過酷な自然環境や災害被災体験、そして貧困の苦しみが経験知として蓄積され、人間の無力さを他力本願の信仰へと昇華させた浄土真宗と、それを基盤とした万人平等主義、勤労を善行として尊ぶエートスが根付いてきたのが、福井、富山、石川の北陸三県である。
本書ではそのような宗教的、歴史的背景はあまり指摘されてはいないが、浄土真宗と近代資本主義の精神との親和性は、北陸三県だけでなく、滋賀、大阪、愛知、広島等の商工業発展の歴史のなかでも見出されてきた。
人々のニーズをくみとりそれを商品、サービスに具現化し、あくなき利益追求をはかっていくビジネスモデルが、北陸三県、とくに福井と富山で多数生まれてきたことは、世俗的な経済的欲望が敬虔な信仰と矛盾なく共存し、女性の賃労働が尊重されきてきたことと無縁ではない。
あらためて「福井モデル」や「富山モデル」が注目されているのは、そこに地域経済の疲弊を打破する知恵が数多く含まれているためだ。近代化の果ての閉塞状態から抜け出すヒントは伝統にこそある。とても興味深い、斬新なコミュニティビジネスの数々にその思いを強くした。
目次
第1章 「過去」―未来は過去の中にある
発見された遺体
少子化対策を阻んだA級戦犯 ほか
第2章 「現在」―世界を唸らせた富山市の挑戦
世界でブレークした富山市
住みやすさが負担になる日 ほか
第3章 「未来」―新しい仕事を創り続ける福井モデル
斜陽産業がいっぱい
なぜ産業が強くなるのか? ほか
最終章 すべての答えは、学校の授業にあった!
一九九八年に日本は変わった
教育は投資だという「逆算の発想」 ほか
人口減少による地方消滅時代を迎え、暗い未来予測に溢れる日本。しかし、北陸三県は共働き率と出生率で全国平均を上回り、幸福度も世帯収入も高い。歴史的な逆境を乗り越え続けたこの地方には、平等な協働システムと強い教育力があった。日本ならではの都市再生システムを取材した、画期的レポート。
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