長田美穂,2006,問題少女──生と死のボーダーラインで揺れた,PHP研究所.(12.7.24)
リストカット、万引き、売春、フーゾク――。境界性人格障害(ボーダーライン)と診断された彼女の死から見えてきたものとはなにか。
生と死。正常と異常。自分の外側と内側。人間は、つねにその境界線(ボーダーライン)を揺れ動く。リストカット、摂食障害、薬物依存、セックス依存……。つい境界線を越えてしまうことが、どの人にも起こりうる時代になった。そういった問題ごとが、もう他人ごととはいえない時代になった。本書は、女性ジャーナストが長年追い続けた「問題少女」の観察記録である。彼女・レイカは、鬱病とも境界性人格障害(ボーダーライン)とも診断されていた。だが、著者・長田との関係、つまり取材する者とされる者の関係をこえ、「友人」としての関係が深まりつつあった時、突如として彼女は自ら命を絶つ。そして著者は、その原因を、いや「悪者」を捜し求め彷徨をはじめる。そしてその彷徨のなかで出会う人々を通して、その奥にある現代社会の病理をあぶりだしていく。なぜ生きるのか、そして生と死について深く考える人々にぜひ読んで欲しい、ノンフィクション意欲作。
長田さんは、こころを病んだ少女、レイカに、取材者という立場を超え、親しい友人として寄り添う。
しかし、レイカは、首を吊って死んでしまう。
長田さんは、生前、レイカと関わった者たちを、執念深く取材し、なぜ、彼女が自死したのか、自問自答を繰り返していく。
自死は、周りの者に、究極の負債を担わせる。
それは、返済不能な贈与と言っても良い。
重い負債を返済しようとする長田さんの心情が真に迫る。
旧作であるが、このような良作が、電子書籍で読めるようになっているのはうれしい。
目次
第1章 遭遇
第2章 成熟
第3章 崩壊
第4章 彷徨
終章 再接続