宮淑子,2000,新版 セクシュアル・ハラスメント,朝日新聞社.(10.30.24)
女性の誰もが被害者となる可能性があるセクシュアル・ハラスメント。企業や大学で次々と明るみに出るセクハラの実態、報道に伴う二次被害の問題、裁判だけでは癒されない被害者たちの心理など、被害者への取材をもとにその犯罪の深刻さを浮き彫りにした渾身のルポ。
本書では、1980〜1990年代に起こったセクハラ事件が、裁判記録と被害当事者への取材を中心に取り上げられている。
どの事件をみても、加害者の行為、訴えられた際の抗弁の卑劣さには呆れかえるほかない。
職場は仕事をするところ、学校は勉強をするところであり、そこに権力が介在するとなれば、部下、生徒、学生が、性愛の対象として客体化されることは、原則、あってはならないことだ。
セクハラの加害者たちには、一様に、自らの権力行使がもたらす害悪について無自覚であり、むしろ権力を悪用して自らの性欲を充たし、それを暴力ではなく、双方合意のうえでの恋愛、性愛と思い込む、救いようのない幼稚な自己中心性がある。
本書のような、微に入り細を穿つ迫真のルポルタージュがめっきり少なくなったのが残念でならない。
目次
序 もし、あなたが絡まれたら―西船橋駅転落死事件
1 セクシュアル・ハラスメントの幕が上がるまで
2 “セクハラ第一号”となった裁判―福岡損害賠償請求事件
3 セクハラの本質が裁かれ出した―旭川セクシュアル・ハラスメント訴訟
4 キャンパス・セクハラの訴えが始まった
5 改正男女雇用機会均等法に明文化されて
6 セカンド・レイプはなくならない
7 被害者の癒しと援助とは