小杉礼子・鈴木晶子・野依智子・(公財)横浜市男女共同参画推進協会編著,2017,シングル女性の貧困──非正規職女性の仕事・暮らしと社会的支援,明石書店.(8.23.24)
本書は、2015年、「横浜市、大阪市、福岡市を中心とする地域に在住し、非正規職で働いている35~54歳で子どものいないシングル女性」(p.193)を対象に実施されたウェブアンケート調査、「非正規職シングル女性の社会的支援に向けたニーズ調査」の結果をふまえて編まれた作品である。
「貧困の女性化」が深刻化するなか、これまで、シングルマザーの貧困を対象とした書物は数多く出されてきたが、「シングル・子なし・非正規職」女性の貧困に焦点を合わせた研究は数少なかっただけに、このような試みにはそれ相応の価値がある。
企業収益と、中高年男性の雇用と賃金とを維持するために、非正規雇用を増やし、若年層、とくに女性に貧困を押しつけてきたツケが、本書で明らかにされているような非正規職シングル女性の苦痛、苦悩、将来不安となって現れている。
法定労働時間分働けば、年収300万円は確保できる水準になるよう、最低賃金は引き上げるべきであるし、その分、商品とサービスに価格転嫁されて物価が上昇したり、中高年男性の賃金が抑制されても、それらは容認されるべきである。
言うまでもなく、低収入既婚女性を優遇する「第三号被保険者」制度も廃止すべきだ。
目次
第1部 非正規職シングル女性のライフヒストリー
一般職社員から派遣に。コツコツと25年働いてきた 千羽瑠さん
図書館司書として四つの図書館で働いてきた ゆかりさん ほか
第2部 非正規職シングル女性問題にかんする論考
統計からみた35~44歳の非正規雇用に就くシングル女性
女性の非正規問題の新たな局面―貧困・孤立・未婚 ほか
第3部 支援の現場から
対談 支援の対象になりづらい女性たちを、どう支援していくか(朝比奈ミカ×鈴木晶子)
非正規職シングル女性への支援と保障
第4部 調査の概要と結果について
「非正規職シングル女性の社会的支援に向けたニーズ調査」の概要と結果