日本証券経済研究所『図説日本の証券市場2012年版』日本証券経済研究所, 2012, No.1(総論)
この研究所の図説の記載は多くのコメントすべき点がある また統計を最新のもので点検してゆくことも必要。
本源的証券と間接証券
資金を調達するために資金の借り手(出し手とするべき:福光)が発行する本源的証券
また本源的証券から派生した派生証券がある
資金取引を仲介する金融仲介機関が貸し手(出し手)に対して発行する間接証券
無形の権利の譲渡を容易にするため当該権利を表した証券:有価証券(図説)
財産権の権利譲渡とその有価証券の権利譲渡が不可分であるもの(福光):有価証券
単に一定の事実を証明するに過ぎない証拠証券と区別される(福光)
証券市場で取引される証券は「金融商品取引法上の有価証券」(図説)
これは上段でみた、本源的証券に加えて派生証券を含む。
また、さまざまな派生商品取引は、金融商品取引法の適用範囲である。
企業の資金調達方法は、内部資金と外部資金に大別される。内部資金は内部留保,減価償却を含み、外部資金は借入、株式、社債に大別される(図説)。
この記述の問題は、まず粗すぎるということ。
外部資金については、自己資本金融(株式)と負債金融(株式以外)とは分けるべきであり、負債の中に企業間信用(買掛と売掛の差額)を含め、借り入れは細分するべきだろう。
国債保有者統計(財務省)は日銀と海外保有分が急増して、年金や銀行などの保有分が激減している。2011年3月末726.2兆円が日銀8.3% 銀行等(銀行のほか市中金融機関含む)44.8% 生損保等20.3% 年金(公的年金と年金基金の合計)13.8% 海外5.0% 家計4.3% の保有だったものが(図説)
2016年末で1075.5兆円 日銀39.1% 銀行等21.3% 生損保等19.3% 年金7.5% 海外10.5% 家計1.2%となっている(福光)。海外の保有が短期政府証券のとことで目立つことも注目点で、長期債における海外保有比率は増加しているが依然として低い。
2011年3月末(図説)JCB ownership by investor type, end of 2011/03, 2014/03, 2016/12
国債計 726.2兆円 日銀 8.3% 銀行等44.8% 生損保等20.3% 年金13.8% 海外 5.0% 家計4.3%
2014年3月末
短期政府証券除く国債 840.8兆円 日銀18.7% 銀行等38.1% 生損保等22.6% 年金12.0% 海外 4.1% 家計2.5%
短期政府証券 157.4兆円 日銀28.1% 銀行等27.7% 生損保等 1.8% 年金 0.0% 海外31.5% 家計0.0%
国債計 998.2兆円 日銀20.1% 銀行等36.5% 生損保等19.3% 年金10.1% 海外10.5% 家計2.1%
2016年12月末
短期政府証券除く国債 958.1兆円 日銀38.7% 銀行等23.3% 生損保等21.4% 年金 8.4% 海外 5.5% 家計1.3%
短期政府証券 117.4兆円 日銀42.4% 銀行等 4.7% 生損保等 1.9% 年金 0.0% 海外50.9% 家計0.0%
国債計 1,075.5兆円 日銀39.1% 銀行等21.3% 生損保等19.3% 年金 7.5% 海外10.5% 家計1.2%
個人部門の金融資産残高の構成比(日本銀行) 定期性預金 債券等 が急減している。定期以外の現預金、保険・年金 投資信託が増えている 株式の比率はバブル期からみて半減している。
1991年3月末 Composition of Financial Assets of Individuals
合計額 1,017.5兆円 定期以外の現預金 7.2% 定期性預金40.2% 保険年金20.8% 投資信託3.4% 株式16.9% 債券等2.6%
2001年3月末
合計額 1,388.8兆円 定期以外の現預金11.6% 定期性預金42.5% 保険年金27.2% 投資信託2.4% 株式 7.7% 債券等2.0%
2011年3月末
合計額 1,480.6兆円 定期以外の現預金23.6% 定期性預金31.6% 保険年金28.4% 投資信託3.6% 株式 6.2% 債券等2.4%
2016年3月末
合計額 1,752.0兆円 定期以外の現預金25.6% 定期性預金26.4% 保険年金29.8% 投資信託5.2% 株式 8.8% 債券等1.5%
為替相場年末終値
2011年 77.74円 2012年 86.58円 2013年 105.39円 2014年 120.55円 2015年 120.61円 2016年 116.49円
長期プライム年末終値
2011年 1.40% 2012年 1.20% 2013年 1.20% 2014年 1.10% 2015年 1.10% 2016年 0.95%
年末日経平均株価(円)
2011年 8,455.35 2012年 10,395.18 2013年 16,291.31 2014年 17,450.77 2015年 19,033.71 2016年 19,114.37
もともと対外債券投資だったが、2013年縮小後、2014-16年高水準の対外証券投資続く(2015年は株式 2016年は債券) 2013-15年高水準の対内証券投資(2013年株式 2014年債券 2016年は縮小)
対外対内証券投資(財務省)
対外証券投資 株・株ファンド(単位:億円)ネット
2011年 9,645 2012年 -17,880 2013年 -66,263 2014年 66,322 2015年 201,614 2016年 86,345
対外証券投資 中期債(単位:億円)ネット
2011年 75,036 2012年 132,331 2013年 -18,562 2014年 45,158 2015年 164,508 2016年 266,991
