未婚女性の専業主婦志向の高まりについては、晩婚化・未婚化の要因の一つとしてしばしば話題にされてきたが、既婚女性にも固定的性別役割分業意識への揺り戻しが生じていることが明らかになった。
しかし、それを、「男女平等を唱えたくせに」専業主婦志向に鞍替えしたととるのは、おそらくまちがっているのだろう。もともと専業主婦志向の強い女性は男女平等意識など希薄だ。問題は、1980年代後半に専業主婦を優遇する税制および年金制度が強化、創設され、男女雇用機会均等法を実質骨抜きにする制度的な専業主婦への誘導が行われたこと、それから情報機器の導入による労働生産性向上や海外への業務の外注化が進み、国内では、ごく少数の専門的知識・技能を要する職種と、膨大な低賃金の単純ルーティン労働を課せられる職種とに両極化し、当然のことながら、ほとんどの女性は後者の職種にしか就けなくなったことにある。
労働市場の分断を避ける手立てが講じられていればまだ事態はちがっていたのだろうが、どうみてもつまらなく報酬も少ない仕事を中心に人生を設計するよりも、(可能性はごく小さくなっているが)安定した高収入の職種に就く男性と結婚し、子育てと家事労働、および趣味や(カネにならない)社会活動に専念した方が、ずいぶんと人生がゆたかに感じられるのだろう。(繰り返すが、そんなけっこうな身分におさまれる女性はごく少数にすぎなくなっている。)
最低賃金水準の底上げ、ルーティンワーク従事者の意思決定参加の促進をはかっていかないことには、社会経済的には有害無益でしかない専業主婦志向がさらに広がっていくことになるのだろう。
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