Entrance for Studies in Finance

商品取引と証券取引所

国際的には商品取引規制の強化が話題になっている
投資マネーが入ることで商品先物市場の乱高下が激しくなった。2008年には原油価格が1バレル147ドルをつけるなど穀物価格や原油価格の乱高下に市民生活が脅かされるようになった。
 オバマ政権による金融規制案 ヘッジファンドが保有・出資などを禁止されるとファンド資金の流出、米銀の自己トレーデイングの減少。流動性が減り、値動きが荒くなる。市場機能(裁定取引やヘッジ取引など)の低下は、エネルギー分野への長期投資にも悪影響。
 2010年1月14日に持ち高規制案が発表された(4月から実施)。
 市場参加者者の対象を限定した(NYとロンドンに上場するWTI原油、天然ガス、ガソリン、暖房油の4品目の先物とオプション取引)建て玉(持ち高)規制が柱(市場が2万5000枚までは市場全体の10% あとは超過分に2.5%を加えるというのが米CFTC商品先物取引委員会が2010年1月14日に発表した規制案 ヘッジ取引には規制を免除する規定もある。従来は2万枚を超えるとCFTCに申請義務はあるが、持ち高規制はなかった。市場が予想した案より緩やかな案で安心感が広がった)。

商品取引と株式取引
株式取引との比較では、商品取引が株式取引とは異なる収益性を示すゆえに、代替投資alternative investmentの分野の一つとして議論されてきました。
08年前半 過熱する商品市場 2008年後半 暴落に転じた商品市場

アジアでは中国の商品先物取引所の伸びが著しい
上海先物取引所(上海期貨交易所 1999年12月設立 上海金属交易所 上海粮油交易所 上海商品交易所が統合されたもの)。会員数200社余り 全国に300余りの交易網を有する。取扱品目は金、銅、鉛、燃料油 天然ゴム(2008年末現在)。2009年の売買高は世界1.中国の需要家が上海とLME(ロンドン金属取引所)を比較することで国際市場に影響与える。LMEが安いと輸入。LMEが銅、アルミ地金などは国際指標価格提供。なお上海は2020年国際金融センターを目指している。
大連商品取引所(大連商品交易所 1993年2月設立 農業商品先物では中国最大の市場 大豆、飼料用大豆ミール、大豆油など 2008年末現在会員数189 2010年内にコークス先物を上場予定)
鄭州商品取引所(鄭州商品交易所 1990年10月に国務院により最初の先物実験市場として開設。1998年8月にやはり国務院により全国の3つの先物市場の一つとされた。世界順位第4位)高純度テレフタル酸(PTA)
中国の先物相場がアジアでの価格交渉のベースになりつつある
 中国商品市場の特徴の一つは株と連動性があります。これは実需を代表する企業、トレーダーに加え、株式市場でも活躍する個人と機関投資家が主体の市場であるため、株式市場の影響を強く受けるのだとされています。
 中国の市場の発展ぶりは日本市場の停滞と対照的です。日本には商品取引所は4つあり、その最大のものである東京工業品取引所ですら勢いはなく、海外の投資マネーを呼び込めていない。規模的には国際的にほとんど意味がない存在となっています。
 規模的には中国先物取引所に水をあけられている。中国市場は中国国内投資家向けだが、投資単位が小さく投機熱を受けてすでに巨大な市場に成長。中国の生産・消費両面での大きさから、国際市場にも影響を与える存在になっています。

日本の商品市場には勢いがなく停滞しています
株式市場に比べて格段に商品市場は規模が小さい。また個人投資家が主体の市場。その個人投資家が商品市場で消滅してきている。市場関係者は市場への規制強化が原因と主張している。現在、国内市場は4つあるが勢いの衰えは否めない。
いずれにせよ業者の間では、東京工業品取引所への統合を目指す声が強くなったいる。
証券取引所と商品市場、両方の取引所の一本化。総合取引所の議論も繰り返しでている。

 平成22年1月の取引高

国内売買高の減少
 国内商品取引所(東京工業品 東京穀物商品 中部大阪商品 関西商品の4つ)の売買高は2003年をピークに減少。2009年にはピークの4分の1。景気低迷で実需減少。投資家のリスク許容度も低下。前年比で東工取(国内商品取引の8割)で3割、東京穀物商品で4割 中部大阪商品で4-5割、関西商品で6割減少。4取引所では前年比33%減。
2009年夏以降少し戻る。東工取の金など。東京穀物商品の一般大豆など活発なものもある。

2005年 商品先物会社 電話や飛び込みの個人営業主体→その存在に社会的に批判高まる
 商品取引会社への営業規制強化 個人投資家屁の勧誘断られたら再び勧誘できないなど  機関投資家へのシフトを国が求める 個人投資家が売買の主体8割だった東京穀物商品取 引所(小豆取引で有名だった)は最悪の状況にある これに対して東京工業品取引所は
 個人シャア3割とされ状況が異なっている
 2009年 リーマンショック
 国は石油会社や機関投資家などが中心の市場への体質変換を求める
 2011年1月からは不招請勧誘の原則禁止も始まる
 商品取引所の再建のめどは立たず一部の会員からは解散による資産配分を求める声もでている。
 関西商品取引所 2009年12月10日臨時総会開催 連続5期赤字 東京穀物商品取引所との統合に前向き(一部会員が反対)→この提携の動きに証券界はほとんど関心を示していない

