女性ゆえの理不尽な賃金ダンピング、ケアワークの劣悪労働条件、不登校・引きこもりの子をもつ母親の孤立、苦悩、セクシャル・マイノリティの生きづらさ、そして、家族制度、婚姻制度のなかに囲われた女性のみを優遇し、独身、離別女性を抑圧する社会保障制度。
たとえば、児童扶養手当を継続受給するには、わざわざ役所の窓口に「現況届」を提出し、とくに、シンママは、同居している男性がいないか、根掘り葉掘り聞かれることになる。そんなの余計なお世話だろうと思うが、それもこれも、児童扶養手当が選別的な給付であることに由来するわけで、ベーシックインカムであれば、無条件で母と子どもに現金が支給されるのだから、普遍的な給付である後者の方が良いに決まっている。
執筆者の多くが、社会運動をになってきたシングル・マザーであり、それぞれのおかれた立場から、貧困、社会的排除、生きづらさが語られている。しかし、ベーシックインカムはそれらを緩和するものとして、付け足し程度で触れられているにすぎない。
女性が、生きづらさの当事者として、被差別経験を語るのは良い。だからといって、自分たちがたてたテーマにそぐわぬ論考でお茶を濁して良いとは思わない。辛いのはわかるが、過剰な感情表出ばかり読まされたら、さすがに食傷する。
私たちの望むものは多様な生を保障する公正な社会。ベーシックインカムは、性別役割分業と家父長制に縛られ、制度によって選別される暮らし方・生き方からの解放をもたらすか。
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