Entrance for Studies in Finance

Case Study on Elpida

2009年に公的支援を受けた半導体事業でDRAMのエルピーダメモリ(2002年NEC 日立 三菱の3社のDRAM事業が母体 2011年世界シェアで第3位)がどうなるかは注目された。

エルピーダメモリは2009年に日本政策投資銀行から改正産活法という枠組みで出資(第一号の適用認定2009年6月)、つまり公的支援を受けた(8月末で日本政策投資銀行から300億円出資。なお2012年2月の破たん時の残額は優先株284億円 危機対応融資100億円)。日本政策投資銀行は日本政策金融公庫との間で、損失が発生したとき損失の一部を国費で補填する契約を結んだ。
結局2012年月に経営破綻(負債額4000億超 国内普通社債と新株予約権付き社債で残高1385億円が債務不履行 債務不履行の規模は2001年ノマイカル3500億円に次ぎ過去2番目 いずれも無担保 弁済率の見込みは20%以下 巨額の設備投資を必要とするエルピーダは頻繁なエクイティファイナンスをしており2009年には公募と第三者割当増資 協調融資 2010年にCB 破たん直前の2011年8月に公募増資とCB発行を実施。破綻直前も超微細DRAM量産に向けて投資を実施している…サムソンの間で微細化の競争がみられる 回路幅の微細化は製造コストと省電力化に有効)。
2012年2月27日に会社更生法による更生手続きに入り2013年7月31日米半導体大手マイクロンMicronの傘下(全額出資子会社)になった(買収決定は2012年7月。買収額は2000億円、全株式を600億円で取得。2019年までにエルピーダに生産委託するDRAMの対価として1400億円を支払うとのこと。)。この買収によりマイクロン(DRAMで第4位)はシェアを倍増させ(以下は2013年7-9月の数値)、サムソン電子36.9%、SKハイニックス27.8%に次ぎ世界第3位となった(27.5%)。同社広島工場(スマホ向け量産体制)はマイクロンの主要拠点工場として存続することになった。
マイクロンは2014年に入り同工場に1000億円規模の大型投資を実施している。
マイクロンは、台湾にも投資するとのこと。投資により微細化、消費電力などを改善する。
背景にはDRAM需要の堅調がある。スマホやサーバー向け需要が堅調であることが、PC向け需要の減少伸び悩みを補った形(すなわちスマホやタブレット向け生産シフトが、PC向けの品薄を招いた)。DRAMは2013年は上昇。2014年8-9月には一時高値となった。なお記憶容量が高く省電力の次世代半導体(MRAM)の開発が課題。

エルピーダの事業は日立とNECの事業を受け継いだもの。2002年に社長に就任した坂本氏のリーダーシップによりDRAMでのシェアトップを目指した(DRAM
は巨額の設備投資が必要な世界なので、小さな規模で分散して競争することを改め、事業を集約 大規模化をすることは戦略としては正しかった)。2011-2012年で、エルピーダメモリはDRAM(世界で397億ドル)の世界シェアで3位。2010年出荷シャア16.2%。サムソン電子37.4%、ハイニックス半導体21.4%と最先端化(微細化)の巨額投資の世界で熾烈な争いを演じそして2012年2月までほぼ10年生き残ったのである。この企業の苦闘の歴史を振り返ると公的支援を含め、これを評価するには冷静な分析が必要に思える。

なお民間企業に対する公的支援としては、海外では2009年6月のGM、日本ではエルピーダは実は最初のケースであり、その後、2010年12月の再生機構による日本航空に対する出資2012年4月の産業革新機構によるジャパンデイスプレイに対する2000億円7割出資などがある。日本航空やGMでは公的整理により身軽になった上に資本注入であり、競争政策として疑問は残る。

2010-2011年 DRAM需要低迷 円高に苦しんだエルピーダメモリ
エルピーダが注目されるのはそのDRAMの値崩れが2010年後半以降厳しいからだ。DRAM(半導体メモリーの代表格) 大口向け価格 2011年5月ピークに下落。6月下旬には採算ラインとされる1ドル割れ(1ギガビット)。8月後半から9月-10月 0.61ドルの底値。2011年末まで下落が続き2012年に入り上昇。過去の価格ピークは2010年前半から秋。2ドル以上だったのだが(2.6ドル 2010年5月など)わずか1年ほどで4分の1以下に下がったことになる。大震災後の在庫積み増しの反動(PCメーカーは在庫をへらすため発注減らす)。欧米の景気の減速・先行き不安。パソコン 伸び悩み とくに個人向けが不振 ← タブレット スマートフォンに押される
このようなDRAM価格の急落がエルピーダを直撃して2012年2月の会社更生法申請につながったことを考えると、経営者の責任だけを言うのは厳しすぎる意見だろう。そして2012年皮肉なことにそのあとにスマホノブームが来て 薄型メモリーの需要が急増し エリピーダの
マイクロン傘下での再生が確定する。スマートフォン市場の拡大とそのインパクト
そのほか円高の逆風。韓国企業に比べて法人税 人件費 水 電気などインフラコストで差。エルピーダメモリー 2011年4-9月 570億円の赤字(前年同期の399億円の赤字から赤字拡大)。
2009年4月 改正産業再生法が成立。2009年6月には最初の適用認定を受けて政策投資銀行からの
300億円の出資が決まり日本政府はエルピーダ支援に踏み込む。政策投資銀行は政府系銀行とも呼ばれるが、全額政府出資であり、その支援を受けることは政府から支援を受けているに等しい。また2008年10月1日の同行設立時には、同行の民営化が議論されていたが、その後の経済的危機の中で、政府系銀行の意義が再認識された。2008年8月 優先株で第3者割り当て増資という方法で政策投資銀行による出資は実現し 
エルピーダの信用力は事実上、政府により補完された。

背景にあるスマホ、タブレットの伸びとPC需要の低迷(2011年)
PCは2011年7-9月 出荷台数で前年同期比3.6%増9187万9000台
PCは先進国の消費者に買い控えが響く。
アジアは好調。欧州はマイナス。シェアはHPが18.1% レノボ(NECと事業統合)が13.7% デルは12% 
タブレット iPadがけん引 出荷台数は前年同期の4倍 PCの2割程度まで膨らむ(2011年4-6月)
2011年の見通しは前年比3.8%増の3億6400万台(ガートナーの見通し2011年9月8日)
なお販売台数比率は日本では7月に1割を超えたとも(IPadの販売シェアは3分の2程度 7月) 
小型 軽量性 起動の早さに評価 
PCはタブレットやスマートフォンに需要の一部奪われているのでは これらはDRAMを使わないとも
記憶装置としてNAND型フラッシュメモリー 起動がパソコンより早い

2011年秋、厚さ2cm前後の薄型のノートパソコンが市場に投入される 超薄型ウルトラブック
 → DVDドライブ搭載できない
 HDDからSSD(NAND型フラッシュ内臓) SSDで素早い起動可能に
 ← タイで米ウエストンデジタルの主力工場が水没
 OSに必要な搭載量は頭打ち
 4ギガより増やして体感速度は変化が生じにくい
 などDRAMには構造的な需要不振要因も見える

 なお自動車向け半導体需要が急速に伸びている。HV車の普及や車に搭載される情報機器の高度化が背景。
 思い起こすのはルネサステクノロジー 茨城県の同社工場が東日本大震災で被災して 日本の完成車生産がとまったこと
 同社は自動車用マイコンの最大手シェア42% 自動車業界が全力支援した 9月末には
 自動車向けマイコンの製造能力戻る しかしルネサスの決算が好調というわけでなく
 LSIでの赤字体質が問題と指摘されている 不採算事業の整理が急務

新端末向けフラッシュメモリー出荷の伸びを享受する東芝(2011年)
DRAMの不振は構造的で根が深い。ではNANDフラッシュメモリーはどうか。こちらでサムソンと競うのが東芝である。
毎年2-3割は下がる半導体市場で生き残る条件は、技術競争(投資競争)。微細化しそれをできるだけ早く
微細化したものの生産比率を高めることがDRAMでの生き残りの条件になっている。
実は同じことはNAND型フラッシュメモリー(スマホ、電子書籍端末、携帯電話 パソコン 
デジタルカメラなどデジタル機器に幅広く使用されている)についてもいえる。
2010年の出荷シェアはサムソン電子38.6%に対し33.9%である(世界で188億ドル)。
東芝は微細化技術の開発を競っているが ここではスマホ タブレット端末向け
フラッシュの出荷が収益を押し上げる循環が生じている。実はアップル社に東芝はフラッシュを供給。
東芝はスマホ タブレットの伸びのメリットを享受しているとされた(2011年)。

カメラ用センサーではソニーが好調(2011年)
ソニーのカメラ用センサーはスマートフォン向けに好調。
画像センサーでソニーのシェアは世界の6割。この高いシェアが
値崩れを防ぐカギかもしれない。
CMOSイメージセンサー(光を電気信号に変換する半導体部品)で
最先端技術を保有。カメラの画質精度の向上に欠かせない。
熊本の工場の生産能力を増強。一度東芝に売った長崎県諫早の
工場設備を買い戻すなど総額で1000億円近い投資をして
2012年3月末までに生産能力を倍増させる方針。

original in Nov.2, 2011
corrected and reposted in Nov.2, 2014
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