生活保護の濫給は問題視されても漏給問題はメディアで取り上げられもしない。ひとり親世帯の貧困問題は、OECD諸国最悪のレベルにあるのに、最低賃金は、法定労働時間分働けば、少なくとも生活保護基準以上の所得が得られるようにはなっておらず、子育て費用の自己(親)負担は異常に重すぎるままである。
ひとり親世帯の親子に限らない。貧困問題は、非正規就労を余儀なくされる者、無年金か、低額年金しか収入源のない高齢者等、あらゆる世代にわたって深刻化している。
貧困問題を解決していくための税と社会保障のベストミックスを模索し実行していくことが喫緊の課題だが、現政権にそのような政策を立案、施行する意思はない。
本書に展開されているような現状分析と問題提起を理解し、政府の最大の責務がすべての国民に「最低所得保障」を行うことにあることを正しく認識して、国民の生活そっちのけの衆愚政治を終わらせることがなにより必要だ。
目次
序章 なぜ、最低所得保障なのか
第1章 最低生活保障実現に向けた生活保護
第2章 高齢者の最低所得保障―国民年金と生活保護について
第3章 母子世帯の最低所得保障
第4章 障害のある人に最低所得保障を
第5章 雇用保険制度における包括性―非正規労働者のセーフティネット
第6章 最低賃金と生活保護の整合性の再検討
第7章 課税最低限と社会保障―その役割分担
第8章 最低生活保障の理念を問う―「残余」の視点から
終章 最低所得保障制度の確立
補論 生活扶助基準における「世帯規模の経済性」の検討
格差が拡大し、貧困問題がますます深刻化するなか、最低所得保障への関心が高まっている。生活保護、児童扶養手当、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金、最低賃金、雇用保険、課税最低限―。これらをとりあげつつ、社会保険、公的扶助、税制などの組み合わせによって、最低限の所得保障をおこなう制度全体の実態と問題点を分析。これからのあり方を検討する。気鋭の研究者たちによる、提言の書。
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