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怪獣monsterからTransformerへの展開

Hiroshi Fukumitsu


 Rolland Emmerich監督(1955-)のGodzilla(1998)は本多猪四郎(1911-1993)監督の日本映画(1954)がもとで、この日本映画は海外ではTerry O.Morse(1906-1984)による再編集版(1956)で国際的に普及したとされる。そしてこの映画を起点に円谷英二(1901-1970)に代表される特撮技術者が日本でも育つことになった。円谷は最初は東宝の撮影所内に研究所をつくり、1963年にこれを発展させて円谷プロダクションを作る。この円谷プロダクションの名前を残すことになるのが1966年からTBS製作として放送が始まったいわゆるウルトラマンシリーズである。
 本多の怪獣映画にはゴジラのほかモスラ(1961)もある。どうみても人間がぬいぐるみを着て暴れているのがみえみえの「特撮」の評価は別にして、ここで注目したいのはその想定である。これらはいずれも南洋での水爆実験が生み出したとの想定で、そこには水爆実験に批判的だった当時の日本の世情が反映している。この2作品はいずれも東宝の作品だった。これに対して大映(現角川ヘラルド)が製作した『大魔神』(1966)は、おそらくこうした東宝作品への対抗意識が示されていて、戦国時代に古代に封印されていた魔神が暴れだすというもの。その着想の新しさは深い印象を残したが大げさにいえば、原水爆という発想から離れる意図もあったかもしれない。原水爆=危険なものというというとらえ方から離れるという問題がそこにあったというのは大げさだろうか。
 ただ子供の漫画の世界で全く別のお話があった。鉄腕アトムエイトマンである。まず手塚治虫(1928-1989)の鉄腕アトム(1952 実写版1959-1960 アニメ版第一作1963-1966)は人の心は持つがロボットだった。手塚は大阪府立北野高校卒業後、大阪大学付属医専(旧制)を1951年卒業。翌年医師免許を受けて東京に出てきた。お医者さんで漫画家というめずらしい存在。その彼が東京に出てきて描いたのが鉄腕アトムである。
鉄腕アトムはアニメ版で普及したが現在までに、1963-66年、1980-81年、2003-2004年の3回のシリーズがある。とくに有名なのはその第一作。オープニングの主題歌は高井達雄作曲、谷川俊太郎作詞で<日本国民で歌えない人はいない>とさえ言われるほど普及した。清水マリのアトムの声、お茶の水博士の勝田久も記憶に残ることになった。
 他方、平井和正(1938-)のエイトマン(1963 桑田次郎画)も人間の記憶を移植されたロボットだった。2005年にNTT東日本がFLETS光のCMにエイトマンの主題歌(作詞前田武彦1929- 作曲萩原哲晶1925-1983 萩原はクレイジーキャッツの歌の多くを作曲した)を採用しSMAPが歌ったことで、中年世代の心の中でちょっと復活したのであった。
 ここで注目したいのは、アトムとエイトマンはともに原子力をエネルギー源とするロボットだったことである。そこには科学技術の発展への素朴な謳歌と信頼が読み取れる。ゴジラやモスラの世界と、アトムやエイトマンの世界。核エネルギへの畏怖と憧れ。その二つが併存していたのが1960年代の日本だったのかもしれない。
 なおエイトマンは外見が人間に近いという点ではアンドロイドといえるものである。アンドロイドという言葉には人間をロボットより上位とする考え方が含まれているとして中立的な言葉としてヒューマノイド(ロボット)という言葉を使う考え方もある。ロボットの開発を進めるホンダはヒューマノイドを使っている。
 さて円谷プロダクションのウルトラマン(1966)は、エイトマンの後に登場したが、今度は人間が超人=宇宙人に変身する話である。このような宇宙人嗜好はその後も続き、鳥山明(1955-)のドラゴンボール(1983)の孫悟空は明らかに宇宙人(サイヤ人)。ただどこか人間的で愛すべきキャラクターとして登場させているといえる。日本人にとって、どうもロボットにしても宇宙人にしても、お友達であるようだ。アメリカ映画(ex. artificial intelligence: AI(2001), i robot(2004))では気味が悪い存在weirdとして描かれることが多い(see, from android to clone)。こうした差はどこからでてくるのかは興味深い。
 米映画Transfomer(2007)はその点で極めて日本的。これにはタカラの輸出玩具からアメリカで原作コミックが制作された経緯があるが、この場合、鍵になるのは車(自動車)ではないか。車から変身するロボットというのは、アメリカ人にとってお友達として人型ロボットよりはるかに受け入れやすかったのではないか。また主人公とともに活躍する車はカマロ(GMのシボレーという車種のなかのカマロ)。燃料噴射装置fuel injection system搭載の会話が出てくることから1982年型だと推測される。なおガンダム(1979-1980)との関係だが、機動戦士ガンダムmobile suit gundamなどで共通するのは、人型の巨大な機械の中に操縦席があって人間が操縦しているという設定である。このような想定は東映のスーパー戦隊シリーズに共通するものでその最初の作品はゴレンジャー(1975)だとされ、以来延々と作成が続いている。Transformerで登場するロボットは、ガンダムと形はよく似ているが、車が変身してロボットになり、かつそのロボットが自らの意思を持つというのは異なった発想だろう。
なお2007年6月以来、日産Dualisがまさに町の中をTransformして走り回るTVCMが話題になっているが企業側がblogに投稿する仕掛けを用意している(07/8/21現在。まず見慣れたTVCM映像に入るにはDualisをクリック→エンターテインメントをクリック→CMギャラリーに入りDualisの動画をクリック。お楽しみ映像に入るにはDualisをクリック→Dualis in the cityをクリック→回転する写真をクリック→ブログ投稿用動画となっている。企業CMでお金を払い過ぎるためか、この入り方は馬鹿馬鹿しく凝り過ぎ。もっと単純でいい。なおDualisのパワードスーツのデザインは河森正治1960-によるもの)
 なお人間が操縦するという想定はおそらく子供たちの感情移入をしやすいことから日本の特撮物の一つの特徴として今日まで続いている。ガンダム以降のエポックである「新世紀エヴァンゲリオンデザイン(制作GAINAX 1995-96 メカニックデザインは山下いくと1965-)は流線形を基調としたもので、お話としても主人公の弱さや悩みが全面にでる。デザインとして直線を基調にすることで硬さや強さを表現したガンダムとはかなり異なってくるが、人間が操縦するロボットが登場して戦うという想定は同じだった。
参照
Cloverfield and Vantage Point
from android to clone

Written by Hiroshi Fukumistu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
休憩・幕間の楽しみ

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