クリストファー・レーン(寺西のぶ子訳),2009,乱造される心の病,河出書房新社.(11.10.24)
内気な人々はどのようにして病人にさせられたのか?巧みな広告戦略で普通の人々を精神疾患に仕立て上げ、恐ろしい向精神薬で巨利を貪ろうとする精神病産業の実像に迫る。
「内気」であったり、ときおり不安感にさいなまれたりするのは、なんら異常なことではなく、矯正されなければならないわけではないし、ましてや、治療されなければいけないいわれはまったくない。
ところが、DSM(「精神疾患の診断・統計マニュアル」)第三版では、外向的、社交的ではなかったり、強く持続的な不安感をもったりする者には、「社会不安障がい」のラベルが貼られることになってしまった。
いったん、疾病なり障がいなりがつくり出されれば、それを治療するための、巨大な向精神薬市場が形成される。
本書は、DSMの疾病、障がいカテゴリーが、根拠薄弱なまま恣意的に形成されてきたものであること、医薬品の利権を背景として捏造されてきたものであることを例証する。
人生のなかで当然あってしかるべき苦悩、心理的苦痛がすべて疾病、障がいカテゴリーにくくり入れられ、処方される向精神薬がしばしばさらに症状を悪化させ、深刻な副作用を引き起こすことを考えると、医薬品利権にまみれた精神科臨床を疑い警戒する必要があるだろう。
目次
第1章 心の問題か?脳の問題か?―不安をめぐる一〇〇年の闘い
第2章 感情が病状にされる―診断をめぐる闘争
第3章 内気は病気になった!―精神医療産業の決定的勝利
第4章 さあ、病気を売り込もう!―消費者に直接販売
第5章 反跳症候群―副作用と薬物依存の恐怖
第6章 プロザック帝国への反乱―立ち上がる人々
第7章 不安はどこへ行くのか?―感情を消された社会