「前例のないことなので、やりすぎではないかというご批判もあるかもしれませんが、政治判断は結果がすべてなので、結果責任は知事(私)が負います」
この、「私が責任を負う」という言葉こそがリーダーたる者がいうべき言葉だと思いますし、今の日本政府から聞きたい言葉でもあります。
北海道の鈴木直道知事は3月18日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2月28日に道が独自に実施した緊急事態宣言について、「爆発的な感染拡大と医療崩壊は回避された」として3月19日で終了としましたが、感染拡大防止の取り組みは継続し、感染が懸念される場合は外出を控えるよう呼びかけました。そして、今後は感染拡大防止策に取り組みつつ経済活動も行うと発表しました。
その中で、緊急事態宣言の成果として、「現時点で急激な患者の増加は生じていない」「検査体制の強化や病床の確保などウイルスと戦う態勢を整えた」の2点を強調しました。
鈴木知事は緊急事態宣言を発表する2日前にも、国に先駆けて道内の小中学校の休校を要請。会見において、「結果責任は知事が負います」と発言し、この発表への驚きもありましたが、「決断スピード」「強いリーダーシップ」「政治判断」「発信力」において、今の日本の政治家には見られない、抜群の政治的センスがあると思えました(私がほめたところで、どうにもならないでしょうけけど)。
少し前までならば、奇しくも同じ38歳である小泉進次郎環境大臣にそのイメージがあったのですが、小泉大臣はCOP26の迷言以降、育児休暇でも取っているのか、今回の国難において話題に挙がってきません。
さて、鈴木知事はクレヨンしんちゃんの現住所と同じ埼玉県春日部市出身。経済的な事情から大学進学を断念し、東京都職員採用試験に合格、1999年4月に東京都庁に入庁。2000年4月に法政大学第二部法学部法律学科に入学し、地方自治を専攻、4年で卒業。
2008年1月に当時の猪瀬直樹東京都知事の発案で財政破綻した北海道夕張市に派遣する応援職員に選ばれ、約2年間の派遣期間中の行動力が評価され、2011年4月に31歳で夕張市長選で当選。
2019年4月、若さと市政の実績を買われ北海道知事選で当選。
当時の夕張市財政再生計画は「行政サービスは全国最低レベル、住民負担は全国最高レベル」に設定され、東京23区よりも広い面積にあった7つの小学校、4つの中学校はそれぞれ1つに統廃合されたり、借金返済が優先だから、保育園が雨漏りしても、雪かきができずに市民プールの屋根が崩壊しても、市の一存では修復工事1つ決められず、住民税負担は増えていく一方でした。
そこで、鈴木市長は国への働きかけを強め、2017年3月にこの再生計画の抜本見直しを総務省が認めさせました。また、企業版ふるさと納税を活用しつつ、コンパクトシティ化に向け、認定子ども園の整備など未来志向の投資を可能にし、国の財源も引き出す施策を打ち出しました。
夕張市長に当選した当時の鈴木市長は全国どの市町村の首長よりも給料の低く、さらに前職の都職員より年収で200万円も少なくなる待遇。市民からは、「市長の給料をあげろ」という声も出ましたが、当時の鈴木市長は8年の任期切れまで上げませんでした。
その後、2019年4月に北海道知事となり、8月からは知事の給料・ボーナス・退職金の30%カットも始めていました。
現在(2020年3月)でも、都道府県知事47名の中では最年少(38歳)。政策としては、「ほっかいどう応援団会議」の創設などを掲げています。
北海道内に緊急事態宣言をした後は、驚きや戸惑いが広がりましたが、「北海道モデル」は感染拡大防止と社会・経済活動の両立において、日本政府の判断材料にもなると思います。
鈴木知事は令和の時代の政治にどのような足跡を刻むのか。危機に際して心が躍るような、注目の政治家だと思います。