Entrance for Studies in Finance

ダブルバズーカ(QQE2)

2014年10月末に取られた日銀の追加緩和と前後して決まった年金積立金運用独立行政法人GPIFの運用方針変更という2つの政策を景気浮揚(デフレ脱却)に向けた強力な政策であるとして、ダブルバズーカと呼ぶ。後ろの運用方針の変更問題から生じる国債の消化問題を、日銀の追加緩和という名目で日銀が消化する(引き受ける)仕組みになっている。強力な景気浮揚策としてダブルバズーカと名付けられた。さらには消費税引き上げ時期の延期がこの直後に決定されたことと組み合わせて、デフレ後退への政府の強い意志を示すものと理解されている。しかしこの政策には、日銀を財政ファイナンスに使うものとの批判や、すでに景気浮揚は始まっていたのだから、消費税の引き上げ時期延期はするべきでなかったとの批判などがある。

2013年1月に政府日銀は共同声明をだし、日銀は物価目標の早期達成(2年以内に2%まで引き上げる) 政府は財政健全化の推進をそれぞれ約束した。
そして日銀は黒田総裁の就任とともに異次元緩和(2013年4月からQQE量的質的緩和 中央銀行のバランスシートを使う量的緩和政策QE 中銀のバランスシートは巨大化 中銀の政策は短期金利誘導から資金供給量の緩和へシフト 目標はインフレ防止からデフレ回避へ 政府からの独立から政府との連携へ 背景は金利ガゼロ金利化して金利による金融緩和が困難になったこと)を展開した(2013年4月4日量的質的金融緩和の決定 マネタリーベース:日銀の当座預金残高合計を2年間で2倍に拡大する 2013年4月150兆円 2015年3月290兆円 年間80兆円ペース 経済成長を促す効果があると主張される 金融機関は国債から企業貸出に移るとされる しかし2015年2月の消費者物価上昇率:消費税の影響を除くは0%→ 起きたのは株価上昇だけ物価も経済もほとんど成長していないという批判高まる そもそも需要が制約されていないので投資意欲がわかない。企業はすでに資金余剰にあり投資する気があれば投資している。などの反論あり。)。アベノミクスの第一の矢とも呼ばれる大胆な金融政策である。その黒田総裁任期は2018年4月まで 2015年1月の記者会見で黒田総裁は目標達成時期の遅れを認めた(2014年のCPIは前年比2.6% しかし消費税引き上げを引くと1.1% 需要が高まっていないと判断する企業はシェアを失うことを恐れて値上げしない 価格を抑えてシェアを取る戦略)。また1月の金融政策決定会合で15年度の物価上昇見通しを従来の1.7%から1.0%へ引き下げ。

ところで2014年4月の消費税引き上げ(5%から8%)のあとの大きな誤算は原油安(半値以下に暴落)から消費者物価が低迷したことであった(消費増税が賃金率の上昇を上回ったことが決定的とされる 消費増税の影響で14年第二四半期は個人消費減少 住宅投資・家電など耐久消費財消費は反動減 他方 円安で増えた非居住者の消費が国内消費を下支えしている)。2年で2%の消費者物価上昇は、この結果、実現困難になった(第一の矢は的を外す)。そうした中、日銀は追加緩和に踏み切ったが(2014年10月末 QQE強化あるいはQQE2)、これは2%目標にこだわる姿勢を示したと理解する意見がある(日銀には政府に消費税引き上げを促した側面があるとも)。そして日銀は行動したのだから、これからは成長戦略(第三の矢 構造改革とも)の着実な実施こそ重要という意見は多い。なお第二の矢とは機動的財政政策を指す。

しかし政府は2015年10月の予定していた消費税引き上げを1年半延期(2017年4月)。この決定は増税強行でデフレに逆戻りするリスクを重くみたといえる。しかし延期に対しては批判もある。他方で原油安は消費者物価の引き上げにはマイナスだが、実質賃金引上げで個人消費を押し上げる効果があったとみられる。原油安に助けられて、個人消費の回復が進んだという理解もあり、政府内からも物価上昇2%引き上げという目標と、脱デフレとは別物という意見もでている。こうした中でとられたのが、追加緩和とGPIF運用方針変更を組み合わせたダブルバズーカと呼ばれる戦略。

批判は異次元緩和と財政健全化とがセットのはずなのに、消費税引き上げが延期で国債の大量購入が続くのは「財政ファイナンス(中央銀行が政府の赤字ヲ補てん)」となり好ましくないというもの(2017年末には保有国債の残高は現在の2.3倍の440兆円:GDP並みに膨れ上がると推定される)。他方、日銀側のロジックは2%という目標の放棄は日銀への信認の放棄となるというもの。なおすでにみたように2015年1月には日銀は2%という目標を下している。

