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新日鉄住金の発足(2012年10月1日)

欧州アルセロールミタルに次ぐ世界2位の鉄鋼メーカーが日本に誕生した。
2012年10月1日に発足した新日鉄住金がそれ。これで高炉は国内4社に集約。
 新日鉄 1970年に誕生 規模で4割の住金に対して役員比率は2対1 15人 10対5
 現在の役員数は11-10
 統合比率1対0.735(財務アドバイザー平均値は0.69)
10月1日付けで住金株を新日株32億株(新株が27億株+自社株5億株)に交換の上同日 新日鉄が住金を吸収合併する
新会社の発行済株数は約100億株
 CEOに正岡正二氏(新日鉄社長)
 COOに友野宏氏(住金社長) 
 新日鉄が住金に配慮し譲歩したとされる
統合後の規模は2012年3月期の粗鋼生産量は4516万トン(ミタルは9720万トン)
連結従業員は8万3500人(ミタルの3割)
連結売上高5兆5643億円(国内上場企業16位)
 統合後の課題は合併効果出せるかにある。
 すでに売り手としての価格競争力強化は、見えている。競合のJFEや神戸製鋼所もここでは
利害は一致している。
 他方では合併直前に巨額の減損処理している。
 これは重複する生産ラインの整理再編 集中生産による効率化に備えてのもの。
 両者は技術力は高いとされるが維持して製品開発につなげられるか期待されている。
 まずは生産の再編を進める 顧客への輸送距離や生産効率を優先
 物流効率化や原料融通など
 重複する資産の売却 など資産圧縮による財務体質改善
 物流子会社は来春合併により効率的な配送体制につながるとしている

深刻な需給ギャップ
世界需要15億トンに対し5億トンの能力過剰があるといわれている。背景:1970年代から30年で累計で1億トンしか
世界の鉄鋼消費量は増えなかった。それが2002年から2007年にかかて5億トン近く増加。世界の鉄鋼メーカーの能力
増強投資が深刻な需給ギャップをもたらした。
2012年末で中国の鉄鋼生産能力は9億トンに達する。
900社近くある中小鉄鋼会社の乱立が止まらないことにも問題(2012年9月 最大手の宝鋼集団は一部の最新鋭製鉄炉の停止を決断した
:還元製鉄炉は一般的な高炉に比べ小型で生産コストが高い特徴。CO2排出量は少ない。停止は本格的減産よりは不採算炉の休止という性格が
強い。
 背景には鋼材価格の低迷 2012年前半)。大手にはこのほか武漢鋼鉄 馬鞍山鋼鉄 鞍鋼 など。
生産実績を落とすと廃棄対象となり他社に吸収される。
地方政府にとり収入源。雇用も確保できるため地方政府は減産を促さない(促せない 中央政府による設備廃棄指示が
行き渡らない)
中国鋼鉄工業協会によれば2012年の中国粗鋼生産量見通しは6億7868万トン 前年比マイナス0.7%

両社の合併は2011年2月合併検討が発表されたが、その後 大震災 タイ洪水 円高で苦しんだ。
また鉄鉱石 原料炭価格は2011年4月に高騰した。その後次第に価格は下がっている。さらに 
欧州債務危機で 2012年5月 鉄スクラップ 鉄鉱石軟調となり原材料の価格の面では息をついた状態。
しかし反面では欧州・中国の減速で鉄鋼価格も低下している。その状況での統合実現になった。
(両者で検討開始の公表(2011年2月3日)公正取引委員会による合併承認(2011年12月14日))
新日鉄住金の発足により、国内2位はJFEスチール(2002年に川崎製鉄とNKKが経営統合)2924万トン
国内3位は神戸製鋼所と変化した。

鉄鋼業界の苦境を象徴する中山製鋼所の私的整理再建(2012年11月末)
中山鉄鋼所(東証1部)は1919年創業 官営八幡製鉄所 日本鋼管 に次ぎ高炉を建設した老舗。2002年に高炉を閉鎖。
電炉業界:電気料金の比率がコストの3割 電気料金の引き上げで苦境に 国内に約40社。
鉄スクラップを溶かして 建設向けに
建設向けには輸入鋼材が流入
海外も競争激しい 円高も一因
2012年3月期まで3期連続最終赤字
2012年4-9月 連結最終赤字は46億円(前年同期は22億円の赤字) 9月末の総資産1950億円 有利子負債は1016億円 連結ベース累積損失187億円
三菱東京UFJ銀行など取引金融機関が600億円規模の債権放棄に応じ、残りの融資を継続する方針
(なお12月17日の取引金融機関との話し合いで中山側は12月末を返済期限とする融資について2013年3月末までの
返済猶予を要請 貸出債権の一律7割、放棄規模600億円を求めた。これに対して一部銀行は、株主責任が不十分として
難色を示したとのこと。筆頭株主である新日鉄住金は、一層の支援を求められた形となった。)
企業再生支援機構にも下位取引行の債権買取要請
10%弱で筆頭会社の新日鉄住金には増資引き受け、材料調達などで連携強化の要請
官民で再建を支持する狙い:国内の雇用維持 技術の海外流出防ぐ
中山側は生産設備・人員の合理化(7月に採算悪化した厚板の生産設備休止 10月までに本体の従業員の3割にあたる約240人を削減) 非主力事業(子会社の化学メーカー)の売却 遊休不動産(社宅 運営している病院および介護施設など)の売却進める

なお2002年に両社のステンレス事業統合がすでに先行して統合している。
 新日鉄住金ステンレス である

なおアルミ業界でも1位の古河アルミと2位の住友軽金属工業が2013年10月に経営統合予定である。
現在の国内アルミの3位は神戸製鋼所である。

originally appeared in Oct.29, 2012
corrected and reposted in Jan.4, 2013

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