湊かなえ,2023,人間標本,KADOKAWA.(2.6.25)
蝶が恋しい。蝶のことだけを考えながら生きていきたい。蝶の目に映る世界を欲した私は、ある日天啓を受ける。あの美しい少年たちは蝶なのだ。その輝きは標本になっても色あせることはない。五体目の標本が完成した時には大きな達成感を得たが、再び飢餓感が膨れ上がる。今こそ最高傑作を完成させるべきだ。果たしてそれは誰の標本か。――幼い時からその成長を目に焼き付けてきた息子の姿もまた、蝶として私の目に映ったのだった。イヤミスの女王、さらなる覚醒。15周年記念書下ろし作品。
蝶のような「美少年」を殺して「標本」にする。
それだけだと、たんなる猟奇譚になってしまうが、最後、真相が二転三転し、思わぬ真犯人が明らかになる。
わたしは、ミステリー小説として楽しんだが、「美少年」が好きな人は、猟奇譚として好奇心を充たすのだろうな。
わたしは、「美少年」に──「美少女」にも──なんの興味ももたないが、大学生時代の親友、Tくん──ギリシア彫刻から抜け出したかのような容貌で色白にして無毛──のことを思い出した。