中部大阪商品取引所は解散へ 2010年5月18日
2010年5月18日 中部大阪商品取引所(名古屋市)が2011年1月末をめどに解散を決めた。同取引所は2007年1月に中部商品取引所と大阪商品取引所が合併して誕生。2009年秋に国内2番目の金先物市場を創設したが、売買低迷から抜け出せなかった。赤字4期。
2010年6月15日 東京工業品取引所が中部大阪商品取引所の石油市場の統合を決めた。東京工業品取引所(ガソリン、灯油、原油、軽油)の取引単位は50キロリットルに対し、中部大阪取引所(ガソリン、灯油)の取引単位は10キロリットル。のため、中小の石油販売業者の利用があったとされる。これにより国内の石油先物市場が東京工業品取引所に集約されることが決まった。
2010年6月23日 東京工業品取引所は中部大阪商品取引所から引き継ぐ石油取引の名称を「中京石油市場」として10月12日に開場するとした。

商品先物振興協会が東京工業品取引所への一本化求める(2010年6月23日)
 2010年6月23日に開いた会員懇談会で、東京穀物商品取引所に解散を求めること、農産物は東京工業品に引き継ぎを要請。中部大阪商品取引所や関西商品取引所は解散を求めてゆくとした。(自主独立路線ヲ続ける取引所に会員の側が引導を渡す)

東京穀物商品取引所が東京工業品取引所に経営統合を申し入れ(2010年10月18日判明)
 東京穀物商品取引所(2009年度売買高3兆3002億円 従業員数30人)がようやく自主独立路線を捨てて経営統合の判断をした模様。改正商品取引所法により取引を断った顧客への再勧誘が禁止された影響が大きいとのこと。東工取は市場移管以外は受け入れられない旨回答。
 東京穀物商品取引所 コメの新規上場に積極的 2010年前半にも判断 2005年に上場申請するも不認可 2009年度の売買高はピークの2003年度の5分の1以下。2010年度約7億円の最終赤字 板寄せ方式 7品目上場 2011年1月にシステム統合。
農産物を統合した東京工業品取引所(2009年度売買高61兆4396億円 従業員数74人)は日本の商品先物市場の生き残りをかけた勝負に出ることになる。

東京工業品取引所
東工取の24時間化などが課題。現在も午前9時から午後11時までと取引時間長い。2010年9月に夜間取引時間延長(午前4時まで取引可能に)。東京工業品取引所と東京穀物商品取引所は2011年1月のシステム統合目指している
液化天然ガスLNGの上場を検討中(2010年3月)
●東京工業品取引所 2009年春に処理速度世界最高水準のシステム導入(105億円投入)
いつでも自由できるザラバ方式 → 内外の機関投資家の利用を期待 しかし年間売上が26億円の市場にとり過大な投資負担で経営は悪化。
機関投資家によるアルゴリズム取引で予想外の値動き。→ 実需家の投資手控えにつながる
●排出権取引(排出量取引) 2009年10月 東京証券取引所と東京工業品取引所が共同出資会社設立で合意
●2010年3月23日 東京工業品取引所 日経・東工取商品指数先物を上場開始 証拠金の約20倍規模の取引可能 決済期限が事実上ないので長期的視点の投資可能(決済に限月ない FXと似ている)。日経・東工取商品指数先物(原油33.465 金24.72% ガソリン11.92% 白金9.32% 灯油8.74% ゴム3.94% 銀1.06% パラジウム0.84% 以上8商品の指数に連動 2005年5月末を100として算出 エネルギー関連6割 貴金属3割)ロイタージェフリーズ指数に比べ貴金属の比率高い
指数投資 分散投資効果あり
●軽油先物 2010年5月6日 上場再開したものの取引不振 石油会社など元売りでは特約店・スタンド向けの卸価格の市場連動性の値決めに使いたい(軽油:取引急減のため2006年2月に取引休止。2008年10月に出光、新日本石油が導入。現在は民間調査会社査定のスポット価格:業者間転売価格だが透明性に批判あり 2009年6月に中部大阪商品取引所が軽油取引休止)。ところが実需が緩んでいて、軽油先物の動きが実需とかけ離れていてそのまま使えない(軽油先物は原油先物に連動して上がりすぎ、他方スポットは実需を反映して低いまま。)。卸価格の市場連動性そのものが、曲がり角。需要に比べて精製能力が多きすぎる現状の修正が先決と指摘される。

商品ファンドも急減中(ピークの2000年3月末には運用本数100本超え、運用残高も2800億円 2010年3月末に150億円程度)。大手銀行は販売から撤退(販売窓口は商取会社と一部の証券会社)。個人投資家の関心は投資信託に移る(ETFなど商品に投資する投資信託は増加)。新たな設定もない。
商品ファンド運用状況

