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2014年の中越領土紛争について

 中国とベトナムとの領土をめぐる争いについては、根深いものがある。近年では1974年1月に中国はまず当時の南ベトナム政府と西沙諸島の領有をめぐって海戦(軍事衝突)をおこして、実効支配を始めた。このとき南ベトナムの軍人に多数の犠牲が出た。
 続いて1979年2月から3月にかけて中越戦争が生じた。これは中国が支援していたカンボジアのポルポト政権を、ベトナム側が崩壊させたことに対する中国側の報復とされるが、両軍に多大な(おそらくはそれぞれ万単位の)人的被害を出して、中国軍が撤退する形で収束した。これはベトナム軍の勝利といえるが、中国側の面子をつぶすことになり、1984年の国境紛争につながった。
 当時、ベトナムはソ連寄りとされ、対する中国はソ連と対立しており、かつポルポトを支援していた。ポルポト政権下のカンボジアでは大量虐殺が生じていた(規模は数十万以上)ほか、ベトナム人が圧迫されたり、ベトナムへの軍事的侵攻もあったとされるので、ベトナム側の行動は理解できる(ベトナムがカンボジアから軍事的に撤退するのは1989年。共産党政権であり、国民を大量虐殺したポルポトは奇妙なことに、その後、ベトナムを嫌うアメリカやタイの支援も受けてゲリラ戦を続けたとされる。結果としてアメリカはカンボジアで生じた大虐殺に目をふさいでいるし、道義的な責任を放棄している。カンボジアのケースは1965年の被害者200万とされるインドネシアで生じたインドネシア共産党同調者虐殺や、1950年の被害者数十万以上とされる韓国で生じた北朝鮮に同調者とみなされた民間人虐殺とは違っている。インドネシアや韓国の場合は、共産主義者とその同調者とみなされた人々の虐殺だった。カンボジアのケースは知識人を根絶やしにする虐殺だったとされる。共産主義者かどうかより、抵抗する可能性のある人々を根絶やしにする理不尽な虐殺だった。その意味では1930年代のスターリン体制下のソ連で起きた虐殺と類似しているといえるかもしれない)。
 しかし1979年のベトナムの勝利はおそらく中国側に怨みを残したと思われる。結果として5年後、1984年4月から7月にかけて断続的に3回にわたる、国境紛争が両者で交わされ、結果としてベトナム側は係争の地点を放棄し、中国側の勝利に終わった。このときベトナム側は、多くの(おそらくは数千の)兵士を失っている。
 そして最後の交戦となったのが1988年3月の南沙諸島:スプラトリー諸島をめぐる海戦である。このときもベトナム側の人的被害は大きく、中国が多くの環礁を実効支配することにつながった。このように中国はたびたび力でベトナムを押さえつけ、屈服させてきた。
このような経緯を思い起こすと、近年、両国が経済関係を密接になっていたことの方が不思議に思える。なぜ領土をめぐりこれほど争ってきた中国とベトナムは経済関係を深めてきたのだろうか。おそらくはベトナムの中にも親中派がいることが背景なのではないだろうか。しかしその結果、ベトナムでの工業生産は中国からの部品供給、ベトナムに進出している中国企業、そこに働く中国人従業員に依存する状態になっていた。国際分業のもとでの両国の対立は、物流やサプライチェーン網の寸断につながり、両国の経済に痛手となる。領土紛争の結果、中国からの投資の中止や停滞、中国人労働者の引き上げがベトナム経済に与える影響が懸念される。

 反中デモでは、中国人労働者に死者が出るなどデモの一部が暴徒化したほか、台湾系企業、日系企業にも被害が出ている。
2014年の中越領土紛争
2014年5月2日 西沙諸島:パラセル諸島 で石油掘削装置搬入 掘削開始へ
    5月6日 中国の楊国務委員とベトナムのミン副首相が電話会談
 2014年5月13日―14日 ベトナム南部 ビンズオン州 シンガポール工業団地で反中デモが暴徒化
            台湾企業 150社以上 韓国企業24社 中国企業11社に被害
    5月14日夜 中部 ハティン州の反中デモが暴徒化 中国側死者16人 ベトナム側5人 病院への搬送100人以上
            ハティン州の製鋼所で中国側死者1人 負傷 90人
    5月18日 この日までに中国人3000人以上が帰国
5月19日 この日までのチャーター便などでの中国人帰国者3553人 さらに3860人が同日のチャーター船で帰国 このほか列車などで多数の中国人 台湾人が帰国した模様。
    5月27日 パラセル諸島海域でベトナム漁船(乗員10人)が中国漁船の体当たりを受け沈没。40隻以上の中国船に包囲される。乗員はほかのベトナム漁船が救助。
    6月18日 中国の楊国務委員がハノイでベトナムのミン首相と会談
    7月1日 ベトナムのグエン・フー・チョン総書記が戦争の準備を整えるべきと発言
 2014年7月3日 トンキン湾でベトナム漁船(乗員6人)が中国船により拿捕される
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