Entrance for Studies in Finance

日銀金融政策の出口について

 日本銀行は金融緩和政策の呪縛からいつ逃れることができるか。2008年秋のリーマンショック以降の日銀の金融政策は、危機対応一色であった。

2008年10月 利下げ 政策金利を0.5%→0.3%へ
2008年11月 補完当座預金制度(0.1%の金利をつける)導入 
2008年12月 企業向け特別オペ
      CP買い取り決定
      利下げ 0.3%→0.1%
2009年1月 企業金融支援特別オペの開始(時限措置 社債やCPなど企業向け債権を担保に政策金利で無制限に資金を供給するもの 月2回ずつ)
2009年の日銀の金融政策
2009年1月 社債買い取り決定
2009年2月 1兆円を上限に銀行保有株を買い取る時限措置決める

 景気の回復の兆候をとらえて日銀は出口の模索をはじめる。しかし日米欧でデフレに直面しているのは日本だけであり、日銀は緩和から離れることもできない。 

2009年10月30日金融政策決定会合
      CPや社債の買い取りを年末で打ち切る決定
      企業金融支援オペは3月末まで延長。
      補完当座預金制度(0.1%の金利をつける) 2008年11月に導入。期限を2010年      1月から延長へ 

 2009年12月 日銀は追加的金融緩和政策に踏み込む。背景にはデフレ対策があった。
2009年12月 新型オペ(国債や社債を担保 期間3ケ月の資金を政策金利の0.1%の固定金利で無制限に供給 週1回 8000億円ずつ 10兆円規模 2010年2月末で10兆円規模達成)導入 デフレ克服姿勢示す 広い意味での量的緩和 → 円安・株高効果

 日銀は2010年1月―2月と追加緩和策見送り消極姿勢続ける。
しかしこれは市場の期待に反し日銀への失望広げた。
 政策の空白となり、政府との協調も行わない日銀に市場は失望した。具体的には国債買い増しに慎重姿勢、インフレ目標にも慎重といった日銀の姿勢は繰り返し批判を受けた。 (1%を中心 中長期的にみた物価安定)

 2度目の追加金融緩和策を金融政策決定会合2010年3月16日ー17日で決める。
2010年3月 新型オペの供給枠を20兆円規模、週2回 週1兆6000億円に倍増させる(須田美矢子、野田忠男の2人の審議委員が反対投票とされる) 景気判断は持ち直しているとした。3月末に2009年1月から実施されている企業金融支援特別オペ(CPなどを担保に低利で貸し出す資金供給策)が予定通り期限迎える。3月末の日銀当座預金はあおおむね15兆円程度。

 しかし3月26日に発表された2月の消費者物価指数で前年同月比1.2%下落。総合指数は12ケ月連続の下落となった。デフレの下落は企業の収益を押し下げ、景気を下押しする可能性が高い。しかしデフレの背景には経済のグローバル化があり、成長のためには、国内の過剰部門を縮小してこれからの成長産業に思い切って産業構造をシフトさせる必要がある。

 金融政策決定会合2010年4月7日では景気判断持ち直し続けているとして政策の現状を変更せず。生産 輸出 増加続き設備投資も下げ止まるとした。政策金利を現状の0.1%に据え置くとした。
 首相と日銀総裁が首相官邸で会談した。2010年4月8日。定期協議で政策協調を演出した。これは政府との政策協調姿勢を市場に示すものであった。4月末に2009年2月に決めた銀行保有株買い取りの期限迎える。

 もともと日本銀行は中長期的な物価の安定を金融政策の目標としていた。近年、デフレからの脱却が大きな課題になってきた。金融緩和のアクセルを目いっぱい踏んだ状態が続いている。しかし政策金利は下限にあり、政策の選択肢はほとんどない。このような状態からの脱却が、日本銀行の課題となっており、日銀は政府との政策協調のポーズを代償に時限措置をつぎつぎに解除し始めている。

日本銀行論・中央銀行論
中央銀行の非伝統的金融政策
2009年の日銀の金融政策
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