卒業論文の概要PARTⅦ

2007年02月20日 | 授業&実習
 モウソウチクを炭材とし、オイル缶窯、ドラム缶窯及び島根八名窯で製炭した炭質にどのような変化が生じるのか、製炭時間・製炭温度・収炭率・硬度・燃焼温度・燃焼時間から比較検討しました。


  概  要

    Y中君:「オイル缶窯とドラム缶窯で製炭した炭質比較」


Ⅰ、調査概要
 1.調査期間  平成18年5月1日~12月26日
 2.調査場所  中山間地域研究センター地内
 3.試験炭材  モウソウチク
 4.調査方法
 (1)製炭工程 
   オイル缶窯とドラム缶窯による製炭は以下の工程により3回行った。また、比較に用いた八名窯による竹炭は大田市仁摩町在住の製炭者から譲り受けた。
  1)炭材の伐採と調整
   5月1日に大田市仁摩町の竹林にて伐採搬出し、30cmに玉切りし、5~8分割の後3ヶ月以上天然乾燥させ含水率を20%以下に減少させた。 
  2)炭窯の製作と設置
   ドラム缶窯は中山間地域研究センターに設置された窯(横方・直径57cm、全長105.5cm)を使用し、オイル缶窯(横型・直径30cm。全長93.5cm)はドラム缶窯の構造を参考とし、製作、設置した。 
  3)製炭
    製炭方法は下記の手順で行った。
   ①炭材の詰め込み
    晴れの日を選び、炭材は隙間無く詰め込んだ。
   ②点火と炭化
    耐火レンガと泥土で焚き口をつくり点火した。煙突の煙温度が75~80℃になるまで焚き口で薪を燃やし、炭材への着火を確認する。煙突温度は20分毎にデジタル温度計で測定し、煙の色及び煙の出具合を確認しながら焚き口の大きさを調整し炭化を進めた。
   ③窯の閉鎖
    煙の色が白から徐々に稀薄となり、青みがかり無色透明になった時点で焚き口を閉鎖し、次いで煙突を除去し、空気が窯内に入らないよう再度泥土で全体を閉鎖し消火した。 
   ④出炭
    消火から1日以上経過した晴れた日に取り出した。

 (2)収炭率
    炭材と竹炭の重量を台秤により測定し、下記の式より算出した。ただし、灰は炭化後重量に含まないものとした。
      収炭率(%)=炭化後重量/炭化前重量×100

 (3)精錬度
    窯毎に無作為に抽出した竹炭各50本を試験体とし、両端の木口と中央を表・裏に分け計4箇所を精錬度計で測定し、平均値を求めた。  

 (4)硬度
    窯毎に無作為に抽出した竹炭各50本を試験体とし、試験体中央を折り、断面を三浦式木炭硬度計で測定した。

 (5)容積重
    窯毎に無作為に抽出した竹炭各50本を試験体とし、重量を測定後メスシリンダーに沈めて容積を求め、容積重を測定した。

 (6)燃焼時間と燃焼温度
    窯毎に無作為に抽出した竹炭各100gを試験体とし、長さ7cmにそろえ、5分間コンロで加熱し着火を確認した後、七輪内で燃焼させた。このとき、ヘアドライヤーで絶えず2.4m/sの風を送り、燃焼温度は炭表面から7cmの位置にデジタル温度計を固定し、5分毎に測定した。

Ⅱ、調査結果
 1、製炭時間と製炭温度
   ドラム缶窯の3回の製炭時間はほぼ一定であり、5時間20分から5時間40分であったがオイル缶窯は大きな差が認められた。オイル缶窯の製炭時間は3時間30分、6時間20分、7時間55分であった。
   また、煙突温度はドラム缶窯が緩やかに上昇(3回の最高温度は220℃、270℃、320℃)したのに対し、オイル缶窯は後  半急激に上昇(3回の最高温度は250℃、320℃、320℃した。これはオイル缶窯の形状が小さいため、風や火の焚き方あるいは外気温などに大きく影響を受けたためと考えられる。
   なお、通常八名窯の製炭時間は窯内乾燥時間を除くと約50時間(点火3時間、炭化30時間、精錬17時間)で、窯内温度は400℃まで上昇させる。 

 2、収炭率
   オイル缶窯、ドラム缶窯で各3回製炭したが、収炭率はオイル缶窯で平均23%、ドラム缶窯で平均27%とドラム缶窯の収炭率が高かった。また、八名窯の収炭率は10%でオイル缶窯、ドラム缶窯より低い値であった。これはオイル缶窯、ドラム缶窯では十分乾燥した炭材を用いているのに対し、八名窯では伐採直後の炭材を用いて製炭しているためと考えられる。

 3、精錬度
   精錬度とは炭表面の電気抵抗を測定し、炭化の程度を示す値であり、製炭工程では炭化の終わりに精錬という光熱処理を行うが、精錬を行うと木炭のガス分はなくなり炭素量が増加する。炭素量と電気抵抗の間には密接な関係があり、電気抵抗を計測することにより精錬度を示しことができる。今回の試験ではオイル缶窯が最も優れ平均の精錬度は約3であり、次いでドラム缶窯の約5、八名窯は約8という結果となった。オイル缶窯とドラム缶窯では最終炭火時の温度がオイル缶窯が若干上回っていたこと及び窯の大きさが影響したものと考えられる。最終炭火時の温度はオイル缶窯で250℃、320℃、320℃、ドラム缶窯で100℃、180℃、230℃であった。

 4、硬度
   炭の硬度は低いものから高いものまで1~20に区分される。オイル缶窯、ドラム缶窯の竹炭硬度は1~7と軟質で、八名窯で製炭した炭は17~19と非常に硬質であった。これは、オイル缶窯とドラム缶窯は8時間以内の急速炭化であったのに対し、八名窯は50時間に及ぶ製炭時間で緩やかに炭化が進んだことにより硬度の高い竹炭になったとものと考えられる。 

 5、容積重
   容積重とはg/㎤で表し、㎤当たりの重量が大きいほど密度が高く、硬度が上昇する。容積重も硬度と同様な傾向があり、オイル缶窯とドラム缶窯は低く、八名窯が大きかった。

 6、燃焼時間と燃焼温度
   オイル缶窯とドラム缶窯の炭は着火が容易で着火5~10分後の初期温度が非常に高かったが、八名窯より火持ちは劣った。八名窯の炭は十分着火するまで20分かかったが、燃焼温度の変化が緩やかで、火持ちもよかった。
   製炭時間はオイル缶窯で4~8時間、ドラム缶窯で6時間であり、八名窯の50時間より短時間での製炭が可能であったオイル缶窯とドラム缶窯は1回当たりの出炭量は八名窯より少ないものの、収炭率は八名窯より高かった。炭質としてはゆっくり炭化する八名窯がよいが、オイル缶窯、ドラム缶窯の竹炭は火付きが容易で燃焼温度も高いので十分燃料として利用できる。
   また、八名窯のように竹炭の大量生産は困難であるが、オイル缶窯、ドラム缶窯は窯の製作が容易で、製炭時間が短く、場所の要求度も低いので様々な場所での製炭が可能である。
   しかし、オイル缶窯を使った製炭法はあまり知られておらず、今後はオイル缶窯の構造などを改良し、製炭時間の安定と更なる炭質の向上を検討していかなければならない。



  発表中のY中君

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2 コメント

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炭太郎さんへのコメント (農大情報管理者)
2007-02-28 17:52:33
 コメントが遅くなり申し訳ありません。卒論のテーマは各学生が自主的に?決定し、中山間地域研究センター等の各専門の先生がと相談の上決定します。来年度の2学年は4名です。従いまして、卒論のテーマも4課題です。この内1名が炭をテーマに検討していますが、「八名窯」を使っての調査を行いたい旨検討しているようです。
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Unknown (炭太郎)
2007-02-21 17:17:04
興味深い結果ですね。
今後の取り組みが楽しみです。
どなたか引き続いてやられるのでしょうか。
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