ウオンの対ドルレートは、韓国銀行の介入にもかかわらず08年11月21日には一時1525ウオンの安値(2007年10月末には899ウオン 08年9月3日に一時1159ウオン)。1997年から1998年の通貨危機以来10年8け月ぶりの安値圏にある。韓国経済は10年ぶりの苦境にあるといえる。
背景にある問題は何か。韓国から米国のファンドが資金を引き上げ、ドルに変える動きをしている。これについては08年9月にリーマン救済で韓国が決断しなかったことへの報復説もあるが、これは根拠のないものだ。外国人はもっと前の昨年夏以来、韓国株式を大量に売却している。韓国株下落は2007年7月に米国に連動する形で始まり、はどめがかからない。これは最近も続き、たとえば対外債権は4222億ドル(08/06末)が3999億ドル(08/09末)に減少している。
他方で外国銀行は、韓国で必要なドル資金の調達を拡大。同時期に対外債務は4206億ドルが4250億ドルに増加している。
短期対外債務の増加理由について輸出企業の輸出ドル債権に対する為替ヘッジ、韓国の海外ファンドの海外証券投資に対する為替ヘッジでドル資金が必要とされる。韓国政府は、短期債務の増加は、90年代とは異なり投資のための借入ではなく、ドル債権へのヘッジであるので、時間とともに解消するとしている。また2008年の経常収支についても、貿易黒字が続き、旅行収支などの赤字を補うとの楽観的な見通しをしていた。しかし後述するように08年11月韓国の輸出は急減している。
韓国は08年9月末に8年半ぶりに251億ドルの純債務国に転落した。加えてこれまで増勢をたもっていた韓国の輸出も08年11月に入って急減。前年同月比18.3%減少した。マイナスはサブプライムに揺れた07年9月以来。韓国経済の下振れは不可避だが問題はどこまで悪化するかだ。
韓国通貨当局はウオンの相場下落に対してウオン買いで介入。その結果、韓国の外貨準備は急減している(07年末に2622億ドル。08年8月末で2400億ドル。08年11月末で2005億ドル)。
介入資金と国内ドル資金の不足を恐れた韓国は2008年10月下旬に米連邦準備銀行と300億ドルのスワップ協定を締結。2度にわたり計70億ドルを調達した。これは市場のドル不足に対応したもの。11月27日に40億ドルを調達。12月9日にも30億ドルを調達した。
日本と中国に対しても通貨交換(スワップ)協定の資金枠の拡充を求めた。日本との間では130億ドルのスワップ協定があるがこれを300億ドルに引き上げる方向。
中国との間にも40億ドルの協定があるがこれを300億ドルに引き上げる。この話し合いはまず08年12月12日、日中韓中央銀行間で合意。その翌日の13日、日中韓首脳会議(福岡)で開催され、通貨交換協定の拡充が改めて確認合意された。
この展開をみていると韓国の経済金融システムが極めて深刻な危機、ドル資金不足に陥っているのは間違いない。今回の韓国救済に向けて、米日中がそれぞれ300億ドルの通貨交換協定を締結。総額900億ドルの資金枠を用意したことになる。
Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
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