上野千鶴子・小倉千加子・富岡多恵子,1997,男流文学論,筑摩書房.(12.18.24)
吉行淳之介、島尾敏雄、谷崎潤一郎、小島信夫、村上春樹、三島由紀夫ら、6人の「男流」作家の作品とそれらをめぐる評論を、当世“札付き”の関西女3人が、バッタバッタと叩き斬る!刊行当初から話題騒然となり、「痛快!よくぞいってくれた。胸がスッとした。」「こんなものは文芸論じゃないっ!」など、賛否両論、すさまじい論議を呼び起こしたエポックメーキングな鼎談。面白さ保証付。
若いときからいだいてきた、男性作家が描く女性のセクシュアリティに対する違和感を、本書が見事に言語化してくれたことを思い起こす。
そんな女、いねえよ
男性作家が自らと女性という他者のセクシュアリティを描くとすれば、生殖を可能とするために創り上げられた奇妙奇天烈な性的ファンタジーやマスキュリニティの暴力性を、批判、反省、皮肉、諦念を織り交ぜて描く、これ以外に選択肢はない、わたしはそう思う。
はて、これからでも、大人の鑑賞に耐えうる男流文学ははたして現れるのだろうか。
『男流文学論』(上野千鶴子ほか著 筑摩書房 1992年1月発行)堀 紀美子
目次
吉行淳之介―砂の上の植物群・驟雨・夕暮まで
島尾敏雄―死の棘
谷崎潤一郎―卍・痴人の愛
小島信夫―抱擁家族
村上春樹―ノルウェイの森
三島由紀夫―鏡子の家・仮面の告白・禁色