本と音楽とねこと

ひっそりと逝こうとするねこ

 ねこは、死期が近づくと飼い主から隠れるようになる、ときには家を出て身を隠すようにして死ぬと言われてきたが、これはどうもほんとうらしい。
 11歳になるうちのねこ(チンチラ)は、これまで何度ももう死んでしまうのではないかというところまで衰弱したことがあったが、一週間ほど前から再び調子が悪くなった。家の中の人目に触れない隙間にからだを埋めて出てこようとしない。もちろんエサも水もとらない。じっとしたまま微動だにしない。息づかいだけが荒い。自らの死期を悟り、食べ物も水も断って、自ら衰弱死を待ってるようにしか見えなかった。
 救心やマカ、タウリン等を溶かして混ぜたエサと、マタタビで、なんとか生きながらえさせようととしたが、なかなか食べようとしない。一計を案じ、ひっそりと自然死できないように家中のあらゆる隙間をなくし身を隠せないようにしたら、今日からエサだけはなんとか食べるようになった。
 ねこがこのまま衰弱していき死んでしまうのか、生きようとする力と体力とを取り戻し、生きながらえるのか、わからない。飼い主としては死んでほしくないので、ねこが人目を避けてひっそりと死んでいく隙間をふさいで生きざるをえない環境にしたわけだが、これが自然に逆らうよからぬ所業に思えて仕方がない。死にいく生き物はそのまま逝かせるべきではないか。なんとも悩ましいところだ。

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