卒業論文の概要PARTⅥ

2007年02月14日 | 授業&実習
 現在、木材価格の低迷等により森林の長伐期化に移行しています。樹齢が高くなりますと黒心や腐朽など心材部の欠陥が蓄積され、木材価格が低下することが懸念されます。これら欠陥木は外観から診断することは一般に困難です。これを解決するため、近年、研究・開発された樹幹打撃時の共振現象を利用した材質診断法である横打撃診断法があります。
 本法を実用化するうえでの健全木の測定値すなわち健全値を把握する必要があります。しかし、本法を用いてのヒノキ林分で実施した例は少なく、健全値の実態は明らかではありません。そこでヒノキ8林分で調査した概要をお知らせします。



 概  要

   T松君:「横打撃共振法におけるヒノキ健全値の推定」

1、調査方法
 調査は平成18年6月29日~9月28日、来島県有林及び中山間地域研究センター内試験林のヒノキ人工林8林分で行った。調査林分は林齢27~68年生、調査本数は1林分当たり40本を目標としたが、本数の少ない林分で17本、多い林分で165本の計693本について調査した。   

(横打撃共振法)
 高さ1.2mの位置で調査木の樹幹を木製ハンマーで打撃する。このときの樹幹の振動の共振周波数Frを測定する。また、同位置で樹幹直径Dを測定する。このとき式ー1が成立する。健全木であればヤング率Eと密度ρはほぼ一定であるためD・Fr値は一定となるが、樹幹内部に欠陥が生じるとD・Fr値は変化する。
 これまでの研究から、本法によって心材の腐れ、スギの黒心、凍裂、材の変色などの発生を診断できるとされている。


  D・Fr=√E/ρ・K   (式ー1)
     D:樹幹直径(cm)Fr:共振周波数(HZ)
      E:縦振動ヤング率(P阿) ρ:密度(g/s ㎡) K:係数
    
2、調査結果
 全林分でのD・Fr値は13.2~41.5に及んだ。

 各林分の平均D・Fr値は県有林4を除く7林分では29.2~31.0とほぼ一定であったが、県有林4では34.8と高かった。各林分の平均D・Fr値と標高、傾斜方向及び勾配には関係は認めなかった。D・Fr値を階級別でみれば10~25が2.4%(17本)、25~30が38%(262本)、30~35が52%(358本)、35~40が8%(55本)、40~45が0.1%(1本)であり、26~35が全体の9割を占めた。
 既往の報告では、D・Fr値が29以下でも腐朽が生じている場合があったが、今回は明らかに欠陥があると考えられるD・Fr値が25.0以下と40.0以上の計18本を欠陥木とみなした。これら欠陥木を除いた平均D・Fr値は29.6~31.2及び34.8となり、これが各林分の健全木の平均D・Fr値と推定される。


 式ー1を変形すると式ー2が成立する。式ー2から、健全木であれば樹幹直径Dと共振周波数の逆数1/Frは比例することが判る。


    1/Fr=√ρ・K/E×D (式ー2)

 胸高直径Dと共振周波数の逆数1/Frをグラフ化すれば各林分の樹幹直径Dと1/Fr
には直線関係が認められ、これより上にプロットされたものは欠陥木と推定される。各林分の回帰直線は県有林4を除く7林分ではほぼ一定であったが、県有林4ではやや下側にプロットされた。

 ヒノキ8林分において横打撃共振法による測定を行い、各林分において健全木の平均D・Fr値(健全値の平均)を推定した。7林分では、健全木の平均D・Fr値は29.6~31.2とほぼ一定であったが、1林分では34.8と高った。このことから各林分の健全値は必ずしも一定でないことが明らかになった。なお、1林分の平均D・Fr値が高くなった原因は明らかではなく、今後検討する必要がある。

 また、本来は全ての調査木を伐採し、材質的な欠陥の有無を確認して健全値を把握すべきであるが、調査の都合からできなかった。これについては今後の課題である。



   緊張した面持ちで発表に入るT松君

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