商品ETF ほかのETFと同様に証券取引所で取引されるETF リアルタイム売買可能 金や原油など個別商品別のETFも登場している。商品取引では発行体の信用リスクがないとされる。市場が小さいため巨額取引に対応した流動性がないとも。ここで国内の商品取引所(東京工業品取引所)の指数と連携した商品も登場を始めている。


ドルの代替として特殊な商品。信用リスクのない実物資産。代替通貨の側面が依然無視できない。指標はNY先物(短期動向示す 相場 買いポジション)。上場投信(ETF)の代表はSPDRゴールドシェア(その残高は長期の投資資金の動向として参照されている 買い建て玉ー売り建て玉=買い越し残高 ヘッジファンド 年金基金など)。

国内では2007年に初めて登場 投資対象に商品を組み込むための手段となる
金ETF 保管コストかからない 盗難のリスクない 少額からできる
1)金価格連動型上場投資信託(大証)約3万円の少額から投資可能 金価格に連動する債券が投資対象 野村アセットマネジメント 2007年8月10日上場
2)SPDRゴールドシェア(東証) ロンドンの金現物価格に連動 日本で初めて現物商品の裏付け 裏付けとなる地金はロンドンにある。ただし金と交換するには10万口約9億8000万円必要 World Gold Trust Services LLC 2008年6月30日上場
なお最低投資金額約50万円50口でスタートしたが2008年9月からは1口単位に引き下げられた
3)ETFS金上場投資信託(東証) ETF Securities Ltd. 2009年8月24日上場
4)国内金先物価格連動型上場投信(大証) みずほ投信投資顧問 2010年2月15日

 1971年   金ドルの交換停止 ブレトンウッズ体制の終焉
 1979年12月 旧ソ連のアフガン侵攻
 1980年1月 当時の市場最高値850ドル
 1985年9月 プラザ合意
 1989年11月 ベルリンの壁崩壊 冷戦の終結 地政学リスクの低下
 2001年9月 米同時多発テロ
 2002年   シドニー証券取引所に金ETF登場
 2003年3月 イラク戦争開始
 2004年   NYSEに金ETF
 2005年1月  400ドル台前半 
 2007年夏以降 サブプライムローン問題表面化
2008年9月 リーマンショック 2008年末以降米国公的資金投入へ
       ドル相場の不透明感 NYダウ急落 → 金へ
 2009年10月 ギリシャの財政問題 ユーロからもマネー逃げ出す → 金へ
 2009年12月初旬 一時1220ドル台の史上最高値(12月3日1227㌦)09年末1096.2ドル
       景気刺激策による大量のドル供給 通貨価値希薄化懸念 
       発行国の信用リスクのない金 へ
       米国が平時に戻れば(金利上がれば)金相場は下落か   
 2010年に入って1100ドル台を維持(1月11日1150ドル台回復) 世界的な財政不安背景
 2010年4月 一時1170ドル(4月12日NY先物)
       1100ドル以下になるとアジアの実需、宝飾品需要45%が下支え 突出して多いのがインド、中国
 2010年5月 一時1235.2ドル(5月11日)、一時1249.7ドル(5月14日) 金ETFの8割占めるSPDR Gold Share 1220.15t(5月20日) 1267.63t(5月26日)
 2010年6月 一時1260ドル超え最高値更新 1266.5ドル(6月21日) SPDR Gold share の投資残高1300t超え(ロンドンの金庫に確保されている)1320.44t(6月29日) 3000兆円以上の資産をもつ世界の富裕層 そして年金基金 ヘッジファンド経由で金ETFに向かうものもある

原油
WTI原油価格連動型上場投信(大証)2009年8月3日上場 商品先物で運用する国内初のETF 運用はシンプレクス・アセット・マネジメント
 1口5000円台 1口単位から取引可能
 商品価格連動型投信に比べ維持コスト(信託報酬)が安い 0.89%
先物市場に比べレバレッジ取引でない分 損失小さい
 WTI原油先物を円換算したものに連動
  原油先物ETF 2010年5月17日東証上場

プラチナ ドルの代替資産として金と連動した値動き 自動車の排ガス触媒向け実需(プラチナ需要の4割)
2010年2月15日 大阪証券取引所 東工取の金、白金指数に連動する上場投信(ETF)を上場開始 NEXT FUNDS 日経・東工取白金指数連動型上場投信(大証)(野村アセットマネジメントが設定)
国内金先物価格連動型上場投信(大証) みずほ投信投資顧問 2010年2月15日

初めて裏付け資産を国内に保管したETFが上場(東証) 2010年7月2日
 金、銀、プラチナ、パラジウム 
 三菱商事が現物を調達 
 三菱UFJ信託が上場
 2006年の信託法改正で可能に 発行主体 投信会社でなく信託銀行
               組成は  商社
  商社(委託者)→信託銀行(受託者)→証券取引所   
 円建て グラム単位取引
Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.

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