対内証券投資 株・株ファンド(単位:億円)ネット
2011年 5,999 2012年 29,039 2013年 166,919 2014年 37,662 2015年 13,280 2016年 -51,379
対内証券投資 中期債(単位:億円)ネット
2010年 40,129 2012年 26,651 2013年 -6,826 2014年 122,799 2015年 98,970 2016年 83,638
証券会社数(日本証券業協会) 外資系証券会社の数が減っている。証券会社の店舗数も減っている。
本店数 カッコ書きは外資系証券と国内証券で内数
2001/12:291(50 241) 2006/12:307(33 274)
2011/12:290(22 268) 2016/12:260(11 249)
店舗数 カッコ書きは外資系証券店舗数と国内証券店舗数
2001/12:2296(50 2246) 2006/12:2196(34 2162)
2011/12:2197(23 2174) 2016/12:2142(13 2129)
国内証券会社数が微増するなかで、資本レベルで30億円以上の会社が増えている。他方で2億以上30億未満の会社数は減っている。
なお資本金で100億以上の会社数は30社程度でこの間大きな変動がない(2001/12 30社 2016/12 31社)
証券会社数 2億未満 2億以上30億未満 30億円以上 合計
2001/12:39 146 64 241 2006/12:53 153 68 274
2011/12:45 150 73 268 2016/12:44 129 76 249
比率 2億未満 2億以上30億未満 30億円以上 各%
2001/12:16.2 60.6 23.2 2006/12:19.4 55.8 24.8
2011/12:16.8 56.0 27.2 2016/12:17.7 51.8 30.5
証券会社従業員数・役員数(日本証券業協会)証券業界の現在の従業員規模はバブルピーク時の半分。証券会社内部は内勤従業員の比率が半減している。これは事務部門が機械化や外部化によって、相対的に少人数化したことが一因であろう。また1社あたり常勤役員数は、半減以下になっている。役員になれる可能性は100人に一人である。
従業員数 内勤者比率 常勤役員数 会員会社数 1社当たり常勤役員数
1981/12 85,669人 39.2% 1,946人 248社 7.8人
1986/12 114,191 37.9 2,218 249 8.9
1991/12 156,558 35.6 2,719 272 10.0
1996/12 113,028 32.9 2,327 289 8.1
2001/12 96,692 22.3 1,506 291 5.2
2006/12 92,661 17.9 1,459 307 4.8
2011/12 88,807 17.3 1,233 290 4.3
2016/12 89,942 16.2 1,144 260 4.4
新規上場会社数(日本取引所)の増加 いわゆるアベノミクスのもとでの株価の一定の回復によって 2013年から2016年にかけて新規上場会社数はある程度回復した。しかし2001~2010年の記録では、マザーズのpeakは2004年の56社、JASDAQは2001年に97社、2004年に71社を記録している。アベノミクス下の回復は2001~10年の間の新興市場のIPOブームほどではない。
年 市場一部 二部 マザーズ JASDAQ Tokyo-Pro-Market IPO計 市場一部 二部 マザーズ 経由上場計
2013年 6(8) 6(1) 29(2) 12 4 IPO計 57(11) 1 3 1 経由上場計5
2014年 10(6) 10(1) 44 11 3 IPO計 78( 7) 1 6 1 経由上場計6
2015年 8(6) 9 61 11(4) 6 IPO計 95(10) 2 2 1 経由上場計5
2016年 8(7) 5(1) 54(1) 14(1) 3 IPO計 84(10) 0 2 0 経由上場計2
注)IPOの数字におけるカッコ書きはテクニカル上場。上場企業が法人格を変更したとき、存続会社または親会社の株式について簡易な手続きで上場を認めたものをいう。他方,経由上場は、鞍替えとか昇格上場と呼ばれているもので他市場を経由して上場したものを指す
IPO上場主幹事。野村が断トツで強い。日興、みずほ、大和がこれを追撃。ネット証券ではSBI証券が健闘している。三菱UFJのこの面は弱体。
野村 日興 みずほ 大和 SBI 三菱UFI いちよし 小計
2013年 27 5 6 6 6 2 2 54
2014年 26 8 7 21 5 4 1 72
2015年 28 21 12 11 8 2 2 84
取引所取引 PTS除く所外取引 PTS取引(日本証券業協会)の上場銘柄取引における比重変化(売買代金ベース) まずPTS取引の比重の急拡大が近年生じPTS以外の所外取引のシェアを食ったこと。取引所取引の比重が近年次第に低下していること。直近のPTS取引の比重低下は、PTS以外の所外取引の急拡大が起こしたことなどがわかる。
2001 91.858% 8.125% 0.017%
2002 92.908% 7.022% 0.070%
2003 94.125% 5.838% 0.037%
2005 95.143% 4.816% 0.041%
2006 94.815% 5.090% 0.095%
2008 93.431% 6.232% 0.332%
2011 92.165% 4.565% 3.270%
2012 90.778% 4.210% 5.012%
2013 91.155% 3.602% 5.242%
2015 89.360% 6.079% 4.561%
2016 89.844% 6.004% 4.252%