Entrance for Studies in Finance

証券化と会計 時価会計 SPE連結

時価会計と金融商品

時価会計の英訳はmark-to-market accounting あるいはfair value accountingがよいようだ。market value accountingは直訳的過ぎるかも

米国では2007年12月15日以降 会計年度を迎える米上場企業は金融資産を3つに区分して開示することを求められた。

レベル1 上場株式や債券など市場取引が活発な資産
レベル2 金利スワップなど取引はさほど活発でないが価値を比較的簡単に計算しやすい資産
レベル3 証券化商品など 流動性が低く時価評価方法を自社の裁量で決めている資産 高リスク資産の位置付け
     08年2月末以降の四半期決算からSECを通じた残高開示

開示を強化する問題と 開示によって不安をあおってはいけないという問題が同時に現れている。
2008年2月 日本の企業会計基準委員会 金融商品の時価情報開示拡充ルールの適用を1年程度延長する方針(09/04-06→10/03期末へ)

金融庁「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針の一部改正(案)の公表について」2008/02/06
金融庁「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針の一部改正について」2008/04/02
 保有有価証券についてストレステストをかけた結果を開示報告すること
 販売する証券化商品について追跡可能性(トレーサビリティ)を確保すること

企業会計基準委員会ASBJ 金融商品に関する会計基準 企業会計基準第10号(99/01/22 最終改正08/03/10)
基準第10号及び適用指針(08/03/10)

時価情報の厳格化 証券化商品の時価:第3者との間で自発的に行う売買が成立する価格。流動性が低下している場合は流動性リスクを加味すること。日本会計士協会証券化商品の評価等に対する監査に当たって08/03/26

証券化商品のリスク情報
 バリューアットリスクに加えてストレステストをかけることが求められるように大きく変わった。
 バリューアットリスク 過去1-2年程度の平均値をもとにリスク計算
 ストレステストstress testing in a financial sector金融危機発生時の損失)
  1987年ブラックマンデー
  1997年アジア通貨危機 などを想定したストレステストをかける(シミュレーション計算をして損失を計算する)。

時価情報の開示対象の拡大
従来:市場取引のある有価証券、デリバティブ取引
新たな対象:資産担保証券などの証券化 商品、借入金、社債、リース債権、リース債務、負債性の高い優先株。
なお対象外:非上場株式 組合員資金

2008年4月8日 IMF 報告書の中で「金融システムを守るため時価評価見直しなどを検討すべき」と指摘

2008年4月10日 バーナンキFRB議長「流動性の低い市場では時価評価会計によって不安定になることがある」と表明
2008年9月29日 下院本会議での金融安定化法案の否決後の修正
 時価会計の適用見直しに関する条項定める 証券取引委員会に時価会計の適用を停止する権限があると明記。議会はSECに対して成立から90日以内に時価会計が金融機関のバランスシートに与える影響などについて報告書の提出を求める
2008年9月30日 SEC  時価会計適用を緩和 時価会計の適用ルールをQ&A方式で解説 正常でない(参加者がすくない 価格差が大きい 投げ売り)取引では市場が機能していないから、その価格を会計処理に適用する必要はない 証券化商品の評価の仕組み 根拠などの情報の開示も求める 売却困難な資産価格の算定にはファイヤーセール(投げ売り)価格を使う必要はなく、正常な市場環境下のキャッシュフローを仮定した理論値に基づく価格を使ってもよいとした。 売買目的とした有価証券についても 満期保有の証券に分類を変更することを認めた。証券化商品について時価会計の対象外とする。この改革にアメリカでも日本でも会計専門家は、金融機関が抱える損失がみえにくくなるとして反対の構えだ。しかし機械的に時価会計を適用する「実験」が破たんしたとみるべきではないだろうか。

強制減損処理

ところで取得原価で記帳している場合も、時価が著しく下落した場合は強制減損処理にかけるという考え方を日本ではとっている。期末時点あるいは期末月平均で株式など保有有価証券の価格が取得簿価の50%以上を下回れば減損処理しなければならない(強制減損処理)。なお50%未満30%以上の「著しい下落」でかつ「回復可能性なし」と判断された場合については任意の減損処理(期末時点あるいは期末月平均)が認められている。

時価会計の適用時期

1997年度 銀行証券会社など金融機関 短期売買目的有価証券
2000年度 金融機関以外 その他有価証券除く金融商品 企業年金資産
2001年度   その他有価証券
2005年度   土地など固定資産

このように任意処理では、減損処理についてはのルールを機械的に適用するか。瞬間的であれば回避するか。
2期連続の場合適用するか。さまざまなバリエーションがありうる。これは「下落の著しさ」「損失の回復可能性」について、企業側の自主的な判断が認められているからである。しかしたとえば損失については回復可能性がなければ損金扱いにできるが、税務当局との間で回復可能性について、企業と税務当局との間で意見が一致しない可能性がある。このことは企業側にはリスクとして認識される。

そこで企業側はあえて損金算入せず、このことが株式については、評価損処理を遅らせているとの指摘がある。政府・自民党では、強制減損処理でたとえば損金計算書などに損失として計上した場合は、一律に損金算入できるようにして、評価損処理企業の法人税を軽減。評価損処理を促すことを検討している(参照「株評価損処理しやすく」『日本経済新聞』2009年3月20日1面。「強制減損ルールの行方」『金融財政事情』2009年4月6日号30p.)

Originally appeared in April 8, 2009.

 債務担保証書など取引のほとんどない資産。市場価格による時価評価ができない金融商品について時価情報の開示義務付けの動き強まる。また簿外取引になっているものについても開示の圧力が高まっている。


金融商品の時価情報や、リスク管理体制などを財務諸表の注記として記載もとめる。金融機関に対しては金融商品が金利や為替の変動に対してどの程度損失が高まるかを計算した情報の開示も求める。2011年3月期から

特別目的会社
つぎのような項目が検討され調整が進んでいる。
 金融商品ごとに業界統一の開示項目をきめることが必要。担保になった融資など原資産のリスクを追跡したり分析したりできるようにする体制の整備。
特別目的会社の連結範囲をどうするか。現在は
企業会計基準委員会適用指針第15号「一定の特別目的会社の開示に関する適用指針」2007/04/15による。 
IASB国際会計基準審議会 2008年内にも連結範囲強化の新授業。

 大手銀行が簿外で設立した特別目的会社で損失が相次いで発生。お金の流れたリスクの所在をはっきりさせる必要がある。

 特別目的会社については①実質的な支配権をもっていれば持分にかかわらず連結決算に加える(国際会計基準)。①の判断がむつかしい場合は特別会社の活動からうける利益や損失が最も大きな企業。
 親企業に特別損失の損失や資金繰りを保証する義務があれば、連結対象に加える。新たな米国の連結ルール:価格の変動破たんのリスクを最も多くかぶる企業が連結する:しかしこのままでは裁量の余地が大きい。

Originally appeared in April 8, 2009.
 

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Economics」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2024年
2023年
人気記事