
だれもが自意識過剰になりがちな青年期のあいだはともかく、久しく「自己愛」とは無縁であったのだが、仕事柄、過剰な自己愛をもてあます若者と接する機会があるので、けっこう参考になった。
摂食障がい、自傷行為、ひきこもり、新型うつ病等と自己愛との関連は重要で、とくに過敏型自己愛から説明できる問題は数多いように思った。
いい歳こいて自己愛をもてあましている人からは、距離をおくほかない。権力を刃物のように振り回したり、SNSで自己を表出するのに一生懸命だったり、迷惑か、気持ち悪いかで、くわばらくわばら、である。
「自己愛というものはいまひとつつかみどころがなく、またこの言葉に対する反応も一定せず、人それぞれといった傾向が強いように思われる。…きわめて人間くさく、しかも根源的な要素に違いなく、ならばさまざまな側面が自己愛には備わっていることになる。そうでなければ、人間はもっと単純で薄っぺらで退屈な存在でしかあるまい。…」著者の春日武彦氏はこう述べています。
自分を大事にできなければ、生きづらいし、他人を大事にすることもできません。けれども、反対に、自分の中で自己愛をいい按配にコントロールできなければ、どこか独りよがりになってしまうし、やはり生きづらいし、人間関係でも、相手にじわじわストレスを与えることになってしまいます。
そんなふうにつきあいかたが難しいのが、自己愛なのです。
本書では、著者自身の経験から文学作品まで、自己愛にどうも折り合いがつけられない困った人たちのエピソードを通して、自己愛について探究していきます。「ああ、こんな人いるいる!」と思いながら、どこか自分の心の中も覗き込むことにもなる、そんなエッセイです。
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