早逝した作家、野沢尚の本作は、快楽殺人・保険金殺人、カルト教団内のドロドロとした性愛関係、心理操作・自己暗示、暗躍する公安警察権力等を素材として散りばめ、スピード感溢れる文体で一気に読ませる傑作だ。脚本家出身らしく、文章から生々しい映像と音声が浮かび上がる。読みどころは、幾多の人体が殺傷される際のエグい描写にあるだろう。だれにでも怖いもの見たさはある。あたかも、ニシキヘビが飲み込んだオオムカデに体内から噛み破られるシーンを見ているようなエグさは特筆ものだ。登場人物、とくに犯罪加害者の多くを女性にしたのも良い。たまには、血のにおいが漂うような、悪趣味なファンタジーに浸るのも悪くない。
白昼、渋谷のスクランブル交差点で爆弾テロ!二千個の鋼鉄球が一瞬のうちに多くの人生を奪った。新興宗教の教祖に死刑判決が下された直後だった。妻が獄中にいる複雑な事情を抱えた刑事鳴尾良輔は実行犯の照屋礼子を突きとめるが、彼女はかつて公安が教団に送り込んだ人物だった。迫真の野沢サスペンス。
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