Entrance for Studies in Finance

上場子会社の完全子会社化(親子上場解消)問題(2010)

上場会社数の減少がとまらない
  2010年のIPOは22社にとどまる(過去最高の2000年の204社の10分の1 かつそのうち6社は大塚HD、第一生命保険など設立後の年数が多い大企業) 2009年の19社よりは増加するが 低調
  2010年1-6月 日本は12社 韓国取引所KRX新興市場コスダック30社 中国深圳証券取引所の創業板54社に比べ出遅れ
上場会社数  
2010年9月末       3649社 全国証券取引所(5証券取引所)
  2010年1-3月の非公開化は31社 うちMBOが7社 逆に同時期のIPOは7社 (レコフ調べ)
  2009年末上場会社数 NASDAQ:2852, AIM:1293, KOSDAQ:1026, JASDAQ:889, MOTHERS:185      
2009年度末の上場企業数 3704社 前年度比114社減 3年連続の減少 新規上場は19社
  2009年度のIPOは19社 完全子会社化に伴う上場廃止を発表したもの53件 前年度比で約2倍 過去10年で最多
  過去最多は2007年度の47件 レコフ調べ
  2009年の上場廃止企業数は戦後最多の163社 もっとも多い理由は親会社による完全子会社化57社
  経営破たんで上場廃止になったのは23社 帝国データバンク調べ
2007年9月末       3927社 年2回集計の場合の過去ピーク 
2007年6月末      過去ピーク 
2006年度末の上場企業数 3926社 年度集計の過去ピーク 
上場会社数の減少の要因 
親会社による上場子会社の完全子会社化 
 MBOの活発化で退出増加
 新規株式公開(IPO)の低迷         
 株価が割安であること 日本経済の構造的停滞も反映

●上場子会社の完全子会社化問題
          2006年には400社を超えていたが2009年12月末には360社超 その後も減少
上場子会社への批判 親会社への利益の流出
          配当の形で親会社以外に利益が流出することは資本効率が悪い 
          親子間の不適切取引 子会社との利益相反起こりやすい
          親会社向けの売上が高い場合は本体に取り込む方が意思決定早い
          子会社の少数株主の保護
          高く重複する上場維持コスト(上場賦課金 4半期報告書の作成 今後は独立役員の設置義務など 海外での投資家説明会等を合わせ年1億円以上かかるとも 年間数1千万はかかる)
          親会社によるガバナンスの不徹底
          グループ経営の求心力を高める(連結経営を重視)グループ経営の効率化 → 完全子会社化  
なぜ上場するか   投資の出口(エグジットexit) → スピンオフ(シナジーがない場合は完全な独立を許す)
          株式売却益の獲得 → カーブアウト 
          資金調達 人材獲得でメリット(子会社知名度向上)
          子会社の士気
          株価による業績評価
          株価による規律

●非公開化(delisting)のメリット
          短期の利益を求める投資家から解放される
          経営者が長期の視点で資本政策や事業戦略を見直せる

private equity firm 完全子会社化 カーブアウト スピンオフなどに言及している

2010年の大型上場として第一生命と大塚HDがあった。しかし年末の株価はいずれの銘柄も、売出価格、公募価格を割っている

 いずれも歴史が古く大きな会社の新規上場(こうした古い企業ではなく設立年数の新しい企業のための新興市場改革が行われたが、結果として設立後の年数が多い企業が公開する場所に証券市場は戻ってしまった)。新興市場を経ないもの。2010年の新規上場は22社(見込 社数が前年比で増えたのは4年ぶり 2007 2008 2009と毎年上場社数は減り続けていた)。新規上場による資金調達額は1兆2800億円(見込 1兆円を超えるのは2006年以来)。しかし調達額の92%が以下の2社によるもの。
中国市場での新規上場による資金調達が前年比2.5倍の5000億元(6兆5000億円)とされるのとは大きな差がついている。

 まず第一生命保険は上場は4月1日(木)。相互会社から株式会社への転換のモデルケース。株券は契約者中心に割り振られ150万を超す株主が誕生したとのこと。国内主幹事を野村、みずほ、メリルリンチ日本の3社が共同で勤めた。
 売出価格を14万円として1000万株を発行。初値は16万円(時価総額1兆6000億円)。4月2日には16万8800円の高値を記録し、最初の関門は通過した。しかしこれをピークに株価は下落した。もともと安定株主ではなかった、大量に生まれた株主が売りに転じたともみえる。8月26日には9万8800円の安値を記録した。その後、株価は低迷を続けたが、11月頃から値を戻し始め12月29日の終値はなお14万には届かないものの133,400円まで回復している(売出価格に対して-4.7%)。12月30日の終値は131,900円、前日比1500円安、売出価格に対して-5.8%となった。
 この上場の仕組みは、1兆6000億円の基金を700万を超える契約者に株式の形で割り振るというもの。そして現金での割当になるもの(株式)について、売り出すという手法をとったので、資金調達額が大きい割に、市場に与える影響は限定的だったと考えられる。
 第一生命 株式会社化の仕組み nikkei4946より

 大塚HD(2008年設立の純粋持ち株会社)の上場は12月15日(水)。こちらは上場に当たり8000万株を公募増資(国内2330万株 海外5670万株)。公募価格は2100円で、発行費用を除く調達額は約1600億円とされる。初日の初値は2170円、終値は2140円(時価総額1兆1937億円)で、初日に公募価格を上回る課題をクリアした。上場時発行済み株式数は5億5783万株。主幹事 野村証券。
 その後 株価は12月20日にかけて2000円割れを喫することもあった。そこから戻したものの、12月29日の終値はこれも公募価格には届かない2065円であった(公募価格に対して-1.7%)。12月30日の終値は2000円で前日比65円安、公募価格に対して-4.8%となった。

 大塚HDの上場は2007年のソニーフィナンシャルHD以来の大型上場として注目されるものだった。
 大塚HD傘下には、強いブランドをもつ企業が多い。大塚製薬(統合失調症薬エビリファイ ポカリスエット)、大塚製薬工場(輸液 オロナミンH軟膏)、大鵬薬品工業(抗がん剤ティーエスワン、チオビタ)、ニチバン(セロテープ)、大塚化学(オロナミンC)、大塚食品(ボンカレー)、アース製薬(ゴキブリホイホイ)など。

 なお12月10日(金)に、注目度の高かったポーラ・オルビスHDの上場も実施されている。主幹事はこれも野村証券。資生堂、花王、コーセーに次ぐ国内第4位の化粧品メーカー。化粧品の訪問販売では最大手とされる。上場に伴う資金調達額は67億円あまり。ところが売出価格1800円に対して、初値1693円、終値1779円で初日から売出価格割れした。この結果には、失望の声が流れた。株価はその後 16日には一時1700円割れ、21日に1800円に迫ったあと再び下落。12月29日の終値は1688円となっている(売出価格に対して-6.2%)。12月30日の終値は1683円で前日比5円安 売出価格に対して-6.5%となった。

 originally appeared in December 30, 2010

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