原田隆之,2019,痴漢外来──性犯罪と闘う科学,筑摩書房.(12.8.24)
痴漢は犯罪であり、同時にその一部は「性的依存症」という病気でもある。東京都心のとある精神科クリニックで開かれる、通称「痴漢外来」。ここでは性的依存症の「治療」プログラムによって、通常30%台と言われる痴漢の再犯率を3%にまで抑えている。痴漢行為を行うのは、どんな人なのか。彼らに共通する「認知のゆがみ」とはなにか。どうすれば痴漢をやめさせることができるのか。最新の研究成果に基づき、痴漢をはじめとする性犯罪・性的問題行動の実態に迫る。
窃触(痴漢)、盗撮といった性犯罪は、歪んだ性欲の発露に端を発する、「やめるにやめられない」、一種の強迫神経症の現れであり、まぎれもない依存症──プロセス依存、行為依存の病気である。
もちろん、病気だからといって、彼らの行為が免罪されるわけではない。
性犯罪者を、一生、刑務所に収容しておくわけにはいかないわけであるから、彼らが依存の対象を断ち切ることができるように、認知行動療法等により治療することが必要だ。
罪は罪として裁き、病気は病気として治療する、こうしたスタンスを貫かなければ、性犯罪を抑止することはできないだろう。
目次
第1章 痴漢外来の一日
第2章 「病気」としての性的問題行動
第3章 性的依存症の原因と診断
第4章 性的依存症の治療
第5章 ハイリスク性犯罪者への対処
第6章 強迫的性行動症―さまざまな性の困難を生きる人々
第7章 性犯罪の被害者