描くということよりも、その人のものの捉え方、感じ方が表れるものなのです。そこでは大胆な省略やデフォルメも許されます。
しかし、造形言語で表されたスケッチにおいても、見たものや感じたことが絵で伝わっているかかどうか、という点は大きなポイントとなります。

スケッチを通して作者の見たもの感じたことが第三者とコミュニケーションできることは大切です。
時々、自分だけの記録ですと言う人もいますが、描いたものを第三者に見てもらい共感してもらえると、そこに新たな喜びもうまれるのです。

スケッチは短時間に対象としっかり向き合い、夢中に、集中して、心の中で対話をしながら自分が感じたことに素直に描写していく姿勢が一番大切です。

時間をかけて描いたからといっていいスケッチになるとは限りません。
短時間でも、「集中した深さ」がスケッチの良し悪しを決めます。


「スケッチは、対象物に自分をぶつけることが大切だ。無心になると言い換えてもいいし、無我夢中になると言ってもいい。あるいは集中して描くと言ってもいい。自然や文物や仏像や人物に対して、心の中で対話をしながら対象物から感じ取ったことを線で思うままに描写していく。《スケッチとは、全人格の練磨となる》」
「対象物をどうスケッチしようと構わないわけだが、スケッチとは、それまでの持てる知識と技術を総動員し、その対象物をどう理解するか、を問われているのである。・・・表現力とか描写力を鍛えるには、なによりも「自分の意見(考え)」を持つことこそが大切なのである。」
「どこを省略して、どこを強調するかということは、言い換えれば、自分を問われていることなのだ。自分に意見がなければ、どこを省略したらいいのか皆目、見当ががつかない。省略とデフォルメが有機的につながってこそ、その人独自の世界が生まれてくるのである。」
(平山郁夫「永遠の道」110p~103p、1992、プレジデント社)



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スケッチの参考本について

2006年09月01日 | スケッチのすすめ
私の住んでいる西宮にジュンク堂という大きな本屋さんがあり、そこにスケッチ関係の本がたくさんあります。(その数の多さにはびっくりします。)そして、結構そこで立ち止まっていろいろとスケッチ本をのぞいている人がたくさんおられます。

スケッチを始めたい人、何回かスケッチをしてみたがもうひとつしっくりいかない人、もっとうまくなりたいと思っている人・・・そんな時に、自分にあった参考本が手元にあれば、技法において今まで気づかなかったことを見つけることもできるかもしれません。一番いいのは私の教室に来ていただくことですが・・・(笑)

しかし、あまりの数の多さに、その1冊を見つけるのがなかなか大変なんだろうなと思ってしまいました。先日、そこに並んでいたスケッチ本を一通り見てみました。(結構長時間、途中横のカフェで休憩をとりながら・・・)

あくまでも、私の基準で選んだものですが、「作品の品位と質」、そして、「技法的な解説」の2つのポイントにおいて、何冊かのスケッチ本をお勧めします。

◆『スケッチ・淡彩のすすめ』
網干啓四郎著、1993年、日本信用調査出版部、3000円

太い筆記具でポイントをおさえた作風。形をいかにとるかというほうに多くのページを割いており、形を見ていくポイントを作例を通してていねいに解説している点が評価出来る。多くの人が、塗ることよりも形をとることにつまづいていることを考えると非常に参考になると思いました。

◆『全国スケッチ百景 人気スポットと描くコツ』
鈴木輝實著、2005年、グラフィック社、2000円

スポットの紹介と作例が豊富で見ていても楽しいです。随所にあるワンポイントアドバイスは非常に役に立つ内容だと思います。

◆『はじめての水彩スケッチ 誰も教えてくれない基本と裏ワザ』
伊東啓一著、2005年、廣済堂出版、1600円

外にスケッチに出かけなくても、非常に身近な生活の中にたくさんスケッチの題材があり、気軽にスケッチをして上達を目指そうというねらいの本。とにかくまず描いてみたいが、どうしよう・・・という方はこれを見ればすぐにスケッチを始められそうです。

◆『水彩画 これであなたは上手くなる』
北条章著、2006年、学習研究社、1900円

さあ、これからスケッチを始めてみようと言う人には向かないかもしれないが、何回かスケッチをしてみて、ある程度形もとれるようになってきたら参考になる本だと思います。

◆『透明水彩なるほどレッスン プロが教える水とにじみの生かし方』
永山裕子著、2006年、グラフィック社、1800円

これは中級者向けである。透明水彩絵具の特徴を生かした塗り方が魅力的で参考になる。思わずやってみたくなります。ただし、かなり描きなれた人向きでしょうか。

◆『三原色で描く風景スケッチ』
野村重存著、2004年、旬報社、1600円

この本は評価が分かれるところだが、自分でスケッチをやってきて使う色数もどんどん増えていってどうしよう・・・と言う人には目からうろこの本であろう。
使う色数が多くて、かえって絵の中で色がゴチャゴチャになってしまっているという方はよくいる。シアン(青)、マゼンダ(赤紫)、イエロー(黄)の三原色だけでこうやって色が生み出せるんですよと混色の基本が描かれており、本当に自分にとって必要な色はなんだろうと考える参考になります。

◆『7色の花の水彩画 ポケットに絵筆を』
黒岩多喜子著、2006年、日貿出版、1500円

これは風景スケッチではなく、花のスケッチの本である。花をクローズアップしてどうやって描いたら特徴がつかめるだろうかという解説本も多いが、この本は優しく花をみつめて、ポイントをおさえた下書きの作り方と、多くの図版が掲載されていて、私にも描けそうかなと思わず花屋さんに行きたくなるような本です。

◆『季節の花を描こう かんたん墨彩画』
中津宜子著、2006年、山海堂、1600円

これは墨彩の分野の本であるので、絵具も違うが、運筆やちょっとしたにじみやかすれの作り方などスケッチに応用できる技法も多くあり参考になります。絵を描くという点では同じです。


スケッチの道具についてはこちらをご覧ください。
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スケッチ用具について

2006年08月30日 | スケッチのすすめ


スケッチの用具はコンパクトに限ります。最小限自分の表現に必要な用具を見つけるには経験しかありませんが、他の人がどんな用具を使っているのかは参考になると思います。

参考までに、私のスケッチの用具を紹介します。
写真のスケッチ用具一式とスケッチブック、飲料水、折りたたみ傘、ウェットティッシュがあればどんな状況にも対応できます。
余裕があれば、携帯のイスなどがあればいうことありません。


写真右上より、
水筆(柄の部分に水が入り、この筆だけで絵の具を溶かして塗ることが出来ますので、重宝します。)
(穂先がやわらかく、ゆったりとした筆です。濡らすと穂先がピシッとそろいます。HOLBEIN社 series250 3号。柄が長いので6cmほどカットしています。この筆はもう15年ぐらい使っています。)
ドローイングペン(SAKURA社 PIGMA 0.5mm、顔料インクで水に滲みません。私はよくこれで描きます。)
鉛筆(Schwan-STABILO社 の8Bの濃さ2本です。芯がやわらかいので作画途中で芯が無くなって削りの中断が無いように2本用意します。)
色鉛筆黒(FARBER CASTELL社の199番です。)
練り消し小片(消すためではなく、鉛筆で描いたときに調子を作るときにこれでこすったりします。)
折りたたみ式霧吹き(ビン入りのフェキサティフをかけるときに使います。)
カッター
筆洗(何かのふたを流用しています。)
小型ペットボトル(水入れです。)
ビン入りのフェキサティフ(鉛筆で描いたときの定着液です。これをかけると鉛筆が擦れてとれたりしません。)
パレット(アトリエパレットNo.250[16仕切り]サイズ85×200mmのコンパクトサイズです。立っままスケッチブックと一緒に持って描けるサイズです。アトリエでじっくりと描くときでもこのサイズがあれば十分です。)
24色仕切りのパレットとなるとこのパレットよりもずいぶんと大きくなってしまいます。16仕切りのこのサイズがなんとも手ごろなサイズといえます。

絵具ですが、水彩絵の具といっても数種類あります。
透明水彩絵具
不透明水彩絵具(ガッシュ)
アクリル絵具
アクリルガッシュ絵具
ポイントは透明絵具か、不透明絵具かということと、アクリル絵具かどうかということです。(最近は水溶性油絵具というものも出てますので注意してください。)
さらに、それぞれいろいろなメーカーから発売されていますので、お店に行くとその量に圧倒されてしまいます。
メーカーですが、
日本でしたら、ホルベイン、クサカベ、ターナー、マツダ、さくら、ペンテルなど・・・
海外でしたら、ウィンザーニュートン、シュミンケ、レンブラント、ラウニー、ペリカン、など・・・
があります。
スケッチで一般的に使うのは、透明水彩絵具です。

そして、透明水彩絵具は、チューブ入りのものと、固形(ハーフパン)のものがありますが、私はチューブ入りの絵の具を小型パレットに出して使っています。使う色については個人の好みもありますが、他の人がどんな色をつかっているのかは興味あるところではないでしょうか。基本12色セットというものもありますが、本当に使いたい色はそこにはそろっていません。
メーカーによって同じ色名でもずいぶんと色の印象が違ってきますが、私はWINSOR&NEWTON社の透明水彩絵具を基本に使っています(*他社絵具3色併用)。
パレット上段左より、セルリアンブルー、コバルトブルー、フレンチウルトラマリン、ネイプルスイエロー、*ROWNEY社のレモンイエロー、カドミウムイエロー、ウィンザーレッド、アリザリンクリムソン、バーントシェンナ、ローシェンナ、*HOLBEIN社の金、コバルトバイオレット
下段左より、ウィンザーエメラルド、フーカースグリーン、ヴィリジャン、ウィンザーブルーグリーンシェード、アイボリーブラック、下段右端は*HOLBEIN社の胡粉(白)

以上18色を並べています。それと◆水きり用のティッシュをパレット右下にはめ込んでいます。

*レモンイエローはROWNEY社のものが群を抜いて綺麗です。ぜひ比べてみてください。
*金と胡粉はめったに使うことはありませんが、いざというときどうしてもほしい色です。


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尾道への旅

2006年08月20日 | スケッチのすすめ


 

2006年8月17日から20日まで3泊4日で、学生と広島県尾道に写生に出かけてきました。
台風が九州上陸ということでお天気が心配でしたが、半日ほど雨が降った程度で、快晴の4日間でした。

「旅に出る・・・ 人と人との語らい。風土との出会い。そのときどきに新しい何かに出会う・・・」

スケッチ旅行に行くと、そんなフレーズが自然と出てくるのです。
ゆっくりと佇むことって、毎日の生活の中でなかなかありません。この旅行中、町を散策しながら、そして佇みスケッチブックを広げる。
風景と自分との静寂の対話の時がすぎていきます・・・
なんともゆったりとした時間を過ごせました。



 
 


参考:スケッチ用具について
コメント (2)
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東尋坊スケッチ

2005年04月30日 | スケッチのすすめ
2001年7月23日~25日





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