卒業論文の概要紹介PARTⅢ

2007年01月30日 | 授業&実習
 近年、高齢化が進行するなか、健康に対する関心が高まっており、健康食品の需要も拡大傾向にある。島根県内では薬用樹としてキハダが植栽されたり、健康食品の原料としてヤマモモが利用されている。また、身近な樹木として本県に多く自生しているクロモジ、アカメガシワに薬効が確認され、今後の利用が期待されている。薬用の他にもクロモジの枝葉からはクロモジ油が採れ、石鹸の香料、香水などに利用され、アカメガシワは建材、薪炭材、樹皮が染料に利用されるなど有用な広葉樹である。これらの樹種はさし木での栽培も可能であると考えられるが、栽培事例が少なく自生種が採取されている。
 そこで両種についてさし木による苗木生産を試みて効率的な栽培方法を考えるうえで必要となる発根時期、発根率、根の状態について調査した。

 概要

 K君:「有用広葉樹のさし木による発根の調査」

1,試験方法

6月23日あら穂を採取し、その日の内に穂づくりと挿し付けを行った。挿し穂は切り口を斜め切りとし、長さは10cmとした。クロモジは葉を2~3枚残し、アカメガシワは葉を付けなかった。挿し床は鹿沼土を十分散水し、プランターを用いた。クロモジ、アカメガシワ各140本をガラス温室、露地に70本づつに分け管理し
た。

 露地は1週間に2~3回朝・夕に手散水し、ガラス温室では6時、8時、11時、14時、17時に10分間のミスト散水を行った。

 挿し付け後、70日後に10本、100日後、130日後、160日後に20本づつ堀取り、発根状態を調査した。また、発根した挿し穂全てをポットに仮植し、12月上旬堀取り乾燥重量を測定した。

2,結果
1)発根数
・クロモジはガラス温室、露地とも100日後に発根が認められたが、ガラス温室の方が明らかに多かった。ガラス温室での130日後が最も多く、発根率は55%に達したが、160日後には減少した。

・アカメガシワはガラス温室では100日後、露地では70日後に発根が認められた。ガラス温室に比べ露地の方が発根数は多かった。露地での100日後に最も多く発根し、25%に達したが、日数が経過するほど減少した。

2)根の長さ
・クロモジは露地に比べガラス温室の方が根は長く成長した。ガラス温室では100日後から130日後の30日間で約2倍に増加したが,130日後から160日後の30日間には大きな差はなかった。

・アカメガシワは露地の70日後には20cmあり、その後130日後まで若干増加し、その後減少した。

3)根の本数
・クロモジは露地に比べガラス温室の方が根の本数が多かった。ガラス温室、露地とも130日後が最も根の本数(約5本)が多く,160日後には減少した。

・アカメガシワは露地では160日後が多くの挿し穂から発根した100日後は1本からの発根数は約4本であった。

4)根の乾重量
・クロモジはガラス温室では100日後から130日後(約0.025g)の30日間で薬2.5倍に増加したが130日後から160日後の30日間はあまり増解しなかった。

・アカメガシワは露地では、100日後以降の値は0.03~0.045gの範囲であった。ガラス温室では100日後(0.040g)に最も重く、その後は減少した。

 
 今回の調査では、クロモジは露地で手散水するよりガラス温室でミスト散水した方が発根した挿し穂数が多く、挿し付けから130日後が最も多かった。

 アカメガシワは挿し付けから70日後、100日後には、露地で手散水した方が多く発根し、ガラス温室でのミスト散水する効果はなかった。最も多く発根したのは100日後であった。

 クロモジをガラス温室で130日管理した場合と、アカメガシワを露地で100日管理した場合の根の長さ、挿し穂1本からの発根数、根の乾燥重量の結果をみても値が大きく低下することはなく、これが適切な管理条件と考えられる。

 クロモジ、アカメガシワとも管理期間の長い160日後には発根した挿し穂の本数は減少した。根の長さ、1本からの発根数でも同様な結果となり、原因としては管理中の根腐れが考えられる。

 従って、排水性の高い挿し床、散水の程度などを改良し、根腐れのない管理条件での適切な堀取り時期を検討する必要がある。


          質問に的確に回答するK君

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。