本と音楽とねこと

邂逅


御厨まさと,2014,邂逅,goodbook出版.(11.24.2019)


御厨まさと,2015,邂逅…その後,goodbook出版.(11.24.2019)

 筆者は、有料老人ホームの施設長。
 老人ホームに入居してきた、とある全盲で骨髄異形性症候群という不治の病をもつ中年男性との出会いから、噺ははじまる。男性から、小学生のときに受けたいじめ体験を含めたライフヒストリーを聞き取り、それを書籍化するはずが、男性が急逝し、当該男性のライフヒストリーに引き続き、筆者自らのライフヒストリーが語られていく。
 大手医療器具メーカーに勤務していた筆者の、理不尽な経緯による失職、再就職の失敗、精神疾患と脳内出血の発病、そして現職に就き、生きる意欲を回復するまでの過程が、実直に語られていく。
 わたしは、他者のライフヒストリーを聞き取るのが好きだ。とはいえ、宮本常一の『忘れられた日本人』に収められている「土佐源氏」のような、破天荒な噺であれば別だが、自慢話ばかりなのは、さすがに食傷する。本書は、筆者の人柄からか、自慢するのでもなく、かといって自らの受苦体験をひけらかす同情ポルノにもなっておらず、読んでいてさほど嫌味を感じない。一人の、いや二人のか、市井人の人生のありようを追体験できる二冊の書物である。
 プロの書き手から見ると、もう少し文章表現がどうにかならなかったのか、とか、ストーリーが散逸的でもうすこし噺の流れが整理されていた方が良かったとか、注文はでてくるであろうが、それを差し引いても、じんわりとした余韻が残る良い本であると思う。

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