Entrance for Studies in Finance

米追加金利上げ(2017年3月) 米国の金融政策

 

 

 2017年3月15日 米FRBは2016年12月に続き 3ケ月ぶりに 0.25%の追加利上げを決めた(事前の予想より早かった)。2008年9月のリーマン危機後 FRBが利上げに転じたの2015年12月。トランプ政権が大型減税と巨額インフラ投資(1兆ドル:背景には公共インフラの老朽化がある)を公言するなか(インフレ圧力の高まりのなかで)、FRBが牽制に動いた形は教科書通り。

他方5月3日のFOMC(連邦公開市場委員会)は金融政策の現状維持を決め、市場に6月の利上げのサインを与えている(ドル高 円安 市場は6月と9月の利上げを予測している)。背景には物価水準の傾向(2017年2月にエネルギーと食品除くコアで前年同月比1.8% 目標2%近い)。失業率の低下(同3月で4.5%と下がっている)がある。中西部の失業問題を考えると不思議だが、米国の平均では失業率は低下している(10年ぶりの低さで完全雇用との評価:中西部の労働者が怒るのも当然か)ようだ。

他方、米国株の過熱の指摘は、米国株から債券への流れを促す面がある(金利低下 円高 リスク回避 株安)

FRBの保有資産は4.5兆ドル(497兆円 金融危機前2008年の半ばまでは1兆ドル未満だったが)に膨れ上がり、長期金利上昇は多額の含み損になる(保有国債の平均利回りは3%弱 米国債10年物利回りは3月に一時2.6%に上昇)。保有資産縮小(金融政策正常化)の道を探っているとする。その手法としては再投資の縮小あるいは停止が議論されている(市場に売る戻すことは影響が大きい 満期まで持ち切ってゆるやかに減らすことも選択肢)。

移民政策でも、イエレンは移民を労働力増 経済成長率増の要因とみて、トランプの移民制限政策に明確に反対。ある意味牽制の役割を果たしている。イエレンは任期が2018年2月までで、トランプはおそらく再任しないとしている。

ただこれで日銀の金融政策はかなりむつかしくなった。背景にあるのは物価水準で日本では物価水準の低迷が続いている。2016年末にCPI上昇率はプラスに転じたがなお1%以下(2017年2月)。米国が2-3% 欧州も2%という中で上昇率はなお低い。

加えて米国が日本の金融政策を為替操作だと批判する可能性もある。これは貿易収支の不均衡が日本の円安誘導によってもたらされている(中国の場合はより露骨な為替操作とダンピング)。円安誘導の手段として金融緩和政策がとられているという主張。たしかに為替介入操作を行っていなくても、形式的に言えばこの批判はあたっている。安倍政権が円安誘導で景気を立て直そうとしたのは周知の事実だからだ。

これは通貨安誘導を批判するもの。金融緩和政策というが通貨安という輸出促進政策なのではないか。この批判は意外にあたってちるのではないか(2017年3月 北朝鮮情勢 4月6日 米軍によるシリアへのミサイル発射:シリア攻撃 4月12日ドル高をけん制するトランプ発言 などから円買い 円高に転じる面も これに伴い株価が下落)。

トランプ登場による円安(2016年11月 101円台⇔113円台後半 2016年6月の英国のEU離脱に次ぐ衝撃 110円台から一時99円台)

ただ米国の利上げは結果として日米金利差を広げて円安をもたらす(日米金利差の拡大はドル高・円安要因 1ドル115円台 3月17日)。逆にいえば日本は現状以上の金融緩和策をとれないといえる。為替相場については、購買力平価 経常収支 内外金利差 地政学リスク などの要因が指摘される。最近の注目は金利差。

米金利上昇 新興国からの資金引上げになる側面

トランプ政権とFRBとの今一つの焦点は、トランプが掲げる金融規制緩和政策。過剰な金融規制の緩和を求める業界の声にこたえたかたち。とくに2010年オバマ政権下制定されたドッドフランク法(金融規制改革法)の見直し(ストレステストがとくに重荷になっているとの指摘がある テストの対象を総資産500億ドル以上の銀行に限定する案がだされている 金融業界は資本水準の引き下げや規制緩和を求めている)が焦点になっている。トランプは規制が中小企業向け融資を妨げていると主張している。ドッドフランク法の目玉は、金融機関に高リスク取引を禁じるボルカールール。しかし1999年に廃止されたグラスステイ―ガル法の復活をトランプは支持しているので、銀行リスクの遮断という考え方とトランプは無縁でもない。結果として、中小金融機関向けの規制緩和は実現する可能性がある。

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