Entrance for Studies in Finance

株主総会での議決権行使 スチュワードシップコードと助言会社 

スチュワードシップコードとは。企業に対する株式投資を行う機関投資家(大口資金をプロ組織として運用しているものをいう。代表的には年金の運用機関。)の望ましい行動の準則を定めたもので日本では2014年に金融庁が開催した有識者会議においてより定められ導入された(イギリスがお手本・CGはOECDの原則がお手本。)。コードの具体的内容は、行動指針を作り公表する、親会社取引先などと利益相反が起きないようにする、対話を通じて企業の状況を把握する、議決権行使の方針をつくり行使結果を集計公表する、など。コード受入機関投資家は2016年12月までに214に達した。2017年5月に改訂され、利益相反になりうるケースの洗い出し、対応を求める、行使した議決権の個別開示求める、よりきめ細かなものに改められた。しかしその後、個別開示の内容は、コード受入機関投資家の間でも対応が分かれていることが注目される。

企業統治指針(東証―金融庁で作成 2015年6月適用開始)・・・2015年5月 改正会社法施行

機関投資家の議決権行使に絡んで、助言を業務として行う助言会社の存在が知られている。米国に2社。ISS(insitutional  shareholder services 投資家のロバート・モンクスが1985年に設立)とダラスルイスの2社である。この業務については監督官庁がない。この助言会社が行っている助言に対して、助言内容に対するその社会的関心の高まりとともに、十分な人員(レポート作成の体制)を配置しているか(議案について十分な精査をしていないのでないか)、個々の助言内容は適切か(ファンドによる提案はファンドの利害によって出されている。その提案が正しくても間違っていても、支持することがファンドへの支援になる。そうした場合、助言会社はどう判断するべきか?黒田電気の問題(2015年)でISSは旧村上ファンド:レノの提案に賛成、ダグラスルイスは反対、をそれぞれ推奨した。私はダグラスルイスがいっているように、村上ファンドが長期的投資家でない以上、こうしたファンドの主張に従うことは助言会社としておかしいと考える。ISSの判断は村上ファンドの意向に沿ったもので助言会社に対する信頼を損なうものだった。助言会社の中立性を疑わせる助言だった。

この助言会社2社の意見が対立する図式は2017年にも繰り返された。しかし2017年の戦いでは候補者を旧通産官僚一人に絞った村上ファンドの提案が通った。この結果は、黒田電気の経営の混乱そして、経営情報の村上ファンドへの流出である。助言会社ISSの助言内容が、投資家視点であって企業の長期経営という視点でなく、ファンドの利害に沿った短期的なものである可能性は高いと思われる。このような助言会社ISSから運用機関は距離を置き、長期的な視点で議決権の問題を判断すべきだと考える)などの疑問が出されている。運用機関に対しても、助言会社に丸投げするのも無責任という指摘もある。問題の背景として、株主総会で出される議案の件数が膨らんでいることが挙げられている。

 なお助言会社間の意見の対立は、DMG森精機が自己株式を同社関連の財団の譲渡する議案をめぐって、ISSが反対推奨、グラスルイスが賛成推奨したとき(2017年3月)にもあった。この場合も明らかなのはISSが、これを安定株主作りとみて反対、グラスルイスが事業計画や資本政策は取締役会に任せることが好ましい(財団に自己株式を譲渡しても株主に経済的損失は発生しにくい)として賛成であった。明らかにISSは、投資家視点、グラスルイスは経営者視点で、対比的だ。そしてここまで露骨であれば、ISSの助言の仕方も、そうしたものだと判断して、評価した方がよさそうだ。そして望ましいのは、あくまで助言会社の助言をあくまで参考意見として、運用機関は自分自身の見識、判断力をもつことだ。

 株主総会 議案の提案権は 総議決権の1%以上の株を6ケ月以上保有する場合に与えられる 株主提案権制度は1981年に少数株主の意見を経営に反映させるため導入。英独では5%以上の保有が必要にくらべゆるやか。米国も1%以上(または2000ドル以上の株式保有)だが、提案を1人1案に限り、取締役選任や配当などの提案除いている。厳しくすることと、2015年の企業統治指針の矛盾を指摘する意見もある。2014年度で株主提案を受けた上場企業は34社。5年前の5割増し。

 問題:一人の株主が大量の提案を出して、提案の精査や株主への通知で企業に過度の負担を与える例がある。総会の進行が滞る→企業側は乱用防止求めている

  公的年金・企業年金 の 運用機関 はつぎのように分かれている。 

 運用機関 信託銀行など 90兆円;生命保険会社 20兆円;損害保険会社 7兆円;外国法人 155兆円

 

以下は、問題とされる総会議案の例

経営者報酬の在り方

・大きさの適切性

・業績や株価に関わらず支払われる基本報酬の大きさは 日本とかイギリスは小さい

・株式連動型報酬 促進するべきとの考え方がある

社外取締役の在り方

・全体の3分の1以上とすること(シンガポールは3分の1以上 欧米では半数超える 東証1部では3分の1超えるのは23%

相談役・顧問の扱い…会社法に規定がない曖昧な日本特有の制度・・しかし6割の企業で在任者がいる(上場企業に対する経済産業省調査。正確には62% 544社 経済産業省の調査では 現経営陣への指示・指導 業界団体や財界での活動が制度がある理由)。株主に対して説明責任のない人が経営に影響力をもち報酬や待遇が開示されない → 一般の社員が定年で退職するなか、相談役・顧問という形で元経営者を厚遇し、老害を広げるこの制度は速やかに廃止するべきという意見は社会的にも強い。

企業防衛策

・必要性合理性説明できるか

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Area Studies」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2024年
2023年
人気記事