Entrance for Studies in Finance

サントリBFの上場(2013年7月3日)

サントリー食品インターナショナル(サントリBF)
保有ブランドにミネラルウオーター1位の「天然水」。コーヒー飲料2位の「ボス」(1位はコカコーラGの「ジョージア」3位がアサヒ飲料の「ワンダ」)。茶飲料2位の「伊右衛門」(1位は伊藤園の「おーいお茶」3位にキリンの「午後の紅茶」 コカコーラが出しているのは「綾鷹」)(順位は2012年のもの)
このほか機能性飲料GREEN DA・KA・RA
ブランド力に強み。

清涼飲料国内シェア(2012年)はコカコーラ(28%)についで2位の22%。これはサントリーが消費者のアルコール離れにいち早く対応したことを示すもの。1990年にセレボス(シンガポール)。2009年にフルコア(豪州 ニュージランド)。
さらにオランジーナ・シュウェップス(欧州)を約3000億円で買収
2011年にインドネシア食品大手(ガルーダフードグループ)の飲料事業を約100億円で買収。
このほかタイ、シンガポールにも事業拠点。
2013年に入ってから米ペプシコのベトナム法人に200億円過半出資(サントリーは1980年に米国ノペプシ系
ボトラーを買収。1997年には日本でのペプシブランドの製造販売権を取得するなどペプシコと関係が深い)。
海外事業は売上高で3割 地域別セグメント利益では過半を占めるまでになっている(2012年12月期)。
海外の成長市場(東南アジアの清涼飲料市場は2020年には現在の2倍の2兆1500億円に拡大)に積極的にM&Aを重ねている。売上高で3割 利益で過半を海外(欧州に強い)が稼ぐ。
2012年12月期の連結営業利益584億円。サントリーHDの売上高1兆8515億円のほぼ半分9921億円を占める。
HDの中核子会社。
同時期のキリンHDの連結営業利益は1530億円 アサヒGHは1084億円

上場の背景
成長を目指すうえで上場が必要 M&Aに際して非上場であることが
資金調達を制約(借入と社債発行に限られる)。DEレシオ1.5倍と財務体質悪化。
上場の狙いは、資金獲得により財務体質の改善そしてM&A資金の獲得。
なお上場後もサントリーHDが約6割の株を保有。

公募売出価格3100円。調達金額3900億円(うちサントリー食品取り分は2755億円。
そこから借入金返済681億円をのぞく残りを同食品の海外でのM&Aなどにあてる予定。
上場前のDEレシオは1.5倍。上場により財務を改善。次の買収へ。
上場後も親会社ノサントリーHDが約6割の株式を保有
国内でも可能性。国内では2011年にサッポロHDがポッカコーポを、2012年にはアサヒGHがカルピスを買収)

2012年7月3日東証一部に上場。初値は3120円
初日終値は3145円。時価総額9718億円。本年度最大の新規上場。
主幹事は野村 モルガンスタンレーMUFG JPモルガンの3社 公募価格PERは約27倍
飲料の時価総額で約1兆円はキリンHD(約1兆5000億円) アサヒGH(約1兆2000億円)に次ぐ規模で
アサヒに迫る規模。世界ではネスレ>コカコーラ>ペプシコ>ダノン>キリン。
調達金額3900億円は2012年9月再上場の日本航空(売出6600億円)以来 久しぶりの大型案件。

3日上場のあと4日続伸時価総額は7月9日終値で1兆428億円で1兆円超えを達成した。調達額2000億円を海外M&Aに充てる方針。

最初の上場報道は2012年12月12日
日経がサントリーHDがサントリー食品インターナショナルを上場させる方針を固めたと報道(2012年12月12日)
サントリーHDは創業家が9割以上の株を握る。持株会社を非上場にしたまま主要事業会社のみを上場することで
創業家の影響力を保持。サントリーは非上場政策で有名だった。
Gの上場企業は2000年上場のダイナミック(東証2部)のみ。背景にはM&Aを重ねる点で非上場では
借入で財務体質が悪化することが指摘できる。
明確な成長戦略を描ければ 株式を使った資金調達により 財務体質の改善と
M&A資金の獲得ができる メリットが意識されるようになった。

2013年の経緯
5月29日 東証 サントリー食品インターナショナルの上場を承認 主幹事 野村証券 モルガンスンレーMUFG証券 JPモルガン証券 
内外の投資家に販売。
6月17日 仮条件 3000-3800円 6月24日 3100円に決定(割安の評価 新興国での成長期待)。
申し込み期間 25日から28日まで。内外で半分ずつ売る。7月3日上場。

 しかし3800円ではPERは34倍。3000円の下限でも26倍。これはキリンの17倍 アサヒの18倍との比較であまりに強引な設定と話題になった。
 サントリーは、キリンやアサヒはビールなどが主体であり、「のれん償却前純利益」では20倍であること、などを
主張して反論した。
 好意的には、ビールより清涼飲料の方が成長余地が大きいのでPERはビール業界のものより高めとなってよい。また獲得資金を
用いた海外でのM&Aによる成長戦略は明確だと評価できる。
 なおサントリーHDが非上場のままで、サントリー食品の約6割の保有を続けることには、ガバナンスの点で批判がある。つまり
株式市場での資金調達というメリットはいかしつつ、市場による批判は受け入れないという姿勢には批判がある。

トクホ飲料ブームと対応
2013年7月の上場後。10月には特定健康食品の「伊右衛門 徳茶」の発売を開始。2014年には「ボス」にトクホ飲料を加えた。これは
消費者の間にある健康飲料ブームにこたえる商品。メッツコーラの発売を機にブーム化しているとされる。
サントリ-では黒烏龍茶(2006),ペプシスペシャル(2012), 伊右衛門特茶(2013)
花王ではヘルシア緑茶(2003),ヘルシアコーヒー(2013)
キリンではメッツコーラ(2012)

2013年9月 サントリー食品インターナショナルは 英製薬大手グラクソスミスクラインGSKの飲料事業を13億5000万ポンド2106億円で買収すると発表した。2009年のオランジーナ・シュウェップス買収に続く大型買収。
 機能性飲料ルコゼード(スポーツ飲料で英国首位) 果汁飲料ライビーナ いずれも80年以上の歴史のある老舗ブランド 利益率は10%程度 英国内工場と営業人員 世界20ケ国以上の国地域で展開 収益性の高い老舗ブランドを買収 新興国の需要を掘り起こす戦略。通常行われる成長市場のブランドを直接買収する戦略とは異なっているが先進国の老舗ブランドが新興市場開拓に役立つとの判断 海外展開の源資を絞り出す効果などを期待。

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