追加緩和は年金積立金管理運用独立行政法人GPIF(運用資産130兆円)の運用方針(債券を減らし株を増やす)変更とセットになっている(GPIFの新しい運用比率は追加緩和決定と同じ10月31日に正式に発表された 国内債券の比率を60%プラスマイナス8から35%プラスマイナス10に減らす 内外の株式の比率をそれぞれ12%(6)から25%(9)に引き上げる 海外債券比率は15%(8)に。)。追加緩和の期待される効果は円安と株高 しかし単純ではない。円安には輸出企業の増益というプラス面と、輸入企業の仕入コストの上昇というマイナス面とがある。他方、資源価格の下落は、資源開発関連の商社やメーカーの損失やリスク拡大につながる側面がある。円安により日本人の海外旅行が減る以上に、海外からの旅行客が増加。その旅行客の消費が国内消費を下支えした。円安が実質所得上昇の効果を相殺しているという批判があるが、原油安がマイナスを補ったかもしれない。

ダブルバズーカの狙いがどこにあるのか。直接には金利の引き下げ、そして円安の進行ではないか。また資金をリスク投資に誘導することではないだろうか。金利の低下はマイナス金利と呼ばれる現象を生み出している。

このダブルバズーカで恩恵を受けるのは、資産を多く持っているもので、社会的格差拡大を助長するという批判があるが、2014年末頃から景況感の回復が伝えられるようになった。背景には原油安の持続と賃金引上げ期待(2014年について賃金の伸びが確認されている)がある。
 ゼロ金利下の量的緩和の効果にはもともと疑問
 中央銀行の独立性に懸念
 原油の下落で消費者物価上昇率下がる 2014年10月1%割れ 
 2年程度で2%の物価目標の実現を確実にする 9人の政策委員5対4
 日銀の追加緩和(2014年10月末)の内容⇒国債金利は急低下 国債の買い手が減少 値動き激しくなる
                              2014年12月12日0.395%  2015年1月10日0.250%(過去最低)
>                                                        2013年3月末 日銀の総資産は165兆円 GDPの3割程度
                              2014年12月10日 300.6兆円(うち長期国債は200兆円) GDPの6割 欧米中は2割
  資金供給量年60ー70兆円増 10-20兆円増加 ⇒ 年80兆円
  長期国債買い入れ額50兆円 ⇒ 80兆円 国債購入が30兆円増えてGPIFの方針変更による需給悪化をさけることに
    国債総発行額の9割弱 新規純発行額の2.5倍を日銀が吸収 ⇒ 財政規律弛緩ととられる恐れ
    国債買い入れ額 毎月7.5兆円から8-12兆円の幅に変更 柔軟な買入れへ ⇒ 長期金利変動幅は抑えられ
    デイーラの値ざや稼ぎは困難になる

  買い入れ国債の償還までの残存期間7年程度⇒最大3年拡大し7~10年程度 ⇒ 長期金利引き下げ
  上場投信ETF REIT買い入れベース3倍に それぞれETF1兆円を年3兆円 REIT年300億円を年900億円へ
+消費増税延期説 冷え込んだ消費心理を温める
  なお運用資産比率の見直しは今後、国家公務員共済組合連合会(運用資産7.6兆円 14年3月末)、地方公務員共済組合連合会(同18.9兆円)、日本私立学校振興共済事業団(同3.8兆円)等に広がる見込み。背景には年金の一元化問題がある。目論見どおり株式から収益を上げるには企業のガバナンス改革(これらの組織のガバナンスでのあり方を含む)により企業の収益力を高めることがますます重要との指摘がある。

 2014年10月末の追加緩和にもかかわらず、原油価格の急落もあり物価上昇は起きなかった(ゼロ近辺)。日銀の国債買い入れ(月8-12兆円ベース)で国債金利がマイナス化(商品市場の下落で行き場を失った資金も国債に流れる 円安は海外資金にとっては円投資のチャンス) 預金金利はほぼゼロ化している(貯蓄者から借り手への所得移転が生じている 国債が貨幣化し政府債務が軽減されている つまり財政規律のゆるみをもたらしている 2025年度になると団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になり介護・社会保障費が急増、財政危機に陥るとされる)。株価は上昇した(家計消費や設備投資を喚起した側面はある)。

  Area Studies

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