Entrance for Studies in Finance

dealer platform

債券取引は、取引所取引ではなく非取引所取引(店頭市場)が主流である。取引のシステムのことをplatformというが、
取引所よりは取引に使うplatformの選択が重要になっている。証券取引では債券取引でその傾向が顕著である。
電子取引プラットフォーム
platformの分類には複数のものがある。ここではmulti dealer platform(MDP)とsingle dealer platform(SDP)という分け方を検討する。これは画面から受け取れる情報が複数のdealerのものか単数のdealerのものかという分け方である。
もう一つは、最終投資家用なのか、業者間用なのかという分け方もある。表面上は業者と最終投資家双方のアクセスを認めるplatformが大半なので、各platformの位置付け評価については市場参加者のコメントが参考になる。

multi dealer platform(MDP)
1990年代。voice tradingからscreen based tradingへの移行期に、登場したのがmulti dealer platformである。その特徴は自らは取引をしない情報仲介業者が業者間の情報の交換場所の提供を始めたこと(したがって価格を提示する業者dealerは複数いる)。
この定義にあてはまる代表格は
TradeWeb TradeWeb marketwiki 1996年開始
TradeWebの日本国債業務への進出(2008年12月2日)
Bloomberg Tradebook 1996年開始

eSpeed
Market Axess 証券会社の連合とされる

為替取引ではmulti dealer plaformに疑いの声はない。
FXall
EBS(ICAP)
 ICAP: formerly Garban Intercapital llc

LSEによるMTS取得
ところでではMTSをどう評価するかがある。MTSもMDSに入れてよいが、1990年代に登場したTradeWebやBloombergとは区別されるべきだろう。
さらにMTSのLSEによる取得は、どう理解すればいいのか。
MTS(London Stock Exchange Group) MTSは1988年にイタリアの国債取引システムとしてスタート。その後、エージェンシー債、社債を含めヨーロッパの債券市場の主要なプラットフォームに成長した。2006年1月にMBE HD(イタリア証券取引所-Euronext)により買収される。そして2007年夏、イタリア証券取引所をロンドン証券取引所が買収したことの成果の一つはこのMTSを手中に収めたことにあるとされる。
Eurex Bond(Eurex Frabkfurt AG) 2000年10月設立

single dealer platform(SDP)
このようなMDSが優越する状況で、ドイツ銀行やバークレイズ銀行など投資銀行investment bankersが機関投資家insititutional investorsに対して直接directあるいは個別にstand aloneに提供を始めた取引システムをsingle dealer platform(SDP)と呼んでいる(価格を提示するdealerが複数なのか単数なのかがもともとの意味 つまりドイツ銀行やバークレイズ銀行からいえば、自社のシステムを提供して自ら値付けを行うものである)。MDPは業社間市場、SDPは対顧客との見方もある。この単一業者single dealerによる値付けシステムが顧客である機関投資家の高い信頼性を得て、急速に成長した。
Barx(Barclays Capital)
Autobahn(Deutsche Bank)
Prime Trade(CSFB)

全体的にはMDPよりSDPがなぜ優勢なのか
なぜ欧州ではSDPが成長したのか。私は、取引量が大きく、また圧倒的な顧客ベースを抱える大手投資銀行が責任をもって値付けを行ったことに意味があったとかんがえている。市場というものがもともと偏りがあることが、この優位性の根拠ではないか。
(なお以下は為替取引システムについては、マルチプラットフォームの伸張が著しいとしている ユーロマネー2011年5月号の翻訳)マルチのシェア2007年に7.8%から2011年には20%に高まったという。逆に、ドイツ銀行(Autobahn)、バークレイズ(Barx)、UBSなどはシェアを落としたという。その要因としてはマルチは流動性・価格の比較可能性で優位とされている。他方シングルはなお全体的なシェアは高いが、シングルに方が評価できる点としてアルゴリズム取引に必要な一貫性ですぐれているとの指摘が見られる。

日本の場合
日本の場合は、日本相互証券(Japan Bond Trading)というbroker's borkerが実質的に債券取引所の機能を果たしてきたという特殊性がある。ただしBBというように完全に金融業者間市場inter dealer marketであり、債券といっても国債取引市場である。そのJBTが提供している電子取引システムがBB Super Trade(2000年9月稼働)である。
BB super trade

東京証券取引所では、国債をはじめとする債券市場が形式的に開設されたが、現在その機能はほとんど停止している。現在も活発に機能してものに長期国債先物市場がある。この間、商品の多様化についていろいろな試みが行われた末に(中期・超長期先物、長期国債先物オプションなど)、長期国債先物がなお存在感を残している。このほか東証では、株式に絡んだ債券である、転換社債(新株予約権付き社債転換社債型)の取引に存在感がある。

エンサイドットコム証券はMDPとして登場。日興、大和、野村が手を組んで2001年に設立。市場は2002年4月に稼働を始めている。取引を国債に絞り意識的にmulti dealer marketを構築した。エンサイドットコム証券 エンサイドットコム証券の沿革

しかしMDPとして機関投資家向けの電子取引市場ではクイックと組んだJボンドが一定の役割を果たした。Jボンドは2001年に情報ベンダーとして引き合い情報の提供を開始。エンサイよりわずかに遅れてシステムを稼働させた。Jボンドのプレスリリース(2002)。 しかし現在はこのJボンドの後進である東短Jボンドのシステムもエンサイドットコムが提供する形(2010)になっている

債券の種類は膨大で債券価格はすべてに日々取引が成立しているわけではないので、投資家からすれば不透明さが残る。最大手の野村は日本経済新聞、金融工学研究所、野村総合研究所と組んでJSPrice(債券標準価格)の算定と公開を2002年3月26日から日々行っている。JS Priceは、日本証券業協会が行なっている公社債店頭売買参考統計値(現在は指定21社の報告による毎日、前日の集計が出されている)とともに、債券時価評価の基準的資料である。JS Priceは出だしで1万4000銘柄とされ逐次対象を拡大する方針。参考値の方の対象はこのおよそ半分以下である。ただしこちらは実際の取引価格の集計としての意味合いがある(post trading system)。
JS Priceについて

なお野村は2007年2月にInstinetを買収した。JapanCrossingやCBX Asiaといった市場platformを提供している。

singleの意味の変質
ところでsingleの意味(single dealer)とも係るが、さまざまな商品ごとにバラバラに分散した市場を統合したこと(さまざまなmulti asset市場の統合という意味にmultiあるいはsingleの意味付けがdealerからassetに変化している)、取引のSTP化を実現したことなどが最近は強調されるようになっている。このように論点が変わり、dealerが1社か複数かという当初の市場の本質にかかわる問題が少し見えにくくなっている。
what single dealer platform isn't
single dealer platform white paper

欧州で本格化する電子債券取引(2000夏)
欧米で定着する債券電子取引(200704)
欧州における債券電子取引の現状(200705)
single dealer platform wikipedia

Fidessa
Sybase RAP The Trading Edition intraday risk management

参考
上場株式のPTSについては東日本大震災後の取引の急減のなかで、個人向けの夜間市場(PTS)はあいついで休業に追い込まれるが、システム面で機関投資家の高速取引のニーズにも対応した以下の2市場が生き残ってゆく。背景にはChiXが入ったとき(2010年7月)、クリアリング機構にこれらの市場を入れたことが大きい。そのことは結果として、これらの市場の信頼を高めることになったと考えられる。

SBIジャパンネクスト証券の沿革 2007年 同取引統計(月間) 顧客注文対当方式(指値のみ 成行認めない 信用取引できない)
ChiX 2010年7月取引開始 チャイエックスPTS市場 顧客注文対当方式 なお2014年9月よりChi-Match市場開設(VWAPでのクロス取引市場)

originally appeared in June 28, 2010
corrected and reposted in October 26, 2011

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