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テスラとの提携(2010年5月)とリコール再燃(2010年7月)

トヨタとテスラの提携発表(2010年5月)
 トヨタとテスラとの提携が発表された(2010年5月21日)。
提携発表文(日本語)。トヨタがテスラに出資。両社は合弁会社を設立。NUMMI工場の一部を購入して「モデルS」(量産型ファミリーEV)を生産する。
 先行しているハイブリッド車での果実獲得にこだわるトヨタは、日産をはじめとする他社がEV車(電気自動車)に全力で取り組むのを悠長にも座視してきたとされる。そのためEV車で遅れをとりつつあるとされている。
 ハイブリッド車で先行したトヨタはEVでは、日産―ルノー連合に遅れていると指摘される。日産は、米国および日本でのEV車販売を2010年12月に日産リーフ投入により開始。2011年から、今度はルノーが3車種を市場に投入予定である。さらに日産ールノーは2010年4月にドイツのダイムラーと資本業務提携で合意。トヨタへの包囲網も敷いた。
 2010年5月26日に米テネシー州スマーナ工場=EV車用電池工場の起工式で会見を開いた、日産自動車のカルロス・ゴーン社長は日産はEV車の分野でリーダー宣言を行っている。
 EV車での立ち遅れに加えて、トヨタは2009年来のリコール問題でブランド価値を大きく毀損させとくに海外で販売不振に一時陥った。またトヨタの責任ではなかったものの、カリフォルニアではGMとの合弁解消の結果として、NUMMI工場を閉鎖し(2010年3月末)地元の反発を買うおまけがついた。
 2010年5月に発表されたテスラとの提携による旧NUMMI工場の再生は、このように悪化した感情を和らげ、EV車に取り組む姿勢をアピールすることでトヨタ再生の切っ掛けになるかもしれないと期待された。

リコール問題の再燃(2010年7月)
 ところがテスラとの提携により生じたプラスイメージを帳消しにする問題が2010年7月に入って表面化した。
 日本経済新聞は、7月1日、トヨタ自動車はがレクサスなど高級車など8車種を対象にリコールを届け出る方針を固めたと報じた(日本経済新聞2010年7月1日―2日)。見つかったのはエンジンバルブ部分のバネ部品の不具合で、該当部品の交換が必要とされた。この報道は正しく、その後7月5日に、トヨタは国土交通省に対して、8車種9万1903台(2005年7月から2008年8月の間の生産分)のリコールを届け出た。エンジンという車の中核部品での新たな不具合は、2009年トヨタ車へのリコール問題にさらに追加されたもので、トヨタ車への信頼を大きく損ねかねない。

トヨタ社長がリコール問題で初めて会見(2010年2月5日)

なぜリコール問題が続くのか:田口メソッドを学ばないトヨタ
 思い起こすとわずか1年前の2009年春には、トヨタブランドの優位は隙がなく揺るがないかに見えたことである。それだけにその後のトヨタの落ち込みの激しさは驚くばかりだ。
 すべてのきっかけはリコール問題での初期対応のまずさにあった。なかでも欠陥の指摘を受けながら、車本体に欠陥はないと発表した北米トヨタの対応はまずかった。文書は残っており、言い訳はできない。NUMMIの工場閉鎖正式発表(2010年8月)での失望が残る中で、こうした対応は最悪のものではなかったか。
 しかしさらに問題であるのはその後のリコールの連続である。トヨタはこうしたリコール騒ぎから解放される手立て(品質管理の基本的な立て直し)を真剣に考える必要があるだろう。
 ところで日本発の品質管理メソッドとして田口メソッドがある。以下の論考は自動車各社のなかでトヨタだけが田口メソッド習得に励まなかったという興味深い指摘を行っている。この論考によるとトヨタは多変量解析ですべてを割り切ろうとして、それ以外のやり方を受け入れない。またトヨタの幹部が田口メソッド独自の用語を嫌ったというのである。実はこの指摘以外にも、トヨタと田口メソッドとの微妙な距離を指摘する文献が複数ある。
 田口メソッドが絶対唯一とまでは思わないが、もしそうだとすれば、トヨタにおけるリコールの連続には深い理由があることになる。自分たちのやり方だけを主張して、他者に謙虚に学ぶ姿勢がない会社に将来はないのではないか。欠陥の指摘に対して、頭から否定した北米トヨタ対応と似たものを感じる。
 私たちはトヨタの無謬神話が終わったことを認識するべきではないだろうか。

 なぜトヨタは田口メソッドを学ばないのか
 品質工学:田口玄一氏
自動車の将来

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