チョ・ナムジュ(古川 綾子訳),2024,ソヨンドン物語,筑摩書房.(11.1.24)
ベストセラー『82年生まれ、キム・ジヨン』著者の邦訳最新作。マンションを舞台にした連作小説。資産価値にこだわる者の果てしない欲望と、持たざる者の希望。
コミュニティサイトへの投稿で、住民を混乱に陥れた「春の日パパ」とは誰か?警備員になったユジョンの父のその後は?一人デモをするアン・スンボクの動機とは?極狭い考試院に住み、塾でアルバイトをするアヨンの夢とは?不動産バブル、過剰な教育熱、格差に翻弄される住民たちの喜びと悲しみ。資産価値にこだわる者の果てしない欲望と苦悩。持たざる者の苦労と、未来への希望。架空の町のマンションを舞台にした連作小説。
ソウル市内の架空の街、ソヨンドンを舞台にして、高騰する不動産価格を前に、憎み、妬み、怒り、不安になり、絶望し、そして諦める人々の姿を描く。
居住するマンションの資産価値を高めるために、エゴイスティックな振る舞いをし、警備員を見下し乱暴狼藉をはたらく住民たちの醜悪さが非常によく描かれている。
小市民の卑しさは、韓国も日本も変わらないのだろうな。
一人ひとりの人物の造形がすばらしい作品だ。