輋門単叢の「輋」
産地から出ると、このお茶は城門単叢などの名前に変わるようですが、実はこの「輋」は、あちらの言葉では茶園を意味するそうで、輋門は、「皇帝に献上する御茶園の入口辺りにあった」茶樹であったことから、名づけられたとのこと。地元の若い人や外部の人は、そのストーリーを知らないこと、そして「輋」の字に馴染みがないため、市場に出ると名前が変わってしまうようなのです。ちなみにこの輋門はとてもバランスが良く落ち着きのある優しい味わいで、私が大好きなお茶の1つなのですが、ハッキリわかりやすい特徴がある訳ではないせいか、市場では比較的地味な存在です。
最近は専門書籍が、出てきてますが…
ここ数年は黄柏梓氏、葉漢鐘氏の著書が、現在一般流通の書籍の中でメジャーだとはおもいますが、実は、この内容(というより重要事項のほとんど)は、楊帯栄氏が自ら90年代に調査し、編集した「潮安県茶区概況及茶葉資源利用調査」が基礎になっています。特に茶樹、栽培、製造に関する情報収集や調査結果は、この楊氏の苦労なしには存在し得ませんでした。残念なのは楊氏は公務員であり、その調査結果は当時「内部資料」として一部にのみ流通していため、楊氏の貢献が表舞台に出なかったことです。
発展の基礎を築いた立役者が、発展を遂げた時に、必ずしも陽の光の当たるところにいるとは限らない…どの分野にもよくある事ではありますが、少し寂しい気もします。
余計なお世話とも思いますが、事実は事実ですので、ここには記しておこうと思います。