ニューズウィーク日本版(12/19号)の目次を開いたら「ウクライナは既に戦いに勝利した」という見出しに目が止まった。書いたのはユリア・ティモシェンコ、元首相。美人だったのでよく覚えているが、2度も首相になって急進的に西欧への接近を進めながら、ロシアの軍事侵攻への備えを全くしてこなかったという意味で、今般のロシアによる侵略の責任を追うべき政治家の1人だと思っていた。
そんな人が何を勝った勝ったと言ってるのか。
記事に書いているのはこんなことだ。
全世界が支援している。民主政治体制を確立した。男女を問わず国民が命がけで戦っている。ドローンなど高い技術力の武器兵器を有している。親ロシアの裏切り者を排除したい、等々。
すぐにあたまに浮かんだのはエマニュエル・トッドが1ヶ月も前に文藝春秋に書いた「米国はすでに敗北している」。ロシア経済は強く、また工業生産力と兵器供給力において米国とNATOに優っている。“反転攻勢”を開始してからウクライナ側には大量の死者・負傷者が出ている、等々。
トッドがこう書いて1ヶ月たった今、バイデン政権はウクライナ支援を含む予算を議会に拒否されている。
またEUもウクライナ支援の強化などのための拠出金の増額をまとめられなかった。
こうして支援が停滞するなか、戦争の現場では砲弾不足が深刻化する事態になっているという。
先日ゼレンスキーは米議会に押しかけて追加支援を要請したが、もはや英雄を迎えるムードはなく事態はかわらず。
他国の軍事のみならず、経済支援がなければ戦争が継続できない状況なのに、“勝利した”なんて妄想というしかない。
民主主義国家が独裁国家に侵略され、戦うも敗北しつつある。世界は恐ろしい時代を迎えている。日本も本当にしっかりしなければ他人事